自由意志対話: 自由・責任・報い

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791775255

作品紹介・あらすじ

肯定論者×懐疑論者。自由意志から現実世界を問いなおす。
デネットは自由意志と決定論についての両立論を肯定し、私たちには自由意志があるとはっきり主張する。カルーゾーは決定論と自由意志は両立せず、私たちは自由意志を欠いていると考える。伝統的に対立してきた二つの立場をとるデネットとカルーゾー。異なる立場から、自由意志、そしてそこから派生する責任、賞賛、非難、刑罰の問題までをも縦横無尽に議論する。

感想・レビュー・書評

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  • 以前読んで面白かった「自由意志の向こう側」の著者の訳ということで読んでみた。世界は因果的に全てが決定しており、人間が行為の責任を負えるような自由意志は存在しない、という立場のクルーゾーと、そのような決定論的世界でも人間には「自由意志」が存在するという立場のデネットの論戦が三部に分かれて展開されている。論を深めていくにあたってお互いの考えをはっきりさせていくという展開ではあるのだが、クルーゾーが歴史的な哲学的な議論の合意に沿って「それってあなたの否定する応報主義では?」「あなたの言う自由意志って、実際にはそんなものないけど『そうあるべき』だからあるとみなす」ってことでは?」みたいに責めるのを、「そんな定義には僕の意見はあてはまらない」と逃げることを繰り返して、同じような話を繰り返しながらかみ合わないままなのでなんだか歯がゆい。クルーゾーが「あなたの立場を聞くのは、まるでウナギと格闘しているようです」と言うけど、まさにそんな感じ。

    デネットの言う「およそものを考えられる人々であれば、責任ある存在とみなされることこそが人生最大の祝福であると理解するはずだ」というのは直感とか理想論とか建前として非常に共感はできるのだが、こうして哲学的議論の場では弱い立場であることがわかってしまうのが悲しい。
    ただ、デネットの提案する「道徳的行為クラブ」の会員たるための閾値という考え方には、人間って理解力はあってもそんなに合理的・理性的に行動する存在ではないだろうと思ったし、いかにも西洋の時代遅れな啓蒙主義的価値観を隠しもしないのが嫌。名誉殺人(これを擁護するわけではないが)するような遅れた文化は教育するか、受け入れないなら無視するみたいなことを平気で言うのでちょっと驚く。クルーゾーの「公衆衛生ー隔離モデル」も人間は理論で生きているわけじゃないから無理があると感じるし、3部の机上の空論感はすごい。ぜひ昔流行ったアメリカのコミューンみたいなのを作って実験してもらいたいなと思った。

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著者プロフィール

Daniel C. Dennett
1942年生まれ。1965年、オックスフォード大学より哲学博士号取得。現在、タフツ大学名誉特任教授・同大学認知科学研究センター所長。現代英語圏を代表する哲学者の一人。著書も多く、近著としてIntuition Pumps and Other Tools for Thinking, 2013(『思考の技法――直観ポンプと77の思考術』)、From Bacteria to Bach and Back: The Evolution of Minds, 2017(『心の進化を解明する――バクテリアからバッハへ』)などがある。

「2020年 『自由の余地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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