南極探検とペンギン

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791773770

作品紹介・あらすじ

知られざる南極探検の英雄と秘められたペンギンの生態の秘密に迫る
100年前に南極に到達したスコット探検隊のメンバー、ジョージ・マレー・レビックは氷に阻まれ一冬を南極で過ごすこととなった。海軍の医師であったレビックは周囲のペンギンたちを観察するうちに、彼らの奔放な性生活に気づきノートに書き留めていったが、生涯それを公にすることはなかった。気鋭のペンギン学者がレビックの足跡を追い、過酷な南極探検の実態とペンギンたちの驚くべき生態を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • ペンギンの生態にももちろん驚愕する、というレベルでびっくりしたんだけど、スコットの奥さんの不倫の話が全てをかっさらっていくほどの衝撃だった。

  • ふむ

  • 南極探検とペンギン
    忘れられた英雄とペンギンたちの知られざる生態

    著者:ロイド・スペンサー・デイヴィス
    訳者:夏目大
    発行:2021年5月10日
    青土社

    構成があまりにも悪い文章だった。100年以上前に世界初の南極点到達を目指した2隊(イギリス、ノルウェー)、さらに南極でそれぞれ分隊したため合わせて数隊になったその行動記録、南極遠征をした著者の記録、100年前に発見されたペンギンの行動、著者が(現代に)発見したペンギンの生態、こうしたいくつもの話が短いスパンで入り交じってくるので、読んでいて整理がつかず、実に分かりにくいし、興味がいちいちそがれる。下手としか言いようがない。しかも、ペンギンの性的な生態に無理矢理なぞらえて、ここに登場してくる探検家たち人間の性的な行動を結びつけていこうという〝企画倒れ〟ぶりもちょっとお粗末。

    ペンギンがオス同士の同性愛行為を行うことは、最近、知っている人が増えている。テレビなどでも取り上げられているためだ。ペンギンの生態をもっと知りたいと思っていたのでこの本を手にしたが、期待は裏切られた。訳者後書きによると、あくまでも知られざるペンギンの生態の本であり、それに加えて南極探検の話だと書かれているが、実際はその逆。南極探検のノンフィクションが主体で、ペンギンについては全450ページほどのうちの1割もない。しかも、とにかく無駄な文が多すぎる。半分以上は不要だ。

    一夫一婦の仲のよい夫婦と思われていたペンギンは、85%が離婚する(エンペラー・ペンギン)との記述はまだましで、不倫、強姦、集団強姦、輪姦、屍姦、さらには、売春まですることが判明した、とセンセーショナルに表現する。もちろん、比較的有名なオス同士の同性愛についても書かれている。100年前の探検家(生物学者)や著者自身(ペンギン学者)が発見した内容だが、詳しく読むとそれは野生動物としてごく自然な行動だと納得できることが多く、2本足で歩く姿が人に似ているため何かと擬人化されるペンギンであるがゆえ、センセーショナルな表現が活きてくるにすぎない。ただ、それでも読んでいると興味深くはあるけど。

    南極探検に関するノンフィクションは、1900年前後に南極に到達した人々の記録から始まる。彼らは次々に南極の湾や岬に到達し、彼らや彼らの国にちなんだ人名をそれらの地名にしていく。
    次は1910年に始まる南極点への到達競争が描かれる。イギリスはロバート・ファルコン・スコットがテラノバ号で、ノルウェーはロナルド・アムンゼンがフラム号で出発。誰もがスコットに注目していた。アムンゼンは北極に行くと嘘をついて出航し、南極へ。
    この本の主人公であるマレー・レビック(医師、生物学者、写真家)はスコット隊に乗船していた。

    スコット隊は雪上車とポニーが中心で犬ぞりも。アムンゼンは犬ぞりのみ。雪上車は2台とも故障、ポニーも弱って殺さざるを得なくなった。犬は食料がなくなると、殺した犬の肉を食べるが、ポニーは大量の餌をソリに積んで運ばなければいけないのもやっかいだった。
    予想に反し、アムンゼンが世界初の南極点到達を達成した。スコットは後塵を拝した上に戻る途中のテントで仲間たちと死ぬことになる。別の場所でペンギン観察をして帰ったレビック一同も迎えの船が動けなくなって来てくれず、小屋で越冬するが、なんとか帰国できた。

    レビックはアデリー・ペンギンを中心に、人の生活ならばあってはならないペンギンたちの性行動を目撃して、記録する。しかし、性について保守的なヴィクトリア朝時代に生まれた厳格な彼は、記録したノートのうちその部分には上から張り紙をして、意味不明のギリシャ文字での暗号を書いた。また、研究論文も発表しなかった。そして、著者が見つけるまで、そのノートは100年間も世に出ることがなかった。
    一方で、スコットの美しい妻は、スコットが南極に行っている間(結局帰ってこなかった)、アムンゼンの師匠であるフリチョフ・ナンセンと不倫する。そのナンセンの妻エヴァは、ナンセンが北極点到達に挑んでいる最中、極地探検家のエイヴィンド・アストラップと不倫する。そうした不倫の話を、ペンギンの〝不倫〟実体と重ね合わせながら紹介する。

