- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778112738
感想・レビュー・書評
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小説ショコラに2003年初出したものを加筆修正した作品。
表題作はかなりビターな印象でした。
大怪我をした猫を助けようとしたことで、医大生の彬は弁護士の忠臣と親しくなります、年の差11歳。まさに大人と子供です。
彬の家は病院を経営していて医者一家。出来の悪い自分を無理矢理医大に行かせていると反発し、金髪ピアスで大学にもろくに通わず、遅れてきた反抗期状態の彬です。
忠臣は呆れつつも理解を示してくれるのですが、態度も言葉も傲岸不遜で、反発心旺盛な彬は売り言葉に買い言葉と乗せられて、まんまと体を奪われてしまうことに。
体からの関係です。
彬は体を重ねるうちに忠臣のことが好きになるのですが、相手は大人の男。自分をどう思っているのかわかりません。
どう考えても子供の相手はしたくなさそうな態度で、素っ気ないのです。
ダメだ、と言われると逆にヤリたくなるのが人情。血気盛んな年頃の彬にとってはなおさらです。
忠臣は、いい人ではありません。表題作だけ読むと、かなり酷い男だと言えます。
反対を押し切り、彬自らが決断したような結果になっていますが、結局は忠臣の掌の上で巧妙に踊らされていたわけです。
彬側から考えると、とても悪い奴なのですが、実際には真実と罪を糾したことになるので正義漢でもあり、複雑な気分になります。
でも、こんな目に遭ったことによって、彬の人生のスイッチが入ったわけなので、忠臣はわりといい仕事したんですよね…彬の正しい反発心を煽ってる。救いはありました。
書き下ろしの「ゲームの行方」は8年後の二人の様子が描かれています。
いとうセンセも歳月を経て?文章に熟成したものがあって、表題作よりはるかにこなれたかんじがします。
相変わらず食えない男の忠臣と、オトナになろうと背伸びして頑張ってきた感がありありの彬との心理戦が、とても面白い話です。
忠臣への気持ちが変わらないからこそ、彼の元まで這い上がってきた彬ですが、肝心の忠臣の気持ちが今ひとつ掌握できてないところが、やっぱりまだまだ子ども扱いされるところです。でも、すごくかわいい。
そういうところが、忠臣もたまんないんだろうなと思わせます。
もちろん、セフレ前提なのでエロは濃厚。強がっているけど実はいっぱいいっぱいの彬と、余裕かましてるようで実はメロメロじゃん!という忠臣の、これでもかというベッドシーンがてんこ盛り。
俺様攻のお手本のようなエロを堪能できます。
味気ない関係のように見えて、そこはかとなくラブラブで甘かったりするのがいいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
壮大なお話だったねぇ。これはこれで、いとう先生らしい読みごたえある内容だったのではと。キャラクターが曖昧な感じになっちゃったのがちょっと残念かな。
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実家が病院を経営し、常に出来のいい兄と比べられ医大に通う彬は髪を金髪に染めて遊び歩いている。
兄と口論になり飛び出したある夜、彬は無残にも轢かれている猫を見つけた。助けようにも動物病院すら分からずに途方に暮れている彬の前に現れた男。
弁護士の森嶋だった。
猫は病院に運んだが助からず、その治療費にと彬はハウスキーパーをすることになるのですが。
森嶋の行動には目的があったのですが、その事があったお陰で彬も自分の道を選べたのでしょうか。
9年前の作品に大人になった編を加筆されたそうです。