小児がん病棟の子どもたち: 医療人類学の視点から

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  • 青弓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787232090

作品紹介・あらすじ

白血病や悪性リンパ腫などと闘う小児がん患児たちをフィールドワークし、死に直面した患児という社会的役割、原初的な母子関係への回帰など、患児同士、患児と親、患児と医師・ナースの相互作用の諸相を導き出して、病棟社会の関係構造を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 小児がん病棟という”社会”において普通の子どもが病児になっていくプロセスを追った医療人類学ドキュメント。そこには「死の不在」という文化が存在した。

    親子の間で、死は積極的に避けられていた。たとえば、母親は、子どもの前では病気が軽いものであるように振る舞い絶対に泣かない。子どもも親の意をくみ取りそのようにふるまう。

    子ども同士においても同様であった。たとえ子どもの一人が、〇〇ががんで死んだらしいと発言しても、その場の子どもやスタッフに黙殺され話は続かない。また、子ども自身への余命告知はされず、他の子どもに知識が広まらないよう配慮されている。

    そして死はなかったことにされていた。誰か死亡退院したときスタッフは、他の子どもに対し「良くなったから退院した」「家の近くの病院に移った」とだけ説明し、子どももくわしくは尋ねない。

    死はついに訪れない。いよいよ終わり近くなり、個室に移され母と子だけの密接な関係下に置かれた子どもは、病児役割を急激に脱ぎ去っていき母子の緊密な結びつきの中で息絶える。しかし、死の直前でも母親は子どもに対してすぐ治る病気であるかのようにふるまい、子ども自身もそれを信じ込んだままでいる。

  • フィールドワークの在り方など、考えさせられる。
    人類学の視点から小児がん患児を捉えたのが興味深かった。

  • 図書館所蔵【493.94TA】

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著者プロフィール

国際基督教大学大学院・教育学研究科(教育心理学専修)・博士前期課程修了(臨床心理学専攻)。
成城大学大学院・文学研究科(コミュニケーション専攻)・博士後期課程所定単位取得後退学(臨床コミュニケーション専攻)。
文教大学女子短期大学部,岩手大学等を経て,現在,山梨英和大学人間文化学部・大学院教授。
公認心理師,臨床心理士,精神保健福祉士。
現専攻: 1)臨床ナラティヴ・アプローチ(リフレクティング,リメンバリング,解決志向リフレクティング,ナラティヴ・バウム)
2)臨床人類学-精神誌作成

「2021年 『〈フィールドワーク〉小児がん病棟の子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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