- Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
- / ISBN・EAN: 9784785330651
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【トムソンの原理からクラウジウスの不等式を導出する際に補助線的役割を果たす定理】
系に熱量Qiを与えた温度Tiの熱源は、温度Tの熱源とカルノー・サイクルCiを使って、元の状態に戻すことができる。このとき温度Tの熱源がカルノー・サイクルCiに与える熱量はT×(Qi/Ti)となる。
【化学反応しない理想気体の閉鎖系の平衡状態1→平衡状態2での内部エネルギーとエントロピーの変化量】
U2-U1=
n×C×(T2-T1)=
(P2×V2-P1×V1)/(γ-1)
S2-S1=
n×C×ln[{T2×V2^(γ-1)}/{T1×V1^(γ-1)}]=
n×C×ln{(P2×V2^γ)/(P1×V1^γ)}
γ≡R/C+1
P: 圧力[N/(m^2)]
V: 容積[m^3]
n: モル数[mol]
T: 温度[K]
R: 気体定数[J/(mol×K)] R=8.314 J/(mol×K)
C: 定容モル熱容量[J/(mol×K)]
気体分子運動論などによると、
単原子分子の理想気体の場合、C=3/2×R、γ=5/3≒1.667
二原子分子の理想気体の場合、C=5/2×R、γ=7/5=1.400
U: 内部エネルギー[J]
S: エントロピー[J/K]
【ギブズの自由エネルギーの導出ロジックの一例】
閉鎖系Aと外界で構成される孤立系の平衡状態1→平衡状態2の変化において次式が成り立つ。
「系Aのエントロピー変化量」+「外界のエントロピー変化量」≧0 (1)
等号は変化が準静的のときのみ成り立つ。
この変化の過程で外界が均一に一定の温度を保っている場合、さらに次式が成り立つ。
「外界のエントロピー変化量」=
「外界が変化の過程で系Aから受け取った熱量」/「外界の温度」=
-1×「系Aが変化の過程で外界から受け取った熱量」/「外界の温度」 (2)
(2)式を(1)式に代入して整理すると、次式をえる。
「系Aのエントロピー変化量」≧
「系Aが変化の過程で外界から受け取った熱量」/「外界の温度」 (3)
等号は変化が準静的(変化の過程で「系Aの温度」=「外界の温度」)のときのみ成り立つ。
この変化の過程で外界が均一に一定の圧力を保ち、かつ系Aが容積変化によってのみ外界と仕事をやりとりする場合、(変化が準静的であるかないかに関係なく平衡状態1と平衡状態2においては「系Aの圧力」=「外界の圧力」となることを踏まえると)さらに次式が成り立つ。
「系Aが変化の過程で外界から受け取った熱量」=
「系Aのエンタルピー変化量」 (4)
(4)式を(3)式に代入することで、次式をえる。
「系Aのエントロピー変化量」≧
「系Aのエンタルピー変化量」/「外界の温度」 (5)
「外界の温度」>0を踏まえて(5)式を整理すると、次式をえる。
0≧「系Aのエンタルピー変化量」-「外界の温度」×「系Aのエントロピー変化量」 (6)
変化が準静的であるかないかに関係なく平衡状態1と平衡状態2においては「系Aの温度」=「外界の温度」となることを踏まえると、(6)式から次式をえる。
0≧「系Aのギブズの自由エネルギー変化量」 (7)
等号は変化が準静的(変化の過程で「系Aの温度」=「外界の温度」かつ「系Aの圧力」=「外界の圧力」)のときのみ成り立つ。
(7)式は次の条件がすべて成り立っていることが前提。
● 系Aは閉鎖系。
● 変化の過程で外界は均一に一定の温度を保っている。
● 変化の過程で外界は均一に一定の圧力を保っている。
● 変化の過程で系Aは容積変化によってのみ外界と仕事をやりとりする。
ギブズの自由エネルギーは化学反応または相変化する閉鎖系で意味を持つ。化学反応も相変化もしない閉鎖系の場合、(7)式の前提条件のもとでは系の状態が変化しない(系の平衡状態1=系の平衡状態2)。
容積変化によってのみ外界と仕事をやりとりする閉鎖系の等温定圧変化におけるギブズの自由エネルギーの変化量はエントロピーの発生量(エントロピーの変化量から外界からの熱の流入に伴うエントロピーの流入量を引いた量)に外界の温度と-1をかけた物理量に等しい。
