心の先史時代

  • 青土社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791756537

作品紹介・あらすじ

人間はなぜ文化をもったのか。人類は600万年前に進化の系統樹から猿と分かれ「心」を進化させた。文字や石器の登場以前の先史時代に、人類はその心で何を見て、何を考えていたのか?心のシステムを解明する進化心理学と、認知考古学の最新データを駆使して、心の世界へ新たな扉を開ける。芸術・宗教・科学の起源。

感想・レビュー・書評

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  • 人類のみならず霊長類の進化と、「心の発生」を、考古学者が心理学の知見を援用して解き明かそうとする一書。

    現代のわたしたちのような「心」が発生したのはいつか。ミズンはそれを10万年前にみる。このとき、ホモ・サピエンスが登場しているのだが、ホモ・サピエンスの脳には「認知的流動性」が出現する。すなわち、それまでばらばらに発達してきた一般知能・博物的知能・技術的知能・社会的知能が、言語によって結び合わされ、現在の我々のような複雑な心の働き―芸術や宗教、そして科学―が可能になったというのだ。その爆発的進行は、残された遺物からして6万年前以降だという。

    壮大にして、魅力的な問い。「心はいつ発生したのか」。しかし、この問いに正解を見いだすことはなかなか難しい。だからこそ、我々を捉えて離さない、のかもしれない。

  • 2015.6.10人間の心を理解したい、そして人間は進化してきた生物だ、ならば心の進化を知れば、先史の心が如何にあったかを知れば心を理解できるのではないか、という問いから始まるこの本は、まるでホームズの推理小説のようで、ひとつの仮説を考古学の証拠が見事に肉付けしていく様は感嘆の一言に尽きる。内容もさながら、論の運び方にも非常に感銘を受けた。無論、これが絶対解という訳ではないか、そもそも心なんていうよくわからないものを、文字による文献もない先史にまで遡って明らかにするということ自体、なんだそれって思うし、しかしそのなんだそれ、が、見事に論じられているのである。ここでいう心は、脳をハードウェアにした場合の、ソフトウェアのようなものである。個体の成長は系統の進化を反映しているとの見解から、現代の人間の心理構造を明らかにし、それらが先史に照らし合わせてどの年代からどの心の段階が現れ、どう進化していったのかを豊富な考古学的証拠から分析してきる。私はこの心の構造進化を、色のように例えられるのではないかと思う。つまり最初期、猿との共通祖先の時期における一般知能は白紙のようなもので、その白紙に学習によってつけられる色が後にまとまり、言語、博学、社会、技術などのそれぞれの色に特化した。そして最終的にはそれらの色を、他者からの色の伝達と自らの内省的意識を元に混ぜ合わせ始め、最初は原色が数色しかなかったものが、多彩な色を作り出せるようになり、その結果が文化ビッグバン、芸術や宗教、科学や農業のスタートだったのだと思う。様々な色を混ぜ合わせることがこのような知性の革新を生み出すことから何が学べるか、それは我々の心も同様の構造を持っているので、様々な教養を幅広く学ぶこと、そしてそれらの色を混ぜ合わせることが想像力、創造力、ユーモアに繋がっていくということ、すなわち教養の大切さではないだろうかと思った。数々の証拠を元に説得力ある主論を展開する痛快さ、600万年前の祖先から心の進化を辿るロマンを味わえた名著。

  • ちょっと興味範囲と違った。個人の心についてというより集団の意思の方に興味があることがわかった。もちろん比喩で興味深いところはあるんだけれどあまり刺さらなかった。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(立花隆選)26
    人類史・文化人類学
    人間精神の多くの側面が先史時代に起源を持っている。

  • (AMAZONレビュー)
    「認知考古学」とは発掘された遺跡や道具から、かつてその場所で生活していた原始人たちの精神がどのようなものだったのかを探るもの。 たとえば住居の状態から何人ぐらいの集団で生活していたのかといったことなどを推測し、その集団の規模が維持されるために必要な認知能力は何か、とか、この道具を作り出すために求められるのはどんな心的機能か(計算能力は必要か、計画性を立てることができなければならないか、など)いったことを推論する。

  • 心の起源を先史時代に求める

  • 認知的流動性という考えを軸に原人やネアンデルタール人の知能を検証。要するに、応用が利くようになるまでにいかに長い進化の過程が必要だったかをのべる。

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