ソートン・ワイルダー戯曲集 2

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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787584359

作品紹介・あらすじ

氷河、洪水、地震、戦争の破局を日常生活で乗り切ってきた人類一家。人間存在の不安・希望をコミカルに描く寓話劇。

感想・レビュー・書評

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  • 前言撤回。ワイルダーは「状態の戯曲」だ、むしろ「存在の戯曲」と呼ぶべきか。
    異化を常に喚起し、同化を拒む点はブレヒトに似ている。ホメロスや創世記の引用、戯曲の内容としての人類史が『フィネガンズ・ウェイク』『ユリシーズ』とも。
    驚きとしての演劇手段。この作品では、劇中劇があるが、外枠の演劇とその中に含まれる演劇がほぼ同じ大きさなのが骨子。
    また、演劇においては、「現在」こそが栄光だというのがワイルダーの信念。
    例えば、朗々と台詞を語っていた俳優が突然絶句した瞬間のような、劇場全体を覆う凍りついた刹那。舞台も客席も時間が止まってしまったような瞬間。それがワイルダーのいう「現在」であり、彼は「現在」を人工的に生み出している。
    戯曲の内容は、人類史。ゴーギャン風に言うと『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへいくのか』
    矛盾そのものの総体としての人間の劇化である。人は生まれ、死に、その繰り返しを続けてどこへいくのか。
    人間には、完璧を求める要求とそれに応えようとする指向性がある。同時に、人間にはその実現に背を向ける要素も兼ね備える。
    その相反する葛藤の中で、人類が生き延びていくこと、その存続性自体が戯曲の主題の一。
    太陽が昇ったことをもって、特別会議を開催し、世界の終わりを24時間だけ延期するという冒頭は、『わが町』の主題を思わせる。
    ワイルダーの戯曲は、読んでいると観たくなる・・。

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著者プロフィール

1897-1975。新聞編集者の父とイタリア語翻訳家の母のもと、ウィスコンシン州マディソンに生まれる。イェール大学で学士号を取得(1920)の後、ローマのアメリカン・アカデミーでイタリア語と考古学を学ぶ(1920-21)。プリンストン大学でフランス文学の修士号を取得(1926)。フランス語の教師を務めた後、本格的に劇作、小説、翻訳などを手がけるようになる。小説『サン・ルイス・レイの橋』(1928)戯曲『わが町』(1938)『危機一髪(ミスター人類)』(1943)で三度ピューリッツァー賞を受賞。その他、その業績に対してドイツ出版協会平和賞(1957)、大統領自由勲章(1963)を、小説『八日目(The Eighth Day)』で米国芸術アカデミーのフィクション部門金賞(1968)を授かるなど、多数の賞を受賞している。

「2018年 『三月十五日 カエサルの最期』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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