“家の中”を認知科学する―変わる家族・モノ・学び・技術

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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788508897

作品紹介・あらすじ

家事労働が外注化されケータイが家族を繋ぐ時代。人々の認知活動という視点からとらえた激変する家族の風景、その現在と未来。

感想・レビュー・書評

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  • ■第一章 文明論から見た家庭と家族 - 梅棹忠夫(文化論)
    ・「男がかせぎ、女が家の事をやる」という事は明治政府が作ったイデオロギーである。
     江戸時代、この思想は武士の家の思想であった。それを一般市民にまで家族イデオロギーとして浸透させた。
    ・情報の個人化から、家族は解体していくだろう。

    ■第二章 夫婦関係、親子関係から見る日本の家 - 柏木恵子(発達心理学)
    ・夫婦間の相手への満足度は、妻の職の有無による。
     妻が仕事を持つ事で、夫は妻を対等なパートナーと認識するため。
     さらに満足度は妻の収入に比例する。
    ・職を持つ母親のほうが育児ストレスが少ない
     接する時間が短い分、ストレスが軽減される。
    ・専業主婦は長い間接しているためストレスが溜まり、ストレスを持ちながらの子育てになる。
    ・子育てをしない人ほど、苦労を実感しないので「子供は自分の分身」だと感じる。多く接しているほど、自分と違う考えを持つ事を自覚する。
    ・高学歴の人ほど子供に生きがいを感じない。他の物(仕事など)に求める。
    ・子供の価値は変化している。
    ・子供は「授かるもの」から「作るもの」に変わった。
    ・子供はかつては労働力であったが、今は「明るくする」「生きがい」「活気がつく」など精神的なもの
    ・子供の価値は子宝思想から不問とされたテーゼであった。
    ・最近家族崩壊などが取りざたされているが、家族は崩壊していない。時代に合わせて変化をしているだけだ。
    ・家事を分業する必要がなくなった。
    ・女性は社会的な扱いの変化を求めている。


    ■第三章 家庭はいったいどんな場か - 若林幹夫(社会学)

    ・家は外と分ける役割である
    ・昔は、家という「中」に「外」とつなげる緩衝地帯といえる空間があった。(出居・縁側)
    ・家族の形と家の形は密接に関係している。
    ・盆栽、金魚、柱の傷などは家族で同一のものを共有するメディアといえる
    ・新聞を父親が読み聞かせていた時代:家族同士でアクセスできる必要があったため家の構造もそれに準じていた
     →個々で情報を取得できる現代:部屋がばらばらでも大丈夫。
    ・会社勤めの時は、会社が自分を認めてくれていた。退職後、自分史を書く人が多いのは、自分が何者であるかを確認するためである。


    ■第四章 家の中の物から見えてくるもの - 佐藤浩司(建築人類学)
    ・韓国人のある一家の家のものをすべて展示した展示会「ソウルスタイル」を元に考察
    ・この展示は 個人の生活を知ること→社会を知る  物を知る→個人を知る というスタンス
    ・家族について。同じ場所に居ることが時間や歴史を共有することではない

    ・これまで家族や社会とは同じ空間で時間を共有するという概念があった。
     そのため電車の中という同じ空間の中で時間を共有しない行動(化粧や携帯で通話)がおかしな事とみなされた。
     しかし、携帯などの発達で個々がコミュニティの外と交信できるようになった。
     同じ空間にいるからといって、同じ経験共有していることではなくなった。

    ・現代において、家族は愛の共同体ではなく、生活空間を共有するコミュニティ
    ・家族が家を作るのではなく、家が家族を作る



    ■第五章 家事をどう学ぶか - 小松原明哲(人間工学)
    ・家事の伝承は徒弟制度だ
    ・家事には多くの暗黙知がある
    ・家庭にはめんどくさい事は外に出し、楽しい事を受け入れる傾向がる(自分の支配下だから)
    ・家事の衰退→基本技能の衰退→基本技能を産業の中で教えると効率が落ちる→産業の衰退
    ・核家族化が進んだ→お手本がない→家事技能の衰退
    ・家事の習得は see→plan→do→rewarded→check
    ・家事でもお手本が必要だ 手本の奥にある真意を主体的に発見させることをサポートすべきだ

    ■第六章 家の中の慣習をどう学ぶか - 外山紀子(認知心理学)
    ・家の中の習慣はその家独自のもの
    ・習慣の取得は教授型ではなく、観察/参加型
    ・年長者と子供のやり取りは知的発達を促進させる
    ・幼児の食事
     食事を与える事はルーティンワーク:注意喚起→口に入れる→フィードバック(ほめる等)

    ・失敗の位置づけ

         失敗
    学校 ↑ 許される
    家  │
    仕事 ↓ 許されない


    ■第七章 家の中の学習 - 原田悦子・赤津裕子(認知科学/認知工学)
    ・家の中の技術は、一度思えるとやり方はなかなか変わらない
    ・変わりにくいいえの中の技術を変えた要因
     - 家族メンバーの変化
     - テレビ番組
     - モノ
    ・モノ(媒体/メディア)によって認知過程は変化する
    - 産業革命で電車 → 伝差を走らせるための社会・秩序

