ネオリベラリズムとは何か

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791763269

作品紹介・あらすじ

グローバル化する新自由主義=ネオリベラリズムは国際格差、階級格差を激化させ、世界システムを危機に陥れようとしている。ポストモダン社会科学の第一人者が、ネオリベラリズムの起源から現状までを明快に総括し、これを分析・批判するための新しい空間理論を提唱する。

感想・レビュー・書評

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  • マルクス主義の残党がネオリベラリズムを批判している。
    ネオリベラル国家は特に金融機関に甘い。
    金融上の失敗は国家が後始末するか、世間の関心を逸らす。
    国外では国境を越えた資本の動きにたいする障壁を取り除き、商品も金融資本も、資本蓄積のグローバルな力に市場を開くことが目指され、多くの場合、独占が進行する。
    ・・・・・・・
    数えるほどの多国籍企業が独占権力をますます強化するだけ。
    p.30-32

  • この本では、1970年代のネオリベラリズムの背景に、1970年代石油価格の高騰で石油産出国が得た利益がアメリカの投資銀行に集まり、この資金を海外で投資できる状況を作るための国際債券・金融市場の自由化だったことを挙げている。その金はメキシコなどラテン・アメリカなどに向けられたが、この投資の多くは債務不履行に陥り、要は失敗に終わった。

    ところが、この「ツケ」をアメリカはなんと投資の対象国自身に振り向けた。IMFとアメリカ財務省の力を併せて、貸し付けられた国(メキシコなど)は、借金の返済を延期してもらうかわりに、福祉予算の削減や労働法制の緩和と民営化を行わせたのである。とはいえ、この「債務を相手国に押しつける」という離れ業がいったいどうやって実現できたのか、この本では詳しく書かれていないのが残念だけど。

    また、一部の「成功」現象によって、ネオリベラリズムが全般的には失敗していた事実が隠蔽されたという。上流階級がメディアを握っているので、「失敗した領域は競争力が足りなかったのだ、という神話がまきちらされ、それによってさらなるネオリベ改革の素地が作られた」(p.49)という。「イデオロギーに染まった言明が押しつけられ、いろいろな場所で危機が頻発することによって、構造的な問題が隠蔽されてきた」(p.50)

    それにしても、どうして日本ではハーヴェイ的な意見が通らず、ネオリベラリズム的な「イデオロギーに染まった言明」を言う奴が人気があるんだろうか。そのことが不思議でならない。それを解明することが、戦後日本史の最大の課題なんじゃないか。マジで。

  • ごく普通の内容。
    安ければ購入。

  • ネオリベラリズムって、グローバリゼーションとともにとりあえず諸悪の根源として批判しとけば、賢そうに見えるっていう、ある意味非常に便利な言葉です。
    だけど、グローバリゼーションがローカル性と結合し、非常に複雑な状況なのと同様に、ネオリベラリズムも一言で批判しきれない複雑さを孕んでいます。
    言葉の使い方には気をつけようと思いました。

  • [要旨]
    グローバル化する新自由主義=ネオリベラリズムは国際格差、階級格差を激化させ、世界システムを危機に陥れようとしている。ポストモダン社会科学の第一人者が、ネオリベラリズムの起源から現状までを明快に総括し、これを分析・批判するための新しい空間理論を提唱する。
    [目次]
    ネオリベラリズムと階級権力の再生(ネオリベラル的転回;ネオリベラルな国家;移植、拡散、転回;中国という独特なケース ほか);地理的不均等発展の理論に向けた覚え書き(議論の構造;社会的プロセスが「生活のネットワーク」のなかに物質的に埋めこまれていること;略奪による蓄積と価値切り下げ;時空間における資本蓄積 ほか);空間というキーワード

    アメリカが20世紀後半、とりわけ米ソ対立解消以降において、「植民地をもたない帝国主義」をどのような反民主主義的戦略によって非共産主義国を“解放”させていったのか、そのことがどのように「ネオリベラル国家の資本主義政策」となっていったのか、それが有利なビジネス環境づくり、アカウンタビリティ(資金管理責任)の確立、コスト効率などの強権的波及などを通して、結局は<span style="color:#ff0000;"><b>「あらゆるリスクを公共部門に担わせ、利益のいっさいは私企業が吸い上げるという新自由主義システム」</b></span>の完成に向かうことになったのか ・・・
    とくにハーヴェイは、ネオリベラルな政策がどんな民主主義をも愚民政策にしてしまったこと、そのためにはIMFやWTOの動きをもまんまとネオリベラル国家の得策に寄与させたこと、さらにはNGOでさえネオリベ政策の“トロイの馬”にしてしまったこと、そのくせ個人の「自由と責任」だけは巧みに目立つようにしたことなどを問題視して、企業国家主義というものがいかにアメリカを構造矛盾に追いこんでいくか、それが金融市場主義の姿をとるのはまだまだ病巣の一部であろうことを喝破してみせた
    <a href="http://www.honza.jp/senya/1/matsuoka_seigow/1356">ISIS本座 - 『新自由主義』デヴィッド・ハーヴェイ 松岡正剛の千夜千冊</a>

  • David Harvey『Spaces of Global Capitalism』の訳本です。
    この翻訳がほんまにヒドイ。
    ここまでひどい訳は腹立たしいです。

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著者プロフィール

(David Harvey)
 1935年、イギリス生まれ。ケンブリッジ大学より博士号取得。ジョンズ・ホプキンス大学教授、オックスフォード大学教授を経て、現在、ニューヨーク市立大学特別教授。専攻:経済地理学。都市研究分野の第一人者であり、「人文・社会科学で最も引用される著者の一人」として知られる。
 2005年刊行の『新自由主義』は高い評価を得るとともに、アカデミズムを超えて話題となり世界的ベストセラーとなった。また同年、韓国で首都機能移転のため新たな都“世宗”が建設されることになったが、その都市デザイン選定の審査委員会の共同議長を務めている。2008年には、『資本論』の講義動画をインターネットで公開し、世界中からアクセスが殺到。現在の世界的なマルクス・ブームを巻き起こすきっかけとなった。この講義は『〈資本論〉入門』および『〈資本論〉第2巻・第3巻 入門』として刊行され、世界で最も読まれている入門書となっている。2010 年刊行の『資本の〈謎〉』は、『ガーディアン』紙の「世界の経済書ベスト5」に選ばれた。
 現在も、ギリシャ、スペインから、中南米諸国、中東、中国や韓国まで、文字通り世界を飛び回り、研究・講演活動などを行なっているほか、エックス(旧ツイッター)のフォロワー数も本書刊行時点で18万人を超えており、コロナ禍でも、本書のもとになったオンライン番組の更新を続けるなど精力的に活動し、インターネット空間でも変革を求める人々を世代を超えてインスパイアし続けている。
(エックスID:@profdavidharvey、ウェブサイト:davidharvey.org)

「2023年 『反資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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