クルマの渋滞 アリの行列 -渋滞学が教える「混雑」の真相- (知りたい!サイエンス 11)
- 技術評論社 (2007年6月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784774131245
作品紹介・あらすじ
渋滞という言葉で何を連想するだろうか。ノロノロ運転の高速道路か信号待ちの車列か、いずれにしても不快感をともなう光景が脳裏に浮かぶ。本書で解説する渋滞学は、渋滞に関する学問ではあるが、日常で使われている「渋滞」という言葉をかなり広い意味で使っている。スーパーのレジ待ちの行列、朝の満員電車、人気絵画前の人混みなど、混雑や行列は日常いたるところで見られ、そしてどれも渋滞学の対象となる。本書ではこれら広い「渋滞」がなぜ、どのようにできるのかを解明しそれを避ける方法にも触れる。
感想・レビュー・書評
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数学入門書的なものを書いているこちらの先生の実績が「渋滞学」を編み出したとか、図書館にあったのがこの本。
第1章「渋滞学とはなんだろう」横が密度、縦が流量のグラフ、原点から山形を描く。臨界密度で流量の極値の前後で、最初は自由流、超えると渋滞流に相転移、密度が多すぎると流量0に。(詰めれば互いに接触して押し流される普通の粒子ではなく)決して接触しない前が空いていないと動かない自己駆動粒子ならではの挙動。さらに高速で車間を詰めるとちょっとした「ゆらぎが成長」して渋滞になる準安定状態(過冷却と相似)、慣性が大きい/前への追従反応が遅い車や子供で起こりうる。 -
フィリップ・ポール『流れ』、郡司ペギオ‐幸夫『群れは意識を持つ』あたりの「個と集団」のつながりで読んでみた。
本書のタイトルは「クルマ」となっているものの、おもに日常生活で出くわす様々な人の流れについて解説してある。アリがどのように渋滞を避けて行列を作っているのかというあたりがもう少し知りたかったのだけど、それはそれとして読み物として楽しめた。 -
水を冷やすと0度以下になっても水である状態がある=過冷却。ちょっとした振動で凍る。
渋滞も渋滞の前に準渋滞状態がある。ザク部などのちょっとした刺激で渋滞に変わる。
モデル化のためのセルオートマトン法。
渋滞部分は後ろへ移動する。
スロースタートルールにすると準安定状態が作られる。
出口に手すりや小さな柱を置くのはアーチ効果を防ぐのに効果的。
踏切はノンストップにすると渋滞緩和になる。
山手線のような環状線は、少なすぎるとダンゴ運転になりやすい。多すぎると渋滞する。 -
1493円購入2009-12-24
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渋滞学とは「自己駆動粒子の流れとその渋滞について研究する学問」であり、これまで300年間研究されたニュートン力学では研究されなかった「自己駆動粒子」(人や車など自分の意志やあるルールに従って動く物体)の流れ及びそれにより発生する渋滞について研究する学問です。
難しいように聞こえるが、渋滞のメカニズムなどが丁寧に非常にわかりやすく記載されてる。
特に渋滞のシミュレーションのためのモデル化が見事で、思わず感激。
【特になるほどな点】
・あくまでモデルはモデルであることに注意する。モデルは決して現実そのものではなく、限界を認識しつつ、良いモデルを使って研究をすすめるのが正しい科学的態度である。
・パニック時は、放送・指示に頼る場合が多いが、これらがない場合は他人に追従するというデータがある。
・少しくらい遊びがあったほうが避難効率が良くなる。
・全体に広めるには、全員に宣伝をしなくても、ドミノ効果(一定割合以上に波及するとその他も追随する効果)で必要最小限で済ませることができる。
・人間は予測しながら歩いているが、携帯電話を操作することによりその予測がうまく働かなくなり、渋滞を引き起こす要因となる。
・道路の合流地点に併走区間を設置すると、それぞれが自発的に位置関係を調整して危険を回避することができるようになる。 -
テレビの渋滞を科学する番組を見て著者を知った。タイトルも面白く、値段もあまり気にせずに購入した。車の渋滞で「サグ部」という言葉を覚えたのも本書だった。スーパーのレジ待ち、アリの行列、そして災害発生時の避難方法など、取り上げる例も判りやすくて良かった。
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なにげなく手にとってみた本だったのだが、意外に内容が面白くてお気に入り。セルオートマトンとか馴染みのある単語が日常生活のイライラ要素(渋滞/行列)に深くかかわっていたせいだろうか。
まだ新しい学問分野らしいのだが、これをうまく(わかりやすく)紹介している一冊。これからこの分野の学問がどのように進展していくか、興味を持って眺めていきたい。そんな気持ちにさせる本でした。 -
セルオートマトンをもっと深く知りたいなと思える本。たまに脱線する部分もあるが、楽しんで読めた。渋滞学は奥が深い。
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渋滞学を扱ったものの中では、入門書としては分かりやすい良書だと思う。
渋滞を密度と一定時間内に通過する数としてとらえる「基本図」が始まり、数学者のノイマンが提唱した「セルオートマン」のモデル(モデルはモデルであって、実際とは異なるが数式化、データ化がしやすくな)をもとにいろいろな渋滞に対して、科学的なアプローチをしている。
準安定状態、フォーク待ち、電車、踏切、スーパーのレジ、動物の渋滞なども扱っており、渋滞学に興味がある人は、この本から入る方が例示がわかりやすいと思う。理論化が少し進んだほうが、図解雑学「渋滞学」だと個人的には思う。