極北の地にて 改訂

  • 新樹社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787585394

作品紹介・あらすじ

酷寒の地の果てへ…19世紀末、極北の地クロンダイクで発見された黄金に憑かれた人々。生命をかけたその苛酷な冒険の旅を描く。世紀を超えて読み継がれる名作の数々。

感想・レビュー・書評

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  • 「生の掟」「生命にしがみついて」「焚き火」は前に読んだことがあった。それ以外で印象に残るのが、
    「極北の地にて」と「マーカス・オブライエンの行方」
    この二つの話は結果が正反対。いずれも金鉱探しに集まった男たちの末路を描くもの。ふたつともドラマにしたらとてもおもしろいんじゃないかと思った。

    川と湖と街の簡単なアラスカの地図が載っているので、よむのに助かった。

    「極北の地にて」
    金鉱さがしにアラスカ・クロンダイクへ向かう男たち。
    北の地に何の備えもなく一攫千金を夢見て、困難なルートでのクロンダイク行きに加わった男二人。事務仕事をしていた二人は力仕事をせず、冬に向かうある日、一行について行くのをやめ、山小屋で冬越しするのを選ぶ。砂糖や小麦粉など冬をこす食糧はあったはずだが、去りゆく一行は「あいつら、キルケニー猫だぜ」という。キルケニー猫はけんかをすると、皮も毛も、鳴き声だってなくなっちまうまで続けるというのだ。果たして、極夜となり一日中真っ暗の日々の中、男二人は・・・ 

    「マーカス・オブライエンの行方」
    小さな金の集積地。ここでは住民のなかから判事を選び、殺人、盗みなどの判決を行う。軽ければ食糧2週間分とか3日、殺人などの場合は食糧無しで、小舟に一人のせてユーコン川に送りだすのだ。ここで選ばれ判事をしていたマーカス・オブライエン。ある日金を見つけるが、ぐでんぐでんに酔った勢いで、ちょっとしたいたずらをされ、空身でユーコン川へと送りだされてしまう。以後、この街ではマーカス・オブライエンの姿を見た者はなかった。・・・ところがどっこい、ここが小説のいいところ。結末はとてもユーモラスだ。

    「千ダース」
    卵千個を金鉱の街へ運ぼうとした男の、運ぼうという執念。 

    「老人たちの結束」
    先住民の老人が、俺を裁いてくれとやってくる。白人を何十人と殺した伝説の先住民だった。彼が語る越し方には悲しい先住民の消滅の物語があった。老人の語りを通して、カナダ奥地の自然の生業を壊してしまった、ロンドン自らをも含む、白人の自然への浸蝕への贖罪ともとれる。
     

    <クロンダイクへの3ルート>解説にあり。
    当時内陸のクロンダイクに向かうには3ルートがあり、ベーリング海からユーコン川を遡る、カナダのチルクート峠から下る、のが一般的。もうひとつ第3のルートがカナダ内陸のエドモントンからマッケンジー川を下りユーコン川へと向かうもの。この第3のルートはとても困難で先住民でさえ驚くルートなのだが、このルートで「極北の地にて」の男たちはこれを選んだ。ロンドン自身も、チクルート峠からクロンダイクのドーソンに入り、ユーコン川を下って、帰ってきている。
     ドースン・シティが中心的な町。ユーコン川河口のセントマイケルからドーソンまでは蒸気船が走っていて、金のある者はこれを使ったという。そうでない者はチクルート峠から入り、自ら小舟を操り、犬橇を使ったりしてドーソンに入ったとある。


    ・極北の地にて(In a Far Country 1899)
    ・生の掟(The law of Life 1900)「火を熾す」に所収
    ・千ダース(The One Sousand Dozen 1901)
    ・老人たちの結束(The League of the Old Men 1902)
    ・生命にしがみついて(Love of Life 1903)「火を熾す」に「生への執着」として所収
    ・マーカス・オブライエンの行方(The passing of Marcus O'Brien 1907)
    ・焚き火(To Build a Fire 1907)~「火を熾す」「犬物語」に「火を熾す」として所収

    1996.7.1初版 図書館

  • 短編の名手といわれる所以がよくわかる一冊。「焚き火」が圧巻。

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著者プロフィール

ジャック・ロンドン(Jack London):1876年、サンフランシスコ生まれ。1916年没。工場労働者、船員、ホーボーなどを経て、1903年に『野生の呼び声』で一躍人気作家に。「短篇の名手」として知られ、小説やルポルタージュなど多くの作品を残した。邦訳に『白い牙』『どん底の人びと』『マーティン・イーデン』『火を熾す』『犬物語』などがある。

「2024年 『ザ・ロード アメリカ放浪記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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