チェルノブイリ原発事故 (クリスタ・ヴォルフ選集 2)

  • 恒文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784770409225

作品紹介・あらすじ

全世界を震憾させた未曾有の大事故をとおして、精神と科学の関わりを鋭く問う、衝撃の問題作!原発事故のニュースを聞きながら主人公は、その日、脳腫瘍の手術を受けている弟を気遣いながら語りかける-現代のユートピアは、必然的に怪物を生み出すものなのでしょうか…?近代科学の恩恵を享受する一方で、その恐怖に晒される状況を、女性作家ならではの視点で冷徹に描く。

感想・レビュー・書評

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  • 日射しの美しい春の日に福島のニュースを聞きながら、このエッセイの冒頭に出てくる「緑の爆発」という言葉が何度も何度も思いだされて、数年ぶりに手にとった。日本語版タイトルはまるでドキュメンタリー小説のようだが、当時の東ドイツに暮らしていた作家の、ある一日の意識の流れをたどる、静かな作品だ。ようやく迎えた春に、雑草までが生命を謳歌するような村で、草取りや食事作りに追われるごく普通の一日。しかし作家の想念はたびたび、今ごろ脳腫瘍の手術を受けているはずの弟のこと、そして「事故」によってかき乱される。女たちのように日々の雑事にわずらわされることもなく、まるで快感中枢を刺激されて止まることができなくなったように科学技術を操る「彼ら」について思いをめぐらせる作家の思考は、やがて、言葉を操る自身の上にも及んでいく。隣人や家族との会話、暮らしのための雑事、心乱す心配事のために途切れ途切れになりながらつながっていく作家の思考スタイルそのものが、科学技術と文明、ジェンダー、理性をめぐる巧まざる批評となっている。この日の終わりに作家が見つめる文明の宵は、ほの暗い。

  • タイトルがないと何のことかよくわからない文学である。ノンフィクションばかりの説明のなかでゆいいつ文学や詩がある。もし東日本大震災で福島第一原発について詩を書きたい人がいたらこれが参考になるんかもしれない。
     米原万里の紹介本だったような気がする。

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著者プロフィール

1929年、現ポーランド生まれ。旧東ドイツを代表する女性作家。『引き裂かれた空』『クリスタ・Tの追想』など。

「2010年 『失踪者/カッサンドラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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