非暴力の力

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791774869

作品紹介・あらすじ

暴力とは何か。生存可能で哀悼可能な生の平等へ。
暴力を正当化する「自己防衛」、その「自己」の意味を徹底的に問い直し、人間が根本的に、他者や非人間を含む環境と相互依存していることを明らかにする。私たちは個人主義の罠を超えて、どのように連帯することができるのか。常に現代の諸現象を鋭く分析し、精神の最深部に訴えかけ続けてきた著者が示す、戦争とレイシズムの時代における非暴力のマニフェスト。

感想・レビュー・書評

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  • ジュディス・バトラーは世界に自分がペテン師であることを思い出させるために再登場した|トランスジェンダリズム海外情報|note(2020年10月10日)
    https://note.com/f_overseas_info/n/n58eab2472f0e

    “不平等な現実”を乗り越えるには? 世界的な哲学者ジュディス・バトラー氏が語った5つのキーワード | ハフポスト PROJECT(2018年12月14日)
    https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/13/judith-butler_a_23617639/

    青土社 ||哲学/思想/言語:非暴力の力
    http://seidosha.co.jp/book/index.php?id=3707

  • ポスト・モダーンなラジカルなフェミニズム論者という印象が強いバトラーの新著は「非暴力」論。原著は、2020年なので、コロナやブラック・ライブズ・マターを踏まえての議論になっていると思う。

    非暴力については、ガンジーやマーティン・ルーサー・キングなどの本や活動など、関心をもっていたのだが、近年の香港での民主化デモやロシアでのウクライナ侵攻批判のデモの弾圧をみると、その限界といったことも見えてきているように思え、とはいえ、一方的な暴力に対抗しつつ、暴力の循環を生み出さない方法論が思い浮かぶわけでもなく、悶々としているところ。

    バトラーのこの本を読んでも、そのモヤモヤが解消されるわけでもないが、この問題を考えるときの論点のようなものが見えてきたような気はする。

    バトラーは、「非暴力」が現実に有効に機能するかどうかというより、「世界は暴力的なものである」といったディスコースを批判するものとしてまずは捉えている。では、「現実的にどうするのか?」という疑問がすぐに湧いてくるのだけど、まずは、議論のスタート地点としては、そのとおりだなと思った。

    で、バトラーは、われわれの生が一人では存在し得ないものとだということを確認して、「個人主義」的な思考を批判して、「相互依存論」的な「関係論」を展開する。そして、その認識をベースに、人間以外の生態も含めたところでの「非暴力」を位置付ける。この部分も、異論はない。

    ここまでは、ほぼ私がなんとなく考えていたことと似ているのだが、意外であったのは、バトラーは、ここからフロイトの戦争論(アインシュタインとの往復書簡も含む)など、深層心理、つまり、超自我や死の本能などを参照しつつ、議論を進めている。

    バトラーは、当初、社会構成主義的な論者だと思っていたのだが、何冊か、読み進めるとフロイトやヘーゲルなどにも影響を受けていることはわかってきた。とはいえ、私としては、その辺りがどうバトラーのなかで組み合わさっているのかはよくわからなかったし、今回の本を読んでも、そこはなかなか釈然としないところ。

    あと、フーコーの生政治に関する議論、とくに1976年の講義「社会は防衛されなければいけない」にもかなり依拠している部分があるが、この辺も「フーコーの議論をそう解釈していいのかな?」というのは、わからない感じはした。

    といろいろ釈然としないところは多い本だが、近年のバトラーの本と同様、ものすごく難しい、なにを言っているか不明という感じでもなく、丁寧に読めば、ある程度、理解可能な範囲にあると思う。

    とはいえ、ウクライナで起きていることが頭にあるので、バトラーの力強い議論にもかかわらず、「非暴力」ということに、なんとなくの無力感を感じてしまうのであった。

  • 小川公代2023129twより

  • 309||Bu

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著者プロフィール

カリフォルニア大学バークレー校教授。主な著書に『ジェンダー・トラブル――フェミニズムとアイデンティティの撹乱』『アンティゴネーの主張――問い直される親族関係』(以上、竹村和子訳、青土社)、『アセンブリ――行為遂行性・複数性・政治』(佐藤嘉幸・清水知子訳、青土社)、『分かれ道――ユダヤ性とシオニズム批判』(大橋洋一・岸まどか訳、青土社)、『権力の心的な生――主体化=服従化に関する諸理論』『自分自身を説明すること――倫理的暴力の批判』(以上、佐藤嘉幸・清水知子訳、月曜社)、『生のあやうさ――哀悼と暴力の政治学』(本橋哲也訳、以文社)、『戦争の枠組――生はいつ嘆きうるものであるのか』(清水晶子訳、筑摩書房)、『触発する言葉――言葉・権力・行為体』(竹村和子訳、岩波書店)、『欲望の主体――ヘーゲルと二〇世紀フランスにおけるポスト・ヘーゲル主義』(大河内泰樹・岡崎佑香・岡崎龍・野尻英一訳、堀之内出版)、『偶発性・ヘゲモニー・普遍性――新しい対抗政治への対話』(エルネスト・ラクラウ、スラヴォイ・ジジェクとの共著、竹村和子・村山敏勝訳、青土社)、『国家を歌うのは誰か?――グローバル・ステイトにおける言語・政治・帰属』(ガヤトリ・スピヴァクとの共著、竹村和子訳、岩波書店)などがある。

「2021年 『問題=物質となる身体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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