    アデリー・ペンギンは夏に繁殖するが、エンペラー・ペンギンは非常に厳しい冬に繁殖する。生態紹介はアデリー・ペンギン中心で、アデリー・ペンギンはメスが卵を二つ産むとオスが温める。2週間温めるが、その間、メスは海に飛び込んで餌を食べまくり、すっかり太って帰ってくる。次に温めは選手交代で、オスが海に飛び込む。やはり2週間ほどで太ったオスは帰ってきて、その後は1~3日交代で温める。33日ぐらいで雛が孵るが、メスは自分が胃に蓄えた餌の一部を吐き出して雛に与える。
    最初にメスの帰りが2週間より遅れると、オスは自分が餓死してしまうため卵を放棄して海に入ってしまう。卵は最初の危機を迎える。雛が返り、メスが胃の中の餌を与えるが、そこでオスの帰りが遅れると雛をおいて海に潜らないといけない。今度は雛が危機を迎えることに。

    冬になり、アデリー・ペンギンは北へ移動する。そして、夏場にまたコロニーに戻ってくるが、基本は同じカップル。だが、一方の戻りが遅くなると、本来のカップルでない相手と〝不倫〟をする。しかも、複数であることもしばしば。別のオスからメスを奪いとったオスにすれば、前のオスの精子が残っていると、自分の遺伝子のない卵を2週間も温めるはめになるため、何度も何度も交尾をする。3時間に1度という頻度。さらに、通常は一つめの卵を産むともう交尾はしないが、別のオスから奪ったオスは一つめが生まれても交尾し続ける。

    アザラシなど海獣に襲われたのか、血に染まり、弱ってふらふらと歩いているメスがいた。しかし、オスはそこに容赦なく襲いかかり〝強姦〟をした。しかも、終わると別のオスも襲いかかり〝集団強姦〟や〝輪姦〟状態に。

    著者が剥製のメスのペンギンを置いた。すると、動かず倒れているそれに対してオスは交尾をする。さらに、ペンギンの人形相手にも交尾をした。著者はそれを称して〝屍姦〟と表現する。
    レビックも、前のシーズンに育ちきらずに死んだ雛と思われる死体を相手に、ペンギンが交尾をしているのを目撃していた。

    1901年、貞淑だったヴィクトリア女王が死に、「愛撫王」の名も持つ性に奔放な息子のエドワード7世が王位を継ぐ。著者はそれにも重ね合わせて、ペンギンや人間の不倫を表現しようとする。無理がある。そして、450ページほどの半分以上は無意味な文字だという印象だった。作家ではなく、ペンギン研究の学者だから仕方ないかもしれない。

    *****

    レビックのノートから
    オスのペンギンとメスのペンギンが交尾するのを見ていた。終わって二羽が離れてからよく見たら、メスだと思っていたペンギンは実はオスだったことが分かった。しかも、その後、二羽は立場を逆にしてメスだったはずのペンギンが上に乗った。
    →著者も同じ光景をバード岬で見ていた

    著者の発見から
    アデリー・ペンギンは繁殖期(夏)にサブコロニーに戻り、元々のカップルと出会うが、一方が遅いと〝不倫〟をする。しかし、タイミングがあってうまく出会えても3組に1組はカップルにならず、〝離婚〟をする。

    アデリー・ペンギンは、オス同士の争いだけでなく、オスをめぐってのメス同士の争いも多い。しかし、多くは間違ってオスの争いだと記録されている。

    新たにコロニーに来たオスが、すでにつがいになっているメスを見かけると交尾をしようとし、メスも拒まない。そこにオス(夫)が急に帰ってくるとオス同士の争いになる。

    著者の発見から
    オスの約3分の1は、交尾が完了する前にメスの体から落ち、3分の1は誤った方向に精子を射出してしまう。正しく出せるのは3分の1。

    著者の発見から
    アデリー・ペンギンは、メスの10%が、すでにつがいの相手がいるのに近くの別のオスと交尾をし、またすぐに元の相手のところに戻る。生殖能力のないオスもいるので、念のためにしているのだろうか・・・

    冬に繁殖をするエンペラー・ペンギンは、最も寒い時期に集まり、「ハドル」と呼ばれる円陣を組む。ハドルの外側は寒く、内側は温かくなるが、不公平がないよう内と外を定期的に交代する。彼らが営巣地を持たないせいでこういうことになる。

    GPSを取り付けて調べたところ、バード岬のアデリー・ペンギンは、繁殖期が終わると直線距離で1500キロメートルも移動していたことが判明。正確な移動距離は2800キロメートル。往復で5000キロメートル以上。

    アデリー・ペンギンは、巣を作るのに小石を使う。メスがいないオスのところに行き、求愛ポースをするメス。小石を集めていたオスはそれにつられて交尾をしようと近づく。小石からオスを離しておきつつ、交尾をさせないで小石を一つ頂戴する。それを何度もする。それを称して著者は〝売春〟と言っている。

    極地探検ではビタミンCが不足し壊血病を患う。
    それに加えて深刻なのは性剥奪。北極の方が南極よりまし。イヌイットが近くにいるため。イヌイットの愛人をつくる北極探検家も多い。

    南極高原の端にまで到達したアムンゼン一行は、キャンプを張り、当初の計画どおりに18頭だけ残して残りの犬を全て射殺した。勇敢で不運な犬たちの肉は仲間の犬の餌となり、人間たちも壊血病を防ぐために少し食べた。

    南極で犬が使われたのは、1899年にボルクグレヴィンクがアダレ岬に上陸させてから。今は犬は使われていない。著者が最後に南極で犬を見たのは1985年1月28日。

    ペンギン研究をやり遂げ、奇跡の生還劇を果たしたレビックは無名の隊員の1人として母国に戻った。死亡したスコットを讃える声にかき消されてしまった。

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