結局、自分のことしか考えない人たち

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794217080

作品紹介・あらすじ

自己愛人間の7つの大罪をあげ、理不尽な言動の奥にひそむ「自己愛の傷つき」、複雑な心理構造を解き明かす。さらに自己愛人間のつくられ方、かれらの毒から身を守る4つの戦略を紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 自己愛性パーソナリティ障害、自己愛的人格障害などの用語で呼ばれ、本書では「自己愛人間」と端的に呼ばれている有害な人間について、その対策まで踏み込んで書かれているところが貴重だと思います。
    M.スコット・ペック著「平気でうそをつく人たち」1983年原著から約20年、自己愛性が病的に強い有害な人間に関する研究が進み、対策まで本に書かれるようになったということでしょう。

    本書では、「自己愛人間から身を守る4つの戦略」として、
    「戦略1:自分を知る」(自己愛人間の被害を受けやすい自分の側の要因を知る)、
    「戦略2:現実を受け入れる」(自己愛人間と自分の関係に対する幻想・誘惑・無駄な期待を排除し、その関係における現実を見つめ直す)、
    「戦略3:境界を設定する」(自己愛人間と自分との間に本来あるべき境界を設定し、入念な準備の上で何とかしてその境界について合意を形成し、一旦設定した境界は守り抜くことによって、自己愛人間による境界の侵害を防ぐ)、
    「戦略:4相互関係を築く」(なるべく自己愛人間との関わりを制限し、他の健全な人間との相互関係を築くことによって自分の心の健康を守る)、
    という戦略を掲げ、想定事例に対しこれらの戦略に基づく具体的な対処方法を論じています。(4つの戦略に関し丸括弧内に注記したのは私なりの本書記載内容要約です。) 

    但し、残念ながら、自己愛人間の被害から身を守るための最良の対策を突き詰めるならば、「逃げろ」「関係を断て」「他の人間との健全な相互関係を上手く構築しろ」ということになってしまうようで、米国に比べ転職の難しい日本の企業内で自己愛人間が蔓延している問題に悩まされる身としては困ったものです。
    企業文化の問題としては、キャロル・ダヴリス&エリオット・アロンソン著「なぜあの人はあやまちを認めないのか」で詳述されている、万人に共通の心理である「認知的不協和」による「自己正当化」の問題として捉えるのも良いかも知れません。同書には、自分は立派で価値のある人間だと思っている自尊心の高い者ほど激烈な加害者になるという主旨の記述もあり、これなどはまさしく「自己愛人間」の危険性をもたらす原因の中核を成す部分であるように思えます。

  • 自己愛性パーソナリティー障害患者は自己愛と脆さと防衛のサイクルにとらわれている。彼らの非常に矛盾した振舞いを目にしてしばしば驚き、戸惑う。

    自己愛人間の七つの大罪
    1. 恥を知らない
    2. つねに歪曲し、幻想をつくりだす
    3. 傲慢な態度で見下す
    4. 妬みの対象をこき下ろす
    5. 常に特別扱いを求める
    6. 他人を平気で利用する
    7. 相手を自分の一部とみなす

    その病はその本質ゆえに、私たちを互いに遠ざけるだけでなく、現実からも遠ざける。そして、私たちが手に入れたい、こうありたい、と願うものの実現を妨げる。

    健康な自己愛とは、あらゆる感情を感じられ、他者の感情も共有できる能力であり、夢見る力をもち続けながら現実と幻想を区別する知恵であり、人生を楽しむ才能。
    健康な自己愛は真の自尊心の上に成り立つが、概して自己愛人間(ナルシスト)にはそれが欠けている。

    情緒面・精神面の成長、行動を導く内面の価値体系、問題解決技能の、真の自己肯定感、自己の現実的な認識、他者を尊重する能力、他者の気持ちを認識する能力、共感性……ありとあらゆる基礎が著しく欠如している。

    そう、まさにイロイロ「欠けている」。

    自己愛人間の " 他者を犠牲にして未熟な自己を守ろうとする振舞いや態度 " は相手の人格を侵害し破壊する。そして自分自身も滅ぼす。本当にその通りだ。

    そんな自己愛人間から身を守る方法を知るために、彼らの正体をつかみ、彼らがそのように振舞う理由を理解すること。
    幼児期に正常な発達を遂げられなかったことが原因だといっても、いい歳をした大人になっても変われないのは何故なのか?

    理解…理解…また理解ですか…と。苦労するのはいつも健康な精神をもつ側という現実にうんざりしつつ読む。
    はっきり言ってめんどくさい人々。なぜ人として成長しないのか!?と憤ることが多いが、本人もそうなりたくてなったわけじゃないのだろう。彼らは彼らで親の育て方の被害者なのだという理解をしつつ、関わる者として被害者にならないための"戦略"が紹介されている。たとえば「ときには、相手の精神構造が二歳児なみだと思うことが役に立つ。」
    無駄がなく、的確な表現で非常に濃い内容の良書。

    本書では自己愛性パーソナリティー障害者を扱っているが、境界性パーソナリティー障害者にも共通することが多い。卵の殻のように脆い自我、思い通りにならないと逆ギレ、共感性や思いやりの欠如、平気で相手を利用し傷つける、罪悪感の欠如、学習能力の欠如、理想化と脱価値化、歪曲、親密な関係が築けない、そして中身は空っぽ…驚くほど酷似している。

