のりもの進化論

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 68
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778313234

作品紹介・あらすじ

リカンベント、ベロモービル、電動一輪車、HSST、ツボグルマ…!?科学ジャーナリストとして活躍する著者が贈る乗って、見て、考える体験的のりもの考。

感想・レビュー・書評

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  • 数年前の自転車関連のシンポジウムで紹介されていて、積読されていた1冊。オススメされる理由も大納得のモビリティに携わる人みんなが読んだらいいと思える教科書みたいな1冊でした。自転車の価値や未来に向けた可能性の話はワクワクするものもあり、立川近辺の話で言えば多摩都市モノレールの路線設計・車両選定のダメさ加減をこれでもかと伝えてくれていて、個人的には「それでもここまで来れたなら、まだまだよくできるな」と捉えられる指摘でヒントを多くもらえた気がします。住んでる人も気づかない、専門家ならではの視点がたくさん入った良書。読んで良かったです!

  • 震災後に妙なハイテンションで社会に物申したい手前は多いですが、残念ながらこの本もその域をでず、自転車2.0や3.0などといったキラキラネームにはやや赤面もしてしまいました
    一人の自転車乗りからすると、こういった自転車右翼みたいな考え方はややひいてしまうのですが、著者の考えたモビリティ論はともかく、市民参加型で発展させていく交通という意見は大事にしたいと思います

  • この本では、自転車から自動車、モノレールの歴史と現在、未来が明晰でわかりやすい文体で展開され、都市計画論にまで発展している。
    モノレールや新交通システムが使えないシロモノになっている件については手厳しいが、非効率でユーザー不在の公共事業の代表として納得できる。
    自分が老人になっている30年後の日本にはどんなクルマが走っているだろうか。そして住みやすい街になっているだろうか。そんなことも考えさせられた。

  • パーソナルな自転車から、公共交通、都市計画にいたるまで「乗り物」を軸に幅広く考察されています。またこの本の冒頭から震災とモビリティーの在り方に触れるなど、現在の事象からの考察も忘れてはいません。個人的に興味深かったのは、新たな都市交通の考察・吉祥寺の街をモデルケースにして筆者が新たなモノレール路線を提示してみせてくれます。こういった大胆で柔軟な発想も大いに考えるヒントになります。・・・本文には様々な「のりもの」が記述されるので、理解を深めるために極力、縦組の文字組の中に写真など図版を添えて調整しています。そしてカバーデザインも同様に、本文に登場する様々な「のりもの」達を表紙一杯(表4側も同様)にレイアウトし、この本の特色をそのままに表現しています。編集者が用意した大小・形も様々な「のりもの」カバー用図版を全てバランス良くレイアウト出来たのは「密かな自慢」です!?

  • 【配置場所】工大選書フェア【請求記号】536||M【資料ID】91123523

  •  第4~5章が面白かった。
     モノレールや新交通システムについて気軽に読める程度の分量で、メリット・デメリットが列挙されている。

     こういった交通システムは全体を俯瞰してみる能力が必要で、利権など邪な心を持って作ると、壮大な無駄が発生しますね。

  •  人間のモビリティを向上する様々なのりもの。輸送機械そのものだけでなく,それを支える社会システム,法制度や慣習といった無形の「知」までを幅広く考えて,現状の不都合を指摘し将来のありかたも提言。
     何の注釈もなしに「のりもの」というと自動車がまず思い浮かぶけど,本書の半分以上は自転車(HPV)に割かれてる。人間の力だけをエネルギー源とするヒューマンパワードビークル。エコだし,場所を取らないから渋滞とも遠縁。電動アシストや回生システムと組み合わせれば可能性は大きく広がる。
     この自転車の仲間には,空気抵抗を減らすためにあおむけにねそべる乗車姿勢をとるリカンベントや,それを三輪にして安定性を増したトライクル,さらにカウリングをつけて抵抗を減らしたベロモービルなんてのもある。そんなのがあるのか~と興味深かった。
     いまのところ,HPVの最高速度は130Km/h超だとか(Varna Tempest)。人力だけで!すごい…。 筆者によると,自転車といえばママチャリという誤った固定観念が,日本の自転車をめぐる環境を悪化させてきた張本人。これをなんとか打開できないか。このあたり,ママチャリユーザーとしてはちょっと反感を覚えたけれど,本書全体の価値を損なうほどではなかった。
     自転車のほかにも,自動車,モノレール,新交通システム,路面電車など,技術と社会の両面を見据えた記述はなかなか刺激的。
     あと,自転車の一種としての「ローラースルーGOGO」の物語は印象に残る。子供たちに人気で一世を風靡したが,死亡事故が誇大に報道されたために一気にしぼんでしまう。モノは良かったのにもったいないことだ。新奇なものにたいするそこはかとない反感というのは恐ろしい。

