人間と動物の病気を一緒にみる : 医療を変える汎動物学の発想

  • インターシフト
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772695381

感想・レビュー・書評

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  • 人間と動物は、広義の意味で同じ動物であり、人間のために使用する医薬品の実験やワクチンの生産などには、一部動物も使用されている。にもかかわらず、これまで獣医と人間を相手にする医師との交流はあまり行われてこず、動物と人間の病気に関する研究は進んでいなかった。

    そのため、獣医学的には初歩的な問題であっても、人間の医学では新発見とみなされるようなことであったり、逆に人間の医学の知識を使えば当たり前のことが、獣医にはわからないという状態が発生していることがわかってきた。
    そこで、獣医と医師が交流し、広義の動物としての生態を研究する分野が形成されようとしている。

    本書は、その汎動物学(ズービキティ)を紹介する入門書。
    改めて本書の目次をみてみると、以下のようになっている。
    第1章:医学の境界を越える出会い
    第2章:なぜ気絶するのか
    第3章:ジュラ紀のがん
    第4章:動物のセックスに学ぶ
    第5章:中毒や依存症から抜け出す
    第6章:死ぬほどこわい
    第7章:デブの惑星
    第8章:なぜ自分を傷つけるのか
    第9章:過食と拒食
    第10章:性感染症の知られざる力
    第11章:おとなになるのは大変
    第12章:汎動物学
    つまり、動物と人間との世界は、生物の機能としてだけではなく、精神分野や成人病研究まで、医学的分野の多くの部分で重なるものが非常に多いことがわかってきた。
    本書は、それらの内容を、具体的事例を挙げて、研究者ではない一般読者にわかりやすい形で示してくれる。
    そして、動物と人間の共生の意味を、改めて考えさせてくれるものとなっている。
    さらに、身近に動物と暮らす読者には、動物との関係を支配従属的なものではなく同じ動物仲間として考える、そんなヒントにもなるような気がする。

  • 人間も動物なんだから!っていうのを忘れずにいたいし、他の動物とか地球からも忘れられずにいたいものだな。

  • 人と動物は同じ生き物。人の薬の開発は動物の犠牲の上に成り立ってきた。そんなことはもはや当たり前で改めて意識しない。
    BSE、インフルエンザ、MERSなど動物も人もかかる感染症が新しい脅威として再認識されている今日この頃。
    医師と獣医師がもっとコミュニケーションとればもっと世界は良くなるんじゃね?という話が分かりやすくまとめられている。

  • この本の何が良いのかというと動物と人間を同じ視点で見ることで、生についての物の見方が広がることなんだと思う。
    動物のセックスに学ぶの章では、びっくりな事(動物種によってはふつう)も書かれているが、人間との共通点からの対比は、なかなか示唆に富んでいて、化学満載で高額な避妊治療の反論として役に立つのではないかと思った。中毒や依存症といったものが動物の世界にもあることや、肥満についての動物の世界でも環境に依存することや、自傷行為がグルーミングの延長、動物の世界では他と違っているといじめを受けやすくなる等、新しい視点や振り返ってみて思い当たる節みたいなものが沢山ある。
    非常に多くの文献を参照して紡いであるようで、少ない時間で大量の知識を得た気分になれるのも、本書の良いところなのかもしれない。
    読んでいて、非常に読みやすいので、「わかった気になる」というのが大部分ではあるが、ほんとにそうなのか?と問い直して、深堀りするような人がこのエリアを更に充実させていってくれるのだろう。

  • 8月新着

    第1章で、ヒトの心臓専門医がふとしたキッカケでエンペラータマリン(サル)を診察した時の衝撃が紹介される。初めて聞く「捕獲性筋疾患」という病名・・・しかしそれはヒトの「たこつぼ心筋症」によく似てるではないか! 獣医の世界ではよく知られた症状が、人間の医療では当時ホットな新知見だったのだ・・・「わたしたちが知らないことで、ほかにも獣医たちが知っていることがあるのでは?」未知の世界を具体的に紹介した一冊。センセーショナル! 読ませます。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:490.4//N58

  • これはオモロイ。

  • これはいい。

    僕もかつて10日間だけ、フロリダのドルフィンリサーチセンターでイルカのことについて学んだ体験からもそう思う。これはドルフィン・アシステッド・セラピーのためであったが。

    学生というより、医師6年目くらいで知識的なプラトーに達したところで獣医学を学ぶと自分の科目の病気についてマクロな視点がとりいれられる。
    (僕はその辺りの時期で、知識ではなく知識のデリバリーの仕方、コミュニケーションの在り方を学ぶことを提唱しているのだけれど)

    最先端の研究ではもう当たり前の話ではあるけれど、今後、ミクロの方向ではなく、マクロな研究(ゴルゴサウルスにも脳腫瘍があった!?)が広がるとまだまだ医学は発展の余地が大きい。というより、何も分かってないに等しい。


    知れば知るほど、地図のない莫大な荒野が、かつての暗黒大陸が、目の前に広がっている。今後の50年で飛躍的に伸びる産業であることは間違いないと思う。

  • 「人間と動物の病気を一緒にみる」
    医療を変える汎動物学の発想。


    ヒトの医者と動物の医者は野外で、実験室で、診察室で、手を取り合っていくべきだろう。そうすることで、ヒトの治療に関して新しい知見が得られ、医療は進化していくだろう。


    うんうん。私もそう思う。ウイルスは抗体を常に先取りするように進化し、何万人に1人と言う病気も存在する。糖尿病だって完治が100%ではないし、他の病を併発する可能性もある。病は大敵だ。


    その病と闘う上で動物は、パートナーになってくれる。日常生活の中でペット(家族)として既にかけがえのない存在の彼らは、病の研究にも力を貸してくれる存在となる、こんな言い方は人間本位かも知れないけど。


    汎動物学は、アメリカでは既にかなり進んでいるようで、これから大きな発見があるかも知れないし、実はもうあるのかも知れない。自傷行為、性欲、過食をキーとして動物とヒトを見ると、垣根は消え、病の見方が変わる。あー、汎動物学、面白そう。


    ここでふと思った、日本での汎動物学はどこまで進んでいるのだろう、と。IPS細胞に続くSTAP細胞の発見と日本の研究は相変わらずとても素晴らしいから、汎動物学もアメリカに負けずに進んでいるのだろうと思っているんだけど。

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著者プロフィール

ハーバード大学人類進化生物学客員教授。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)心臓内科教授。進化・医学・公衆衛生に関する国際協会(ISEMPH)会長。バウアーズとの前著に『人間と動物の病気を一緒にみる』がある。

「2021年 『WILDHOOD 野生の青年期』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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