日本軍の小失敗の研究: 現代に生かせる太平洋戦争の教訓 (光人社ノンフィクション文庫 259)

著者 :
  • 潮書房光人新社
3.52
  • (3)
  • (9)
  • (12)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 125
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769822592

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  日本軍の失敗とその原因を分析した『失敗の本質』(中公文庫)よりも、小さな局面で、太平洋戦争敗北の原因を分析する(ただし、物量差は本書において考慮しない)。
     アメリカとの戦争は、物量上勝てる見込みがなかったのは、当時のデータ上自明であった。そのため、本書はそれ以外の要因に注目することで、今後、同じ過ちを犯さないように仕向けるのが主な趣旨である。先に結論を述べると、日本軍は、あらゆる面でインフラ整備があまりにも脆弱であった。この一言に尽きる。
     具体的に見ていくと、まず、日本は補給に対する意識があまりにも希薄であった。武器や弾薬はさすがに輸送した。ところが、それ以外、たとえば食糧や薬品などは、現地調達で賄ったのである。
     第2次世界大戦においては、航空機が勝敗を決した。日本も航空機の必要性は自覚していたが、航空機を飛ばすのに必要である飛行場を生産工場の近くに設置していなかった。そのため、完成した航空機を運ぶためにわざわざ分解して、その部品を牛車で運搬するという、あまりにも非効率な手段を取った。
     その他、日米それぞれのマニュアルを比較し、日本のマニュアルの文章が難解である一方で、アメリカはマンガ入りでわかりやすい文章でかつ正確な情報を得られる構造となっている。
     このように、単に物量差で判断するのではなく、細かい点で、日本の敗北は必至だと理解できる。

  • ”<一言>

    <読書メモ>

    <きっかけ>
    Facebook上でのTさんのオススメを見て。”

  • 1

  • 新書文庫

  • 4769822596 286p 2000・2・15

  • なぜ読んだか: 上司からの推薦。そして以前読んだ同系の本、「失敗の本質」がとても面白かったので興味もありました。
    なにを得たかったか: 旧軍の失敗から技術・組織運用でやってはいけないことを学びたいと思いました。
    どのように活かすか:  地味な仕事(補給、生産の標準化、情報分析、Operations Reserchなど)が戦力の維持には必要とのことから、どんな仕事でも基本的なことは着実にこなしていく必要があると感じました。また、主戦力の増強や発想の多様化などのためには、女性や部外者(民間人)の活用が必要であると感じました。

  • 制式銃の標準化の遅れ、陸軍と海軍の縦割り行政、一点豪華主義等、現在の企業や官僚への教訓としても意義のある命題が並ぶ。まさか陸軍が潜水艦と空母を建造していたとは知らなかった。原爆開発も陸海軍で別であったし、まさに縦割り行政の極みである。

  • ビジネスは戦争だ。従って、すべてのビジネスマン必読の書です。簡明な文章でとても読みやすい。日本人の悪しき特性は、100年や200年では変わらない。次にまた負けないためには過去の戦争に学ぶしかあるまい。

  • 日本軍という巨大組織の失敗の本質。 2004/09/05 帯には、太平洋戦争文化人類学というフレーズが付いています。同じ日本軍とは言っても、陸軍と海軍では体制も考え方も全く違っており、それは武器や戦術にも現れていました。中国やアメリカと戦いながらも、お互いがライバルであって競争意識もあり、例えば海軍が空母を作ると、陸軍も同じように空母や潜水艦を作るほどだったようです。当然のことながら、両者が造る兵器は独自のものとなり、海軍のものは陸軍で使えない。逆も同じという有様です。双方が歩み寄って基準を決める「標準化」という考え方もなく、多種多様な兵器を作ることになり、それが現場での使いにくさに繋がってしまいました。
    日本軍の戦略的な失敗は、多くの専門家が研究し、本も出ていますが、この本では主に「兵器開発思想」の観点から日本軍を分析しています。
    最近、失敗学の研究が盛んに行われていますが、日本軍研究は現代に生かせる教訓として格好の題材だと思います。

  • 本書は技術的な事柄をメインに、戦術よりもミクロな視点で敗因を探っている。物量豊富な米国が、日本よりも効率的に戦争を遂行していたことがわかる。例えば、米国が毎朝食卓にのるパンの如く、同じ種類の艦船を作ったのに対し、貧しく建造能力に劣る日本が色々なタイプの艦船を建造して資源を浪費する。それどころか、陸軍が独自に空母や潜水艦を開発して保有していた。信じられないのは、航空機工場に飛行場がないので、一度完成したものを、わざわざ分解して、「牛車」で数十キロ運び、再び組み立てて試験飛行する。これは例外でなく、主力四工場でこうしていたんだから涙が出てくる。昭和19年には牛の数が減って飛行機の運搬に支障をきたしたので、三菱が強引に買い付けたら、物資統制法違反で起訴され、八ヶ月も裁判で戦っていたなんて話もある。勝ち負け以前に戦争できたこと自体が信じられない。

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

昭和17年、千葉県生まれ。昭和41年、日本大学理工学部卒業。大手造船会社勤務後、大学に戻り物理教育に従事。准教授で定年退職。以後、執筆ならびに知的財産の取得で過ごす。趣味は時代小説を読むこと、及び数十年続けているヨットライフ。

「2020年 『わかりやすい朝鮮戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三野正洋の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×