- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784773814163
作品紹介・あらすじ
人間の消去に立ち向かい、歴史はいかにして「真実」を紡ぐのか。
クメール・ルージュの体験に正面から取り組んだ稀有な文学的表現。
ポル・ポト体制のカンボジア(1975―79)を奇跡的に生き延び、クメール・ルージュの体験を独自の手法で映像化してきた巨匠が、手練れの作家の助けを得て、初めて自らの少年時代の記憶を語る。
1 万数千人を殺害した政治犯収容所元所長の言葉に触発されて甦る、家族や生活のすべてを失った苦難の記憶。リティ少年を襲った信じ難い体験が、淡々とした筆致で語られる。そして息づまる対話のなか、生存者は加害者に問う。「なぜ、あなたのようなインテリがあんなことを?」現代世界でもっとも重要で、もっとも答えるのが困難な問いを、読む者の胸に静かな迫力でつきつける傑作。リティ・パニュ監督最新作『消えた画』の原作。
2013 年度『ELLE』読者賞、2012 年度フランス・テレビジョン・エッセイ賞ほか受賞。
リティ・パニュ監督《消えた画 クメール・ルージュの真実》
2014 年7月5日より、渋谷・ユーロスペースにてロードショー!(全国順次公開)
闇に葬られたクメール・ルージュの悪夢―百数十万人が虐殺されたカンボジアの大地から
作られた人形たちが、光と闇の記憶を語り始める……。
第66 回カンヌ国際映画祭 ある視点部門グランプリ、2013 年度アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート
感想・レビュー・書評
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4.56/36
内容(「BOOK」データベースより)
『ポル・ポト体制のカンボジアを奇跡的に生き延び、クメール・ルージュの体験を映像化する仕事で世界的な名声を得た映画作家が、初めて自らの少年時代の記憶を語る。1万数千人を殺害した政治犯収容所元所長の言葉に触発されて甦る、家族や生活のすべてを失った苦難の記憶。人間の消去に立ち向かい、歴史はいかにして「真実」を紡ぐのか。2013年度『ELLE』読者賞、2012年度フランス・テレビジョン・エッセイ賞ほか受賞。』
原書名:『L'élimination』
著者:リティ・パニュ (Rithy Panh)、クリストフ・バタイユ (Christophe Bataille)
訳者:中村 富美子
出版社 : 現代企画室
単行本 : 310ページ
発売日 : 2014/6/30詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こんなに重い内容の本は、これまでに読んだことがない。章立てがないので、最後まで読み続けるしかない。もう一度、映画を観なければ。
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クメールルージュに興味があるのですが、あまり関連書籍を見かけません。本書は映画監督の実体験をもとに、小説家のバタイユと共著という形になってます。
作者は裕福なカンボジアの家に生まれますが、少年時代に突然、クメールルージュが首都プノンペンを占領し、家族全員が家から追い出され、地方で強制労働をさせられることになります。官僚だった父の自殺に近い死、必死に子供を守ろうとした母親の絶望からくる死、兄弟はバラバラになり、作者は何度も死線を潜り抜けなんとか生き延びます。
そんな過去の実体験と、映画監督として成長した作者が強制収容所の所長であるドッチという男に当時の話を聞く現代の様子が交互に語られる構成になっており、ドキュメントというよりは小説に近い、情緒的な描写が多いです。
あまりにも悲惨な経験をしているので、まともに向き合うのにも辛すぎるのだと思います。
あとがきを読むと、著者である映画監督の話を小説家バタイユが何時間も聞き、それを書き起こしてから映画監督とまた話し合って、という方法で書かれた本らしく、小説っぽい感じはバタイユのもつ表現方法かもしれません。
似たような手法だと、マルケスの「戒厳令下チリ潜入記」があります。この本も映画監督が入国を禁止された故郷チリに潜入した体験をマルケスが書き起こした本でした。
こういうのはわりとよくある手法なのかな?