カオス的脳観: 脳の新しいモデルをめざして (サイエンス叢書 24)

著者 :
  • サイエンス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781905983

作品紹介・あらすじ

本書は、カオスの研究を通じて筆者が得た世界観に基づいて行った脳の理論的研究と、さらにそれから得られた脳のような複雑系の研究方法と世界観に関するものである。本書では、筆者には有望と思われるが、直接的な検証方法が不在のため真理としては認められていない多くの事柄に言及することになる。つまり本書はカオス的世界観にもとづいた脳の動的情報処理に関する一つの物語である。

感想・レビュー・書評

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  • サイエンス

  • 最初で最後、自分で企画・依頼し、編集、下手な装丁までした本。津田先生ありがとうございました。

  • [ 内容 ]
    本書は、カオスの研究を通じて筆者が得た世界観に基づいて行った脳の理論的研究と、さらにそれから得られた脳のような複雑系の研究方法と世界観に関するものである。
    本書では、筆者には有望と思われるが、直接的な検証方法が不在のため真理としては認められていない多くの事柄に言及することになる。
    つまり本書はカオス的世界観にもとづいた脳の動的情報処理に関する一つの物語である。

    [ 目次 ]
    1 カオス基礎論
    2 複雑さの理論
    3 カオスの情報力学
    4 脳の情報力学過程
    5 脳のモデルの可能性―ストーリーをデザインする解釈学的方法論

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    [ 参考となる書評 ]

  • 107夜

    脳に関する書物は多い。しかし、その人なりの視点を、力強く打ち出すものは少ない。表題が示すように、これはカオスから脳を考えようという刺激的な書物である。著者の熱気が直接に伝わってくる点で、近年では、澤口俊之氏の『知性の脳構造と進化』と同じように、現在のわが国の若手の研究者の長所をよく示す書物と言えよう。
    全体は5章に分けられている。第一章ではローレンツ方程式を例として、カオスの基礎的な考え方を導入する。第二章は複雑さを扱い、最大のアルゴリズムの複雑さを持つものとしてカオスが捉えられる。第三章は、「カオスの情報力学」と題され、自然言語における情報量の問題、化学反応におけるカオス、つづいてカオスの情報構造が論じられる。ここから、神経系とカオスについて、両者の具体的な関連が示唆されていくことになる。すなわち、カオスからの情報チャンネルの生成、ノイズに強いダイナミックなメモリーの生成といった、論理的な可能性である。
    第四章では、情報力学過程としての脳を論じる。神経細胞の電気的活動にカオスが見られる事実から始まり、嗅球における神経回路網とカオス、つづいて未知の臭いに対する「I don't know」状態の発生と、カオスとの関連性が述べられる。さらに、ヒト脳のカオスから脳波にカオスが認められること、睡眠、夢、学習との関連が、たとえばクリックの考え方への批判を伴って議論される。さらに大脳皮質のコラムに対して、著者の考える神経回路モデルが導入され、情報処理と記憶の能力がカオスに伴ってそこに示されることになる。ここは本書のもっとも重要な部分であり、著者の言う「カオス的脳観」の現在の具体的状況を示す。
    第五章は「脳のモデルの可能性」と題し、将来へ向けての展望が論じれれるとともに、解釈学、人工知能、工学などの関連領域に対する、著者の総論的な考え方と批判が述べられる。基本的には、認知科学批判といってもよいであろう。

  • obtnd.ofc

  • 稀覯本となりつつあったがセブンアンドワイで入手。

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著者プロフィール

岡山県生まれ。大阪大学卒業、京都大学大学院博士課程修了。理学博士(京都大学)。九州工業大学助教授(情報工学)、北海道大学教授(数学)などを経て、現在、中部大学創発学術院教授・副院長、AI数理データサイエンスセンター長。北海道大学名誉教授。複雑系科学研究の先駆者のひとり。カオス力学系をベースに、脳神経系のさまざまなダイナミクスの情報構造の解明に従事している。神経回路網のダイナミクスに関する研究により、日本神経回路学会学術賞、HFSP Program Awardなどを受賞。また、応用数学への貢献により、4年に一度の応用数理国際会議ICIAMにおいて総合講演に選出されるなどしている。著書に『心はすべて数学である』(文藝春秋)など。クロスカントリースキーが趣味。

「2021年 『数学とはどんな学問か? 数学嫌いのための数学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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