    - - - - - - - - -
    memo

    「心の奥深く、おそらく記憶の届かないところで暗号化された乳幼児期の体験を示している」

    「性格は悪くないが、他者への思いやりはこれっぽっちもなかった。薄っぺらで、何でも自分のことばかり。」

    「とくに顕著なのは、他者の利己的な利用と、それにたいする自覚のなさ、もしくは良心の呵責のなさだった。」

    「他者は彼らの要求を満たすために存在し、要求を満たさないなら存在しなくてよい。」

    「情緒的に破綻した母親から分離できず、本当の自分ではなく、母親か父親の望む人間になった。そのような子どもは、自尊心がもろく、他者の承認に頼るが、自分の弱さと耐えがたい恥が暴露されかねない依存関係や親密な関係も怖い。」

    「共感に満ちた愛を知らないために、心の奥に冷酷さを宿すか、激しい渇望感を抱く。」

    「彼らの罠に陥るとき、わたしたちは自己を捨てているのだ。」

    「理想化、完璧さの追求、イメージの捏造、錯覚、事実の歪曲、吹聴や誇張、否認、真っ赤な嘘。彼らはどんな手を使ってでも、恥を呼び覚ます現実を避け、誇大感と全能感を支える幻想を推し進めようとする。」

    「自己愛人間がだれかを相手に嘘をつく、だます、蔑む、傷つける、信用を裏切る、利用する、冷たい態度をとる、といった行動を見せたら、遅かれ早かれ、いつかあなたもその対象になる」

    …まさに。

  • 健全な自己愛を持つことは人間としてとても大事なこと。でも、自己愛が過剰になると自分も周りも不幸になる。自分に自信を持つことと、自分を特別視して傲慢で恥知らずな態度を取ることは大きな違い。自己愛過剰な子供を作り出してしまう親の特徴、教育の特徴も説明されていて、とても興味深い内容。

  • 自己愛人間の攻略本である。しかし自己愛人間は精神病の中でも一番解消しにくいタイプであるので、攻略というのは自己愛人間に振り回されている人々の意識改革に尽きる…自己愛人間に傷つけられないように自分を変えていくのです!なんと自己前向きな方法〜☆自己愛人間とは?自分の事しか考えつかない人の事です。常に他人に自分の感情を持ち上げてもらわないと生きていけない。名誉欲や征服欲、物欲など。そのためには他人や身内をも利用するが、タチが悪いのがまったく自分の悪癖に気が付いていない事。自分は人に何でも要求を受け入れられて当然なんだと思っている。その性質は乳幼児期から培われる。恥の解消の仕方を覚えさせないと、恥を自分で処理できずに感情の爆発で無にしてしまう。そうならないためには、小さい頃にしでかす様々な悪戯に対して、謝らせる時に無理強いしない事らしい。一度、幼児をクールダウンさせた上で、話しを聞く態度になった時に、謝罪を促したり、親も一緒に付いて謝るなりさせる。謝る事は恥ずかしい事ではないという事を覚えさせるのだ。自己愛人間は恥の解消のやり方を幼児期に親から教えてもらえなかった結末。そして、その自己愛人間を作る親もまた、自己愛人間である事が大半であるそうな。そういう意味で、自分を振り返るのも良し、今から育てる子供に対応させるのも良し、人間関係の原因がこの中にあるかも知れませんね。

  • 自己愛者で自分がそうであると自覚していないのが厄介である。

  • 世の中には身勝手な人が多いから気をつけないとね。
    そういうバカから自分を守るためにも、自分を見つめて自分を愛しましょう。自分を守れるのは自分だけだから。
    会社の人から借りた本。

  • こいつら全員面倒くせえ…
    って思うけど、人の振り見て我が振り直せだよな…

  • 自己愛、ナルシストの恐ろしさ、対処法が面白い。
    特に子どもがナルシストにならないための指南が一番です。

  • 職場の他部署に周りを困らせるタイプの人がいて、もしかしたらと思い読んでみました。

    その人は傾向はあるもののちょっと違うかな?という感じでしたが、役に立つところはありました。

    自己愛は誰にでもあるけど、強すぎたりすると周りを苦しめて自分も困ることになるというのはわかりました。

    しっかりと診断を受けている人はかなり少ないそうですが、自分にも周りの人にもそういう部分はあったりするというのがわかってよかったです。

    自分がそうならないように気をつけたり、周りに自己愛傾向が見られたら振り回されないように冷静に対処するなど、この本を読んでおくと役に立ちそうです。

    パーソナリティ障害はほかにも種類があるそうなので、他も知りたいと思いました。

  • 翻訳本(洋書がベース)に多い、具体例やケース紹介が多い面はあるものの、自己愛人間について良くまとめられていると思います。
    身内に自己愛人間がいるならば、自分も自己愛人間の可能性があるということで、両面から自己愛への対処について述べられているもの良かった。
    一回読んだだけでは吸収しきれなかったので、本格的に理解するには何度か読む必要がありそう…

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著者プロフィール

サンディ・ホチキス(Sandy Hotchkiss)
心理学博士、精神分析医、公認臨床ソーシャルワーカー。セラピストとして30年以上のキャリアをもつ。専門分野はパーソナリティ障害、特に自己愛性パーソナリティ障害とその対人関係。カリフォルニア州パサデナで開業しており、ニューポート精神分析研究所で教鞭も執る。

「2020年 『文庫 結局、自分のことしか考えない人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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