    ・新しいものは若者がまず習得し、徐々に老人へ広まる

    ・老人が新しいものを覚えられない原因
    - デザインの悪さ(若老共通)
    - 周りに迷惑をかけたくない
    - 概念
    - できないことを知られたくない ←メタ認知

    自分の能力を理解している

    ・作った側が思ったとおりに使うことが学習ではない
    ・物を使うことは創発的な使用こそがベースラインという視点で考えるべきだ

    ノーマンの手法
    一個一個は単機能だが、いろいろ組み合わせて欲しいものが作れるようにしよう

    ・自分が王である家の中では、ユーザーの創発的な使い方を支援するようにデザインする事が大切
    ・そして、それが家の中に入ったとき、行動を変える


    ■第八章 介護の仕方をどう学ぶか - 齋藤洋典・白石知子 (認知情報論/地域看護)
    ■第九章 学校で家庭科はどのように教えられているのか - 峰木一春 (高等学校教諭)


    ■第十章 人の行動を支援する技術 - 中島秀之(認知科学)
    ・農耕社会→工業社会→情報社会→物語社会(ドリーム) by ロルフ・イエンセン
    ・野菜に「私が作りました」 情報化技術もそうなるのでは?

    ・マイボンタン
     すべての物にタグを付け、学習により一番快適なものを提供する
     問題:アフォーダンス・ボタンの数

    ・すべてをコンピュータが先回りする。迷ったり苦労したりする人間の楽しみ、生き甲斐は?



    ■第十一章 人にやさしい製品を作る - 渡辺治雄(生活者行動研究所)
    ■第十二章 思い出工学 - 野島久雄(認知心理学)
    ・思い出(特に写真)を媒体としたコミュニケーション支援の研究の紹介


    ■第十三章 技術が目指す「未来の家 - 北端美紀(ヒューマンインタフェース)

    ・洗濯機などの家電製品が家庭生活を大きく変えた
    ・家族間の情報伝達はかつて主婦が行っていた
    ・家族間で流通する情報は以下のようなものがある
    - 家族の様子 ┐
    - 予定    │情報把握
    - 記録    ┘
    - 献立    ┐判断
    - 予定    ┘
    - 離れて住む家族との連絡
    - 管理
    - 地域情報の収集


    ・家族をターゲットとした最近の研究の取り組み例
    - 家族間のさりげないコミュニケーションの支援
    - 賢い部屋
    - ロボット


    ・技術的な観点
    - 時間、空間の自由度の拡大
    - 日常生活、家事のユーザ適応的な情報支援

    ・家族におけるコミュニケーション支援
    - 一緒にいないときの情報共有
    - 家族で共有する話題提供
    - 共通の趣味や興味対象の話題提供
    - 以上をタイミングよく提示する


    ■第十四章 家の中の情報化を考え - 原田悦子・野島久雄(認知科学)

    ・価値観、モラル、生き方が個々のレベルにまで細分化された
    ・携帯は個人を閉鎖した輪の中にとどめた
    ・情報社会が目指す6D
    ・受け入れる土台(社会)があるから情報化が社会に入る
    ・ホテル家族
     自分が気分のいいサービスだけを受ける場所
    ・情報化が家庭を弱めた
    ・家電製品の多くが個人ユースを対象としている
    ・携帯は家族とは共有しない情報である
    ・ホームサーバー、ホームネットワーク
    ・家族or家庭内のメンバーで共有したい情報
     - 写真、ビデオ
     - テレビ番組
     - プラン
     - 内外で発生する情報
      ↓
     問題:プライバシー・ルール→管理者、ログ

    ・見守りシステムの問題:パワーバランス
     情報の非対称性:老人の情報→若 若→老  →  これが逆にコミュニケーション
             内容
             タイミング

  • から、
     人間工学なんかなぁ〜?
    と推測してたんですが、どっちかと言うと良い意味でハズレでした。

    確かに家の中のデザインを考えるに当たっては、家族や家庭の変遷は外せないですね。

     便利になった、人間が楽をできるようになったから使ってもらえるはずだ!

    じゃダメで、
     いま、家族ってのはこういう構成が主流だから、これが必要だ
    という根拠をしっかりと考えなければなりませんね。

    この本は、そういったデータを始めに示してから述べられていました。
     (後半は人間工学でしたが、内容はまぁ知ってることが多かったです)


    働いてからは主観的なイマジネーションだけでなく、客観的なデータをもっと収集する必要があるなぁ〜と思わされた一冊でした。

  • 05/10/27読了。
    サイバーマート実現したら、個人認証とかで情報漏洩とかも起きそう。それに人件費は減るだろうが、ますます職がなくなるのもまずいもかも。「ロボット」の世界になったりするか?

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