  • 本書は、先端テクノロジーを用いた新しい乗り物の具体的な紹介に加えて、現状の交
    通法規の問題性、道路などのインフラストラクチャーの問題など、乗り物(ソフト)
    のベースにあるインフラ・制度(ハード)の問題も訴状に載せながら、新しいモビリ
    ティの未来について考える本です。乗り物論にして都市論。特に自動車に代わる新た
    なモビリティとしての「自転車2.0、3.0」という概念は必読です。多様な交通手段が
    あるということは、その社会が多様であることの表れです。新しい乗り物を考えるこ
    とは、新しいライフスタイルを考えることでもあります。

  • 「10年前に出しておけばそこそこ名著だったんじゃないの」というのが読後の第一印象。主に自転車やモノレール・新交通システムを中心に「新たなモビリティ」について様々な可能性を紹介していますが、その辺の各輸送機関の特性は既に一定程度議論されているものであって、今更そのニッチを突こうとしても、という感は否めません。
    また、著者が航空宇宙分野中心の科学技術ライターで、こっちが土木の学生という二重のバイアスがかかった状況ではあるのですが、全般的に機械技術の進歩が中心にあり、インフラや制度面の問題は「役人や市民の意識が変わればどうにかなるさ」的な幾分安直な考えを持っているかのような印象を受けました。特に全般的に官僚の能力を低く見すぎというか、そんなに彼らバカじゃないよ、みたいなね。

    ともあれ、自分としては(「リカンベント」という寝そべって走る自転車の特性が分かったこと以外には)あまり面白い事実は無かったのですが、こういう形で「自動車/ママチャリ/歩きの3択」に収斂しがちな個人用交通手段に多くの関心が向けられるきっかけを作ることは重要なことかもしれません。

  • 昭和の初めごろまで、自分の生活圏しか移動しない人が多かったと
    いう。自身の子供時代を振り返っても、新幹線に乗るのは夏休みに
    神奈川県に住んでいた叔父の家に滞在する為の年に一回の特別な
    乗り物だった。

    水上バスに乗ったのは高校生の頃だったか。飛行機に乗ったのは
    社会人になっての出張が初めてだし、豪華客船になって未だ乗った
    ことがない。いつか世界一周したいんだけど。あ、ボートピースの
    環境劣悪旅行じゃなくて。

    本書は日常生活で使用する交通手段の未来を、これまでの乗り物の
    発達から考察している。

    自動車の免許を持っていない私にとって、一番身近な乗り物といえば
    自転車である。昨年の東日本大震災後、通常利用する電車が間引き
    運転をしていた時、2時間40分をかけて職場まで通った。まぁ、わずか
    2日だったけど。

    その時に実感したのは日本の道路は自転車が走るように出来ていないと
    いうことだ。基本、自転車は車道を走るものであると思っていても車道に
    出るのが怖い時はどうしても歩道に逃げてしまう。

    しかし、自転車がすれ違うのにはギリギリの幅員しかない歩道も多い。
    そして問題なのは車道である。路肩に駐車している車を避けようとすると
    後ろから来る車に恐怖を感じた。

    本書の第1章はそんな自転車とインフラの在り方を論じていて非常に参考に
    なった。他にも自動車の変遷やモノレール等について論じられている。

    特に第3セクター運営による新交通システムの章はおもしろかった。ダメな
    路線と優良路線の対比で、同じ新交通システムなのにこんなに違うのだ
    なぁと感じさせてくれる。

    乗り物が進化すればするほど、移動手段は多様化する。徒歩か籠しか
    なかった江戸の昔から見たら随分な進化だけれど、人間が快適な移動
    手段を求める限り、進化は続くのだろうな。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~1992年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

「2022年 『母さん、ごめん。2 ― 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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