あいのはなし (ショコラ文庫)

著者 :
  • 心交社
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本棚登録 : 348
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778115234

作品紹介・あらすじ

愛する男を失くした岸本波瑠は、彼の9歳の息子・桐島椢とあてのない旅に出た。奇妙なことに、椢は自分の中に父親がいると言い、そして時おり本物の彼のように振る舞った。不思議で幸せな三人の生活。だが、幼い椢と他人の波瑠が長く一緒にいられるはずもなく、逃避行は悲劇的な結末を迎えた-。それから10年、あの日姿を消した波瑠を、椢はずっと捜し続け…。時をかけ、三人の想いが絡み合う不思議な愛の物語。

感想・レビュー・書評

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  •  「流浪の月」や「汝、星のごとく」等を読んだ後にこの作品を読んだのですが、こういう順番だと、この作品は、先生の問題意識や書きたいものの片鱗を味わうもの、まだまだ先生が書きたいようには書いておられない印象、こういう時代があっての今なんだなという思いで読むものになりました。先生御本人も色々なところで話されていますが、「先生が書きたいこと」と「BLのお約束事」のベクトルには結構な乖離があって、そこがマッチしたときは本当に感動する作品になることが多いのですが、中にはベクトルが微妙にずれたまま終わってしまったなと感じる作品もあります。そういう作品を読むと、言葉にしにくい違和感が残ったまま読み終わることになるのですが、今回もちょっとずれてるなあ、波瑠が動けてないなあという漠然とした印象を感じつつ、気が付いたら読み終わっていた、という感じでした。
     ただ「BLのお約束事」とケンカせずに、それらを踏まえた上で、先生の書きたいものを貫いた他の作品には、色々なものが昇華されたのか、研ぎ澄まされた文章で紡がれる感動的なお話が多く、何年にも渡って何度も読み返しています。一般小説でこれほどの作家になられたので、BLの世界に戻るのは難しいのかなとも思いますが、先生のBL作品でしか味わえないものが私は大好きなので、先生にはぜひまた書いて頂きたいと思っています。それまでは、中々手に入らない先生の昔の作品を何とか手に入れて、自分へのご褒美として読んでいきたいと思います。

  • 一回り以上年下の攻と、ツンデレを装って失敗している健気な受。
    単館映画のようなお話。

  • 追い続ける愛が成就するっていいなあ、、と。死んでしまった人を想い続ける波瑠の孤独を溶かしてあげたの愛が良い。
    2人の心が通じ合って本当に良かった。
    エピローグは驚いたけど、これで三角関係にも終止符が、という感じかな。

  • 逃避行からの10年越しの愛情が実るまでの物語。
    丁寧で穏やかな描写は凪の海や朝焼けのようなたおやかさ。濡れ場シーンがなくてもいいし、寧ろ唐突に感じるくらいの人間ドラマとしてとてもいいお話だなぁというのが一読しての感想。
    消えない罪と喪失の痛みに囚われて死んだように生きていた波瑠がずっと消える事のない真っ直ぐな愛情を持ち続けたカイの思いに救われた事で生きる力を取り戻し、二人の気持ちが重なり合っていった展開は素直に「良かったね」と思えました。
    ラスト間際、駐在さんの温かさにほっと心が休まるような気持ちになりました。
    あのやり取りを経て、波瑠は自分の罪をやっと乗り越えられたのかな。

    エピローグに関しても、波瑠が裕也を乗り越えて、カイの中に居る裕也ごとではなく、カイ自身そのものを求めてともに生きていけるきっかけになれたのならそれでいいんじゃないかなと素直に思えました。波瑠の選んだ行動が美しくも切ない。
    挿絵の二人の感情を穏やかに掬いあげてそっと想像を膨らませてくれるイラストもとても素敵でした。

    全体的にいいお話だな、と思いましたが100パーどっぷりのめり込めたかといえばウーン? なので星よっつ。(善し悪しではなく、好みで…)

  • 駐在さんから聞く、逃避行最後のふたりの話に胸が痛くなってしまいました。泣けます。この話は大好き。

  • 読みながら終始号泣でした。良いお話…

  • 泣きました。
    まずはストーリーを。
    小学生のときに劇団員の裕也と出会った波瑠。子供の頃、居場所のなかった自分を救ってくれた裕也。子供ができて結婚して、でも離婚して、それからずっと傍にいた。波瑠が大学生、裕也の息子の椢は9歳のとき裕也は死んでしまう。空っぽの波瑠と椢は二人で逃げ、波瑠は誘拐の罪で服役。10年後19歳になった椢と再会し・・・。
    なんとなく最初から流れはわかってたんだけど、一緒にいられない辛さが伝わってきて。波瑠が流されないように必死で裕也のことを心の中で呼んでるのがすごく切なかったです。
    でも本当は裕也はもういなかった。でいいんだとは思いました。ちゃんと二人の心の中にいるからってことで。
    まー、そこらへんは世界観を壊すとこまではいかないんだけど、せっかく現実的な話のみでまとまる話をファンタジーにしちゃった感がもったいなかったなぁと思いました。
    もう海に入るシーンとか切ないし、あの挿絵がたまりませんでした。
    絶対的に慕ってくる、絶対的に愛しいものを目の前にして手を出せない、一緒にいたい。っていうささやかな願いがどうしても叶わない。そんなお話です。

  • エピローグの裕也の言葉にはずるいと思いつつも泣いた。賛否両論あるようだけど、私はあってよかったと思う。

  • ちょっと攻め受けの熱量が足りない印象…。死んだ攻めの父親を受けがどう昇華していくかが見処だからでしょうか。
    父親が憑依したかのように振る舞う小学生の攻め。その攻めを誘拐したとして非難される受け。
    年の差、逃避行、同著の真夜中クロニクルに設定が似ているが比べてしまうと前作の方が面白かった。

  • 唯一無三ぐらいの作家凪良ゆう。今回は刺さらなかった。受けの無気力ぶりがイマイチ。

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著者プロフィール

1973年生まれ、京都市在住。2007年、BLジャンルの初著書が刊行され、デビュー。17年『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得る。19年『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で「本屋大賞」を受賞する。同作は、22年に実写映画化された。20年『滅びの前のシャングリラ』で、2年連続「本屋大賞」ノミネート。22年『汝、星のごとく』で、第168回「直木賞」候補、「2022王様のブランチBOOK大賞」「キノベス!2023」第1位に選ばれ、話題を呼ぶ。翌年、同作の続編にあたる『星を編む』を刊行した。

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