カフェ・ヨーロッパ

  • 恒文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784770409812

作品紹介・あらすじ

クロアチアの女性作家が描くポスト・コミュニズムの東欧世界。東欧革命後のソフィア、ブカレスト、ブダペスト、ベオグラード、ザグレブなどの各都市や日常生活を題材に、揺れ動く現在を鋭い観察眼で捉える。旧ユーゴ、ボスニア紛争を経て、東欧地域はかつていかなる状況だったか、いまどんな状況下にあるか、そして今後どう進んでいくのか。セミ・ドキュメンタリータッチの文学的考察集。

感想・レビュー・書評

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  • 旧ユーゴスラヴィアで生まれ育った著者が、共産圏崩壊後の90年代の東欧の国々を訪れて感じたことを綴る1冊。
    一個人である著者の感じ方・考え方ではもちろんあるのだけれど、共産圏(なかでも少し特殊な旧ユーゴ)で生きてきたということはどういうことなのか、というのが生々しく伝わってきます。
    過去は体制が変われば容易に書き換えられていくこと、「ヨーロッパ」といって思い描かれるものは人によってさまざまだし結局はそんな理想的で統合的な「ヨーロッパ」なんて存在しないのだということ、などが感じられます。
    個人的に面白かったのは、著者がルーツをもつイストリアの人たちのナショナリティ・アイデンティティの話(「三つの国境に暮らす人々」の章)。国境付近に住み、混ざり合ってきた人々と、彼らにナショナリティの選択を迫る現代国家との考え方・認識の大きな齟齬が記録されています。本書の刊行から四半世紀経った今はどうなっているのか気になりました。

  • 今まで漠然と一括りで捉えていた旧ユーゴの国々の実情を実際の生活感に引き付けて理解できた。この地域の人たちの、空想の「ヨーロッパ」に憧れ、そうなろうと目指す姿は、日本の姿と重なる部分が少なからずあった。

  • w

  • 90年代、ユーゴスラビア崩壊後の東欧の苦闘を見つめるコラム集。
    ドラクリッチの文章には「個人的なことは政治的なこと」という言葉がよく当てはまる。自分のなかの劣等感と優越感を冷静に見据え、言葉にしてゆく。
    西欧から感じる差別意識、共産主義時代の感覚をふり捨ててしまえない自分との葛藤。
    コラムのテーマは独裁者の妻の墓、電気掃除機を買うこと、過去の国家の犯罪とどう向き合うか等々。
    彼女の『私たちはいかにして共産主義を笑って生きのびたか』もいつか翻訳してほしい。

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著者プロフィール

【著者】スラヴェンカ・ドラクリッチ(Slavenka Drakulić)
クロアチアのジャーナリスト、作家。1949 年アドリア海の港町リエカに生まれる。ザグレブ大学で比較文学と社会学を専攻。旧ユーゴ初のフェミニスト団体「女性と社会」を創設し、東欧初のフェミニストの本『フェミニズムの大罪』(1984 年)を発表する。ユーゴ紛争を機にスウェーデンへ移住。文学的ルポタージュ『バルカン・エクスプレス』(1993 年/ 邦訳1995年、三省堂)や『カフェ・ヨーロッパ』(1996 年/ 邦訳1998 年、恒文社)は欧米で大評判となる。ボスニア戦争時の集団レイプを題材とした小説エス:バルカン半島をめぐる小説』(1999年)は映画化もされた。ウクライナ侵攻を受けて発表された『戦争はどこでも同じ』(2022 年)は、かつての当事者として同じ過ちを繰り返さないよう問いかける渾身の一作。各著ヨーロッパ各国をはじめ、アメリカやアジアで翻訳されている。

「2023年 『ポスト・ヨーロッパ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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