平和のバトン: 広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶

著者 :
  • くもん出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774327778

作品紹介・あらすじ

原爆が投下されてから、75年近くになろうとしています。やがて、被爆者がこの世からいなくなれば、記憶は失われていくでしょう。
「このままでは、原爆のことが忘れられてしまう」と、勇気を振りしぼって話しはじめた被爆者の声を、そして見た光景を、美術を学ぶ高校生が絵にして記録する「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトが、2007年にスタートしました。
証言者と高校生が何度も会って、一年をかけて一枚の絵にしていきます。戦争も、原爆も、高校生にはまったく想像ができない状況であるがゆえ、証言者は絵にすることの難しさに何度も直面します。また、事実を正確に描くことが求められるので、高校生が勝手な想像で描くことができません。それでも高校生には知らないこと、わからないことだらけです。また証言者は、体験が衝撃的すぎたがゆえ、覚えていないこともたくさんあります。まさに二人三脚で、絵が描かれていくのです。
これまでに、40名の証言者の話を、111名の高校生が134点の絵にしてきました。この本では、その中から4組の証言者と高校生を取材しています。証言者と密に接することで、平和な広島で今を生きる高校生たちが戦争や原爆を見つめなおす姿は、まさにバトンが手渡された瞬間なのです。

感想・レビュー・書評

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  • 一年前の話ですが、、、
    ナルニア国日記 今夜11時からのETV特集に注目!
    https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives/weblog/11-etv

  • 忘れてはいけないこと。
    日本人にしか語れないこと。

  • 高校生も証言者も両方が
    苦しみながら作り上げた絵は
    戦争とはなにか 原爆とは何かを
    生々しく伝えてくれます
    辛いお話を聞きながらも
    どの高校生も 描いてよかったと話しています
    しっかりと 証言者から高校生へ
    記憶のバトンが繋がれていったのですね

  • 広島からやってきた職場の後輩。
    8月6日の大阪にびっくりしました…と言っていたのが忘らない。
    広島にいたら、どこで何をしてても黙祷してる時間が大阪にはない。
    それが、悲しい現実。わたしも、後輩に言われるまで何とも思ってなかったことの恥ずかしさを思い出す。
    『知らないのが1番の罪』
    もっと、もっと学んで、知って、みんなで考えて、動いて…ありえない程の悲惨な経験を未来に残さないと必死に平和を築いてくださった方々の努力を無下にするようなことがあってはならない。

  • 2020年度(第66回)課題図書の中学生向け。
    9月になったし図書館で借りた。

    広島市立基町高校 創造表現コースの生徒たちが、被爆体験証言者の「記憶」を油絵に「記録」にする、『次世代と描く原爆の絵』プロジェクト(2007年~)のノンフィクション。

    こういう、ある学校がその地域の問題や歴史について学びました、というドキュメンタリー的な本が出ると、「その地域の人が読むといいんだろうね」くらいにしか思っていませんでした。
    でも本当は、広島と長崎の原爆と沖縄の地上戦は、日本人共通の傷であるはずです。
    本を読んでみると、被爆体験証言者の語ることの凄惨さや、その記憶を記録にするにあたり高校生たちがいかに心を寄せて取り組んだかということに、目頭が熱くなります。
    本のなかに複数の絵がカラーで掲載されています。
    私ならば、きっと精神が不安定になって絵を完成させることができなくなると思います。
    このプロジェクトは授業でも部活でもなくボランティアだそうです。
    そこまでして、平和のバトンを繋ぐべく動いた広島平和記念資料館、基町高校の先生と生徒たち、重い口を開いた原爆体験証言者の方々、みなさんに敬意を表します。
    本の作りとしては、最後にこのプロジェクトの始まりの話が出ています。
    最初にそれがあったらよかったなとちらっと思いましたが、本離れの始まっているYAに読ませるインパクトが必要なのだと納得しました。
    ところどころ、読み手の中心である中学生や高校生に向けて語りかけるような文章があって良かったです。
    「本書に寄せて」でズッコケシリーズの那須正幹さんからの言葉があり、広島市のご出身であることを初めて知りました。

