家族相互作用―ドン・D・ジャクソン臨床選集

  • 金剛出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772414135

作品紹介・あらすじ

本書はハリー・スタック・サリヴァンに学び精神分析家・神経科学者としてキャリアをスタート、パロ・アルト・グループ(ベイトソン/ジェイ・ヘイリー/ジョン・ウィークランド/ジャクソン)に参加し、メンタル・リサーチ・インスティテュート(MRI)を創設しながら、48歳の若さで早世した天才セラピストの仕事を纏めた二冊の論集より、本邦初訳の重要論文を厳選した論文選である。各々の論考は、統合失調症患者とその家族の詳細な事例描写、「家族ホメオスターシス」「マリタル・キド・プロ・クオ」といった概念の考察を通して、家族療法・ブリーフセラピーの興隆につながる非規範的・相互作用的精神療法の出発点を示している。

感想・レビュー・書評

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  • ・サリヴァンは、精神医学とは「二人以上の人間を包含し人と人との間において進行する過程を研究する学問である。いかなる事情の下にある対人関係かは問わない。とにかく一個の人間を、その人がその中で生きそこに存在の根をもっているところの対人関係複合体から切り離すことは、絶対にできない」とする革新的代替定義を提示していた。

    ・患者の家族を見るためには、精神科医は、四次元的概念をもたなければならない。四つ目の次元とは、時間である。「家族はどのようであったか」という展望は、家族の作り話という霧によって曖昧にされる。なぜなら、家族が自分たちはこうだったと話すとき、その家族というものは、彼らが実際にどうであったのかというものとたいてい対照的であるためだ。患者によってはじめに提示される家族は通常、外向けのものである。

    ・結婚とはあきらかに、そして決まって一組の男女によるものなので、私たちの社会のおける結婚は通常、性差によって記述される。それはもちろん、性差が当事者個人の生まれつき、ないし少なくとも固定した特徴だからである。

  • 精神分析から家族療法をつなぐ重要な人物。精神分析をひたむきに学び、だからこそ批判的に捉え、次世代の心理療法へとつなぐことができた。彼が生み出したことばの数々によって、家族療法が支えられている。
    精神分析ではそのモデルは個人内にとどまり、家族の存在は道徳規範の一部やエネルギー論のはけ口としてあるだけであった。だから、どうしてもひとりの人間ではどうにもならない、そんな事態に為す術が無かった。幼少時の親子関係、抑圧された感情、それらはすべてひとりの人間の中で構築されてきた。
    彼がそんな療法に身を浸しながら考えたのは、なぜそれでもひとは共にあろうとするのか、という点である。実現するはずの無い願いを抱きながらもどうしてお互い関係しあっていられるのか。もしかしたら、その願いが相手の行為によって部分的に実現している部分があるからではないか。彼は考える。
    では、どうやって、互いに関係しあっているのか。どうやって相手の願いを知ることが出来るのか。それこそ、家族相互作用に他ならない。家族が共有する歴史とは、家族の関係性以外の何者でもない。ことば、行為、関係性は人間のあらゆる行いによって生み出される。そして、その関係性こそ歴史の中でつくられるものだ。
    ならば、病的な関係は長い時間・関係性の中で生み出されるはずである。そこに心理療法としてメスを入れるのだから、並大抵のことではうまくいかないはずだ。そこで彼は精神分析で用いられるように、病的な関係をまず明らかにするところから始めた。その上で、病的な関係ではない上手くいっている関係性を拾い上げたり、今までとは違う変化している部分を引き出すことで、新しい関係性の構築を目指す。
    彼がどんな心理面接を行ってきたか、面接の語録を見るだけではうかがい知ることが出来ない。彼は、関係性というものを書くことのできる文字に限定していないからだ。心理療法は、ひとが行うものである。そうである以上、彼の打ち出した概念や文字の上だけで操作が踊らないことを、どこまでも実践家である彼は願ってやまなかったに違いない。

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