福島第一原発廃炉図鑑

  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778315115

感想・レビュー・書評

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  • 福島の話は断片的にか耳に入ってこない。著書は"ちょっと調べればわかること"と言うが、その"ちょっと調べる"が一般の、日々の生活に追われた人間には、残念ながらなかなか難しい。知りたい、知らなければという思いはあるが、全体を俯瞰して把握できるまで、じっくりと取り組む余裕はなかった。
    そのような人間に、この"図鑑"は大変ありがたかった。読み切れるだろうかと思ったが、一気に読み切った。それだけ知りたかった情報が詰まっていたんだろうと思う。
    一方で、この本で全て知りえたとも思わないし、そう思うことは逆に危険だと思う。書ききれなかったこともあると著書も書いている。ただ、時々流れてくる廃炉に関する話を、ふわふわと掴み所ないまま受け入れてしまうしかない状況からは、抜けられたのではないかと思う。

  • 東日本大震災による地震と津波が原因となり発生した福島第一原発事故から5年。
    事故発生当初から、政府、事業者による事実の隠ぺいが繰り返され、それでも原発推進派、いつのまにか原発推進自民党、なにがなんても原発怖い派等から発信される情報は、あくまでも自分たちの主張を裏付けするものに偏っている。

    それは正式な事故報告が4つも存在し、それぞれの内容が異なることに象徴されている。
    http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3526040_po_0756.pdf?contentNo=1

    本書は、なるべくそれらの意見には偏ることなく、5年目の福島第一原発の事故現場がどのようになっていて、事故収束への工程、廃炉への工程がどのようになり、いまどんな状況にあるか。事故現場での作業員の状況や、原発周辺汚染地域の状況は、そこに住む住民の暮らしは?といった内容について、写真、漫画、図表そしてインタビュー記事から立体的に可視化している。

    しかし、残念なことにそれらの情報は、本書が執筆され、出版されたとき時点の情報を切り取っただけのものであることも、また一つの事実。

    汚染水を減らす切り札であったはずの凍土壁は当の政府によって否定され、福島の知恵を活かすといった東電は、老朽化している原発の再稼働を急ぐ。

    結局、原発事故からの復旧はまだめどが立っていないということなのだと思う。
    なんでもかんでも原発事故のせいというのでは、話は前に進まないかもしれないが、目をつぶって道路をすすんでいけば、いつかまた事故に遇うことは100%確実ではないかと思う。

  •  いくら公平に評価を定めても反対する人は反対する。しかし福島という町は確実に前に進んでいることも事実、その裏にはここに書かれているようにいろいろな分野の人が一生懸命に働いてくれている。

     このような人たちにまず敬意を表する。それからでも反対することは遅くはない。そして本当に今自分が思っている状態が事実かどうかそれをしっかりと調べ把握することにより自らの論の価値が上がることを肝に銘じるべきだ。

     自分の頭の中では真実は一つかもしれない、だが立場による真実はいくらにも考えることができるものだから本当の真実が何かを見つけ出すことはそう簡単なことではない。いやむしろ難しいというべきなのかもしれない。



     いわき海洋調べ隊「うみラボ」公式サイト
     www.umilabo.jp

  • 陰謀論者や、いわゆる放射脳をこの本で殴りたい。現状のまとめ資料として大変優れている。図版や「いちえふ」作者のマンガを読むだけでも価値はあるし、専門家、現場に近い人ほど書かれている文章が響くことだろう。

    「いちえふ」に始まり「いちから聞きたい放射線のほんとう」「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」などの良書を経て、本書に行きつくのが良い。

  • 160709 中央図書館
    思い込みやポリティカルなフィルターで編集されることを避け、できるだけ淡々と豊富なFACTSを提示するという方法で、現在のF1の姿、働く人々の姿を見せてくれている。

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著者プロフィール

1984年福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。専攻は社会学。現在、立命館大学衣笠総合研究機構准教授(2016-)。東日本国際大学客員教授(2016-)。福島大学客員研究員(2016-)。
著書に『福島第一原発廃炉図鑑』『はじめての福島学』『漂白される社会』他。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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