  • この記憶を伝えていくための記録。

    被爆者はいつかいなくなってしまう。そのとき、決して繰り返してはいけない被害をどう伝えられるだろうか。そのひとつの答えとして、広島市立基町高等学校想像表現コースの生徒たちは、証言者の記憶を油絵に描いている。

    自分が体験していないことを、どうしたら伝えられるのか。被爆者の高齢化は分かっていることで、避けられないことである。もちろん、原子爆弾は二度と使われてはいけない。それを広く広く皆にわかってもらうために、被爆者の証言は大きな力になる。でも、それには時間制限があるのだ。そのひとつの答えが、このプロジェクトである。

    描かれた絵そのものも、被爆者の証言として伝わっていくが、プロジェクトに参加した高校生にも、大きな影響がある。高校生たちは、原子爆弾の被害を直接には知らない。けれど、証言者から話を詳しく聞き、彼ら彼女らの体験を絵に再現できるよう、真剣にコミュニケーションを取り、真っ向から題材に向き合うことで、体験を自分のものにできるのだ。直接の体験ではないけれど、高校生たちの中に、平和を作り出す者として語れるものができるだろう。

    決して簡単なプロジェクトではない。万能でもない。それでも歩みを止めない、広島に生きる者として、できることをしようという思いがここにある。

    それでは、自分には何ができるのだろうか。体験したことがないから、広島に生まれ育ったわけじゃないから、そんなことは言えないだろう。自分にもできることがある。伝えられた者として。伝えるべき者として。

  • 被爆者の記憶を戦争を知らない高校生たちが油絵で描く「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトの取り組みを追うドキュメンタリー。高齢となった被爆証言者に取材し、証言者の見たもの、思いを絵にしていく経験は、教科書の太字を覚える勉強よりもきっと高校生たちの心に平和の大切さを刻んでいくだろう。

  • 今年の8月6日で広島原爆投下から77年が経ち、現在原爆投下を体験した方は少なくなっているからこそ、私たちが色んな方法で伝えていくことが必要。それを、実践してまたそれを本にすることがいい発想だと思う。

  • 本書は広島市立基町高等学校の創造表現コースで続けられている「次世代と描く原爆の絵」における実話から、原爆や戦争の体験談を被爆者から若者が「記憶」をバトンし、「記録」していく様子を紹介している。
    こうした「記憶」の伝承・継承の最後のタイミングが今なんだ、と自分も被爆者であった祖父や祖母を亡くしてから後に痛感するようになった。

    本書をきっかけに、「記憶」の継承をすることの大切さを改めて考えさせられた。

  • 被爆者の方と高校生が、一緒に一つの絵を作っていく。
    知ることから始まる。
    素地としての平和教育があって、そこに制作のための知識を取り込み、被爆者の方の話を聞いて、質問をして、その記憶を暴き、視界を奪って、昭和20年8月6日のその光景を掴み取り、何とかキャンパスに持ち帰っている。
    被爆者と高校生の、「伝えるんだ」という使命感、意志の強さが、苦しいほどに伝わってくる。

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著者プロフィール

1959年、兵庫県に生まれる。米テンプル大学教養学部卒業後、世界50ヵ国以上の国々を訪れ、国際情勢・経済・文化からスポーツに至る幅広い分野で取材・執筆活動を続ける。
著書には被爆地・広島の戦後復興をヒューマン・ドキュメンタリーとして描き第15回 開高健ノンフィクション賞にノミネートされた『平和の栖(すみか) 広島から続く道の先に』(集英社クリエイティブ)、被爆体験証言者と共に1枚の絵を描く高校生たちを追った第66回 青少年読書感想文全国コンクール課題図書〈中学校の部〉『平和のバトン 広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』(くもん出版)、世界84ヵ国の国歌を収録した『国のうた』(KADOKAWA)、大手四十数社の企業理念と波乱に満ちたその歴史に迫った『社歌』(文藝春秋)などがある。

「2021年 『アメリカの世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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