阿久悠神話解体―歌謡曲の日本語

著者 :
  • 彩流社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779113864

作品紹介・あらすじ

作詞した歌5000曲以上、シングル総売上枚数6800万枚(日本歴代作詞家でトップ)…2007年8月1日に死去した作詞家の巨人、阿久悠の書いた数多くのヒット曲の歌詞を、歌から切り離し、それ自体を徹底的に分析する。

感想・レビュー・書評

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  • 別れる理由が書かれたものはない。「勝手にしやがれ」の女性はなぜ出ていくことになったのか、「また逢う日まで」の二人はなぜ別れることになったのか、「ざんげの値打ちもない」の女はなぜ捨てられたのか。おそらく阿久悠は、別れるのに理由はない、あるいはあってもどれも同じようなものだと思っているからそれを書かないのではないだろうか
    阿久悠の作詞技法として、まず最初に全体の情景を描き、それからカメラをだんだんズームアップしていって主題となる被写体を捉えるという映画的なやり方がある
    何の前置きもなく呼びかけてびっくりさせる ex. 嫁に来ないかぼくのところへ
    対句 ex. 窓にちらちら雪が降り 部屋はひえびえ暗かった
    余計なことは一切はぶいて、電話する一瞬の躊躇に時間を凝縮させている 恋のダイアルナンバー6700
    〜してほしい 依頼の形式 聴き手を詞世界に直接引き入れることに役立つ ex. 五番街のマリーへ
    一人称はワンカメラだけで単調になるから三人称に切り替えて多カメラにして立体的な構成をする。だが、三人称の語りは全体を俯瞰できるという便利さと引き換えに一般化の罠に陥る危険がある
    無意味なフレーズというのは、聴く人の脳に意味を媒介させずダイレクトに侵入してくるせいか、歌の普及や記憶に絶大な効果を発揮することがある ex. クッククックー、ウララウララ〜
    クッククックー=苦苦苦苦? 反対のものをイメージさせる言葉を入れることによって、聴き手の耳になめらかにすべりこむことをやめ、ざらつきが生じ、たんなるわかりやすい薄っぺらい歌では終わらなくなった
    ピアノ=比喩 心の中にある思いを伝える術を持たない男のじれったさ もしもピアノが弾けたなら

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著者プロフィール

1965年生。ライター。歌詞論を中心にサブカルについて論じている。歌詞論は高校教科書に掲載され、法科大学院入試でも使われた。マンガ論は韓国語に翻訳されている。著書『さだまさしのために―批評と擁護』(ベストセラーズ、1998年)、『Jポップの日本語―歌詞論』(彩流社、2002年)、『謎解き『世界の中心で、愛をさけぶ』(ライターズジム名義) (夏目書房、2004年)、『阿久悠神話解体―歌謡曲の日本語』(彩流社、2009年)、『ドラゴンボールのマンガ学』(彩流社、2011年) 他、共著書多数。

「2018年 『尾崎豊の歌詞論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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