- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784779113697
作品紹介・あらすじ
■極めてラディカルな「新作落語」論
円丈の遺伝子は落語家に着実に継承されている。「円丈チルドレン」を見れば一目瞭然。独創性に満ちた感性で、演者・作家・演出家の三役をこなす円丈がその秘訣を披露。古典・新作の分析から、自作の解剖まで、「新作落語」入門書の決定版。落語家、作家を目指す人への大いなる啓蒙の書!
感想・レビュー・書評
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故・師匠のご冥福をお祈り申し上げます。
私は円丈師匠の新作落語あんまり聞いたことがないのですが。よくもわるくも、地面にびったりはりついている、という印象を受けていました。
本作を読み、師匠がはりついていた「地面」というのは、「自分」だったのではないかな、と思いました。
本書のなかに、ほかの新作系落語家の落語の作り方というのが載っていて、これがなかなか面白かったです。
なかに、春風亭百栄という人がいて(私この人を見たことがないんですが)
R-1とかにピン芸人として出てるのですが、あれは新作落語ではない。落語なら古典です。とおっしゃる。円丈師匠はそれを「変な芸人!」と評しておられるが、私は彼の言うことは結構正しいんじゃないかと思いました。
古典落語の良さっていうのはやっぱりあるんだと思います。
古典落語:新作落語=能:歌舞伎みたいな。
古典落語ていうのはものにもよりますが、宙にふわあっと浮いていて、演者はそのなかに入ることができる。芸のある芸人だったらその世界をさらにふわあっとふくらますことができる。むしろ芸というものをいれてふくらますための器として存在している。その芸をいれる余裕というものを、新作落語ももてたらいいんじゃないかと思います。
まあ、演者個人のキャラクターや時代に密着した落語も、別に間違ってはないし、そういうのもあっていいとは思っております。
以上の点に気づかせていただいたので、☆5つをつけました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『#ろんだいえん』
ほぼ日書評 Day333
タイトルの「ろんだいえん」、現代新作落語の祖とも言うべき三遊亭円丈が、(落語を)論じ、(落語の)台本を書き、(落語を)演じる「論台演」。師、三遊亭圓生に入門してから(執筆時で)45年、大卒サラリーマンなら70の声を聞こうという経歴だ。
本書の構成は文字通り、この1.論、2.台、3.演の3部構成となるのだが、第一章「論」で反りが合わなくても、第二章「台」で示される多くの "how?" は大変参考になると思うので、オススメだ。
円丈流「落語家3ランク」、下から順にアクター、アレンジャー、クリエイター。これ、説明を読む前から、不思議と腑に落ちる感があった。
そもそも古典などというが、現代メジャーな江戸落語の古典の多くは、圓朝(1839〜1900)が創作した当時の新作と、上方(関西)から移入・翻案した話であり、師いわくのクリエイトもしくはアレンジしたもの。教わった通りを忠実に再現(アクト)するものではなかったわけだ。
この辺りまでが「論」。その後の「台」は正直、読む人によって評価が変わると思う。台本のパターン分析やら、その書き手の傾向分析やらを行うのだが、題材となるテキストをよく分かっていないと全くチンプンカンプンだ。
そして最終章の「演」。ここはインタレスティングな意味で面白い。落語家は発声を学ばないのだそうだ。上手いのに花がない噺家、何故か陰気な感じのする噺家、それらの発声を論じた箇所などは、短いがなるほど感ある。
柳(柳家の一派)は禅、三遊亭はヨガ…という比喩も良い。これは、本文を読めば、落語を多少なりとも知っている人ならある程度理解できるはず。
目の使い方。ひとり芸の落語で、喋る相手(八っあんなら、相手は御隠居)をしっかり見ることの難しさ。昨今、バーチャル環境で、いかにも聞き手を見ているかのように喋る難しさを感じている人には切実な問題だろう。
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新作落語家による、落語、台本、演じることについての2009年の研究ノート
落語の方法論を論理的にまとめようとしてて貴重。
業界の歴史について書かれた「師匠、御乱心!」も読んでみたい -
アクの強い円丈だから、ニュートラルな本ではないとはいえ、落語を方法論としてとらえて文章化した意義は大きい。
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2010年1月29日読了。
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この本は円丈が書いた落語に関しての教科書的な本。
いつまでも古典をただやるだけではダメという、円丈の信念が良く現れている本。
円丈の業績はもっと認められても良い。
新作落語を広めたというより、今の落語ブーム(?)は円丈が種をまいていたものが色んな噺家を通して花開いているのだと私は思う。
でも、残念ながら今の段階では世間には広くなかなか認められていない。
日本人って病気したり亡くなったりしないとその人の業績を認めないところがある。
でも、円丈が亡くなるのはいやだ。本当に。
生きている内にもっと認められるべきだ。
この本だけでなく、周りの人がもっと円丈を褒め称える本を書いたり、発言したりしてほしい。