ロックミュージックの社会学 (青弓社ライブラリー 18)

著者 :
  • 青弓社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787231901

作品紹介・あらすじ

誕生から35年をへて錯綜するロック・イメージを、アウトサイド、アート、エンターテインメントの3つの指標で解析。そこに仮託された超越・反抗・逸脱の感覚の社会的構造を検証し、ある種のコンプレックスを背負って展開してきた日本のロック受容史をたどる。

感想・レビュー・書評

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  •  2001年刊。
     これも非常読み応えのある、れっきとした社会学によるポピュラー音楽解読の書物だった。
     本書前半は、1960年代あたりからの英米を中心とした世界的な「ロック」音楽の波を、そこに付随した各種のディスクール、価値観、ファッションなどを含めて解読してゆく。社会の周縁に棲む者らの反逆的姿勢としての「アウトサイド」指標、純粋に芸術的な価値を狙う「アート」指標、一方ではポピュラリティを獲得し栄えていこうという「エンターテイメント指標。この3種の指標でロック史の動向が探られてゆく。
     たとえ当初反逆的な周縁人であったとしても、それが人気を博すると資本主義経済の巨大な力によって回収されていくというジレンマ。「ロックは死んだ」と宣告されても、それでもなお、「ロック」は生き続ける。
     本書後半は日本の1960年代から1990年代にかけての「ロック」のあらわれと変遷を描く。やはり、英米におけるそれが意味したのと同様なものとしては、日本には「ロックは根付かなかった」感が強い。何しろ、極限状況における百姓一揆を例外として、日本人には「レジスタンス」の文化は存在しないのだ。「何となく従おう」「丸く収めておきましょう」という国民性だから、そこには英米的「ロック」は似合わなかったのだと思う。反逆的な姿勢は、日本ではむしろ、後年現れたストリート・キッズたちのヒップホップ文化の方に顕著になる。もっともこれはカルト的な領域のような気がする。
     それでもなお、ロックに惹かれる人びとは一定数いるし、日々さまざまな活動が続けられている。この先、21世紀においてロックなどの音楽領域がどのように変容していくのか、さらに興味は続く。

  • 元々は卒論として書いたものを、書籍化したもの。

    半分くらいはそれなりに面白いが、残りの半分がものすごくつまらないので、読むのがつらかった。

    ロックが好きなのでその歴史を社科学的に考察したところは中々興味深いが、もう少し楽しませてほしかった。

    この本は2001年の本だが、この著者が2013年くらいに書いた「オルタナティブロックの社会学」はものすごく面白くなってたので、そちらの方がオススメです。きっと卒論なのできっと色々な縛りがあったのでしょう。

  •  音楽のロックを社会学から分析している本。本書ではブルデューの「場」の概念を用いて説明している。アウトサイド、アート、エンターテイメントの三つの要素の内、時代によってどの要素が大きな割合を占めていたのか、他の要素はそのときどのような要請をしていたのかを見ることで、その時代のロックの特徴を考察している。全体的な流れとしては、まずアウトサイド→アート→エンターテイメントときてロックの喪失が叫ばれた中で、パンクロックの登場→ワールドミュージック、ラップ、ヒップホップなどへの分化といったところ。ただ大ざっぱなまとめなので個々のアーティストまではあまり踏み込んでおらず、ミクロな視点は別に補う必要がある。
     後半の日本におけるロックも社会情勢、時代背景を反映していて面白い。ロックとは何かという問いに普遍的な答えは出ないが、どういったものがロックと呼ばれてきたのかは知ることができて、これからのロックがどうなるのかを考察できる。

  • (後で書きます。面白い)

  • 内容の偏りと、やけに難しい表現が気になった。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784787231901

  • ロックを成り立たせている価値観には性格の全く違う3つの指標がある。それらは互いに引っ張りあいせめぎあいながらいろいろな形の三角形を作っているというのが本書のテーマです。
    1)アウトサイド指標
    2)アート指標
    3)エンターテイメント指標

    なるほど、ロックといってもいろいろなカテゴリがあり、世界中でいろいろな人々に受け入れられ、20世紀の音楽の共通言語みたいになっているわけが理解できる。
    ちなみに、自分は71ページにある「気取っていて優雅でブルジョア的観念に縛られ、専門家と装置が山積みになっているようなロック」が好きです。

  • 以前から「ロックとは何だろう?」とずっと考えていました。
    それを社会学から考えた一冊。
    ちなみに著者は《アウトサイダー》《アート》《エンターテイメント》三つの指標を用いています。
    この本により少なからず私の疑問は解消されましたし,
    また現在ロックと言われている音楽が本当にロックと言えるだけの価値があるのか明確になってきました。
    ロックをきちんと聴きたい人にはおすすめです。

  • [ 内容 ]
    ロックを成立させ、ロックであることを決定づける価値観の体系―支配圏・中央圏を否定する“アウトサイド”指標、純粋芸術に挑戦しつづける“アート”指標、ポピュラリティを獲得していく“エンターテイメント”指標―この三指標は、時代的背景である対抗文化との相互依存関係のなかで生み出され、相互に絡み合いながら継承されてきた。
    それは、演奏者が自己をロック・ミュージシャンと強烈に自負するとき、聴衆がロックを受容すると意識するとき、「ロックとして卓越した存在になること」を証明する原理なのである。
    三指標が文化的正統性をめぐって牽引しあいながら築くトライアングル=ロック“場” に入り込み、ロックに仮託された超越・反抗・逸脱の感覚と心性の社会的構造を検証する。

    [ 目次 ]
    第1章 ロックミュージック文化の三つの指標
    第2章 ロック“場”の理論
    第3章 ロック“場”の展開
    第4章 日本のロック―六〇年代
    第5章 日本のロック―七〇年代
    第6章 日本のロック―八〇年代
    終章 日本のロック―九〇年代

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著者プロフィール

社会学者として、ポピュラー文化研究、情報メディア論、都市文化論、社会調査、現代若者論などを手がける。現在、武蔵大学社会学部メディア社会学科教授。著書に『オルタナティブロックの社会学』(2014、花伝社)、『ロックミュージックの社会学』(2001、青弓社)、共編著に『文化社会学の視座』(2008、ミネルヴァ書房)、『デジタルメディアの社会学』(2011、北樹出版)ほかがある。1967年、兵庫県生まれ。千葉大学文学部卒業、関西大学大学院社会学研究科博士課程修了・博士(社会学)。

「2020年 『〈music is music〉レクチャー・シリーズ ポップ・ミュージックを語る10の視点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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