⊿G=⊿H-T×⊿S、⊿S=fs+gs、fs=Q/T=⊿H/T ⇒ ⊿G=-T×gs
【化学ポテンシャルをより具体的にイメージする試みの一例】
外界の温度と圧力が一定(T、P)のもと、開放系Aが外界から純粋な成分iの微小なモル数の系Bを受け取ったとき(平衡状態1→平衡状態2)の状態量の変化の内訳は次のように表せる。ただし、系Bのモル数は、変化の過程で系Aの温度が一定(T)とみなせるくらい、微小と仮定する。
Ni2-Ni1=ni
V2-V1=v+⊿Vmix
U2-U1=u-P×⊿Vmix+Qmix
S2-S1=s+⊿Smix+Qmix/T
G2-G1=
(U2+P×V2-T×S2)-(U1+P×V1-T×S1)=
u+P×v-T×s-T×⊿Smix=
g-T×⊿Smix
Ni: 系Aの成分iのモル数
ni: 系Bの成分iのモル数
V: 系Aの容積
v: 系Bの容積
⊿Vmix: 外界から系Bを受け取った後の混合(相互拡散)に伴う系Aの容積変化
U: 系Aの内部エネルギー
u: 系Bの内部エネルギー
Qmix: 混合に伴って系Aが外界から受け取った熱量
S: 系Aのエントロピー
s: 系Bのエントロピー
⊿Smix: 混合に伴って系A内で発生したエントロピー
G: 系Aのギブズの自由エネルギー
g: 系Bのギブズの自由エネルギー
化学ポテンシャルμiは上記の状態変化において「ni→0」のときの「(g-T×⊿Smix)/ni」に相当する物理量(状態量)。
開放系のエントロピー、容積、およびi以外のすべての物質の物質量nj(j≠i)を一定にして、系に物質iの微少量を加えることは実験操作として難しい。系を断熱状態にして微少量の物質を加えても、一般的な室温では、エントロピーは一定にならない。
【理想混合気体と理想溶液の化学ポテンシャルからラウールの法則を導出するロジックの一例】
温度Tと圧力Pにおいて気液平衡にある理想混合気体と理想溶液からなる二相多成分系の成分iの気相と液相における化学ポテンシャルはそれぞれ次のように表せる。
μi気相(T、P、Xi気相)=gi気相(T、P)+R×T×ln(Xi気相) (1)
μi液相(T、P、Xi液相)=gi液相(T、P)+R×T×ln(Xi液相) (2)
μi: 成分iの化学ポテンシャル
gi: 純成分iの1モル当りギブズの自由エネルギー
Xi: 成分iのモル分率
R: 気体定数
温度Tにおける純成分iの蒸気圧Pi*に対して温度Tと圧力P(>Pi*)では、純成分iは液相のみの均一系となり気相が存在しないので、gi気相(T、P)は直に測定できないが次式のように定まると仮定する。
gi気相(T、P)=gi気相(T、Pi*)+R×T×ln(P/Pi*) (3)
温度Tと圧力Pの気液平衡において、成分iの気相と液相における化学ポテンシャルは等しくなることから、(1)、(2)、(3)式より次式をえる。
gi気相(T、Pi*)+R×T×ln(P/Pi*)+R×T×ln(Xi気相)=
gi液相(T、P)+R×T×ln(Xi液相) (4)
(4)式の右辺は次式のように変形できる。
gi液相(T、P)+R×T×ln(Xi液相)=
gi液相(T、Pi*)-gi液相(T、Pi*)+gi液相(T、P)+R×T×ln(Xi液相) (5)
温度Tと圧力Pi*において次式が成り立つ。
gi気相(T、Pi*)=gi液相(T、Pi*) (6)
(4)、(5)、(6)式より次式をえる。
ln{(P×Xi気相)/(Pi*×Xi液相)}=
{-gi液相(T、Pi*)+gi液相(T、P)}/(R×T) (7)
熱力学の関係式と液体の一般的な性質などを踏まえ、次式が成り立つと仮定する。
{-gi液相(T、Pi*)+gi液相(T、P)}/(R×T)≒
{vi液相(T、P)×(P-Pi*)}/(R×T)≒0 (8)
vi: 純成分iの1モル当り容積
(7)、(8)式より次式をえる。
P×Xi気相=Pi*×Xi液相 -
もうこれは文句なしの名著。
理論の飛躍なし,行間を読む必要もなし。
そこら辺の物理化学の教科書より絶対にこっちの方がいいです。
お勧めです。