文庫 平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学 (草思社文庫 ぺ 1-1)

  • 草思社
3.62
  • (31)
  • (64)
  • (59)
  • (9)
  • (6)
本棚登録 : 1124
感想 : 81
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218452

作品紹介・あらすじ

世の中には平気で人を欺いて陥れる"邪悪な人間"がいる。そして、彼らには罪悪感というものがない-精神科医でカウンセラーを務める著者が診察室で出会った、虚偽に満ちた邪悪な心をもつ人たちとの会話を再現し、その巧妙な自己正当化のための嘘の手口と強烈なナルシシズムを浮き彫りにしていく。人間の悪を初めて科学的に究明した本書は、人の心の闇に迫り、人間心理の固定概念をくつがえした大ベストセラー作品である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者の息子、とんでもないことに気づいた。
    悪(evil)という字の綴りは、生きる(live)という字の綴りの逆だということに。悪は生に対置するもの、他者を支配し、その肉体ばかりか精神をも殺すもの。
    悪い人間に焦点をあて(悪い人間というのは犯罪者を指すのではなく、どこにでもいる普通の人間)虚偽で取り繕った仮面の下にある「邪悪性」に目を向けさせようというのが本書のねらい。気づきにくいけれどわりと出会う、話していて、なんだか変だぞあなたの感覚、と感じるような人々。精神科医の診断を求めて来る者たちの多くは、この邪悪性の犠牲となっている。
    最後の方では、ベトナム戦争時のアメリカ軍によるソンミ村虐殺事件を中心に、集団としてまたは国家としての悪に考察が深まる。理想主義者であることを自認する著者は、世界平和を希求するためには悪と科学的に向き合うことが必要だと考えているようだ。非常に高邁な信念のもとに書かれたのではないかと思われる、読みやすくも示唆に富むベストセラー。

  •  離婚調停中に、私はこの本に出会いました。妻は、虚偽DVを主張しており、どうやら彼女の記憶ではそれが真実になっているようでした。この本は、彼女を理解する上で、大変役に立ちました。私は、自己愛性パーソナリティ障害の関連としてこの本を読みました。身近に実例があったこともあり、非常に分かりやすかったと思います。

     この本で、特に面白いと思ったのは、「病気」と「邪悪性」に定義をつけ、定義をつけることの有用性を説明してくれていたことと、個人から組織に視野を拡大していたところです。考え方として、大変参考になりました。

    病気『人間としてのわれわれの潜在的能力を完全に発揮することを妨げる、身体および人格の構造内に存する欠陥である』
    邪悪性『自分自身の病める自我の統合性を防衛し保持するために、他人の精神的成長を破壊する力を振るうことである』
     この定義に当てはめると、毒親に育てられた子は、「親の邪悪性という病気によって生じる病気」といえるのかもしれません。理解不足で、間違ってたら、申し訳ありません。

  • 久しぶりに人文科学系の作品を読んだ。性善説ではなく、性悪説で人間の本質に斬り込んだ作品。自己正当化とナルシシズム…人間の本質は悪なのか…たなか亜希夫の『軍鶏』にも、『人間の本質は悪』という記述があり、ずっと心に引っかかっていた。現代日本で増加している極悪非道の犯罪の多発を見れば、本質が悪という人間が増えているように思う。でも、性善説を信じたい。

  • 邪悪 人や生き物を肉体的、もしくは精神的に殺す者

    精神科医の著者が過去に出会った患者のうち「邪悪」な人について書かれている

    邪悪な人は嘘をつく。自分の邪な考えを周りに伝播するが、周りの人はこの邪悪に歪められる。特に子供は親の邪悪な行いに気付く事はなく、自分が傷ついた事すら分からない。子供は精神を病み、「見なし患者」と呼ばれる。真の患者は邪悪な親の方である。
    邪悪な人は自分の心の弱みをひた隠し、赤裸々にされる事を一番怖がる。赤裸々にされる前に無意識な嘘を作り出し、周りに邪悪を押し付ける。

  • なんだかわからないけれど付き合いにくい人、モヤモヤとした印象が残る人、話しても理解しあえない人、、、。誰にでも、身近にいると思う。嫌な人間関係というものも、あるのだ。腑に落ちる。

  • 「虚偽と邪悪の心理学」という副題がついているが、あまり心理学という感じがしない。

    精神科医として著者が出会った困った連中が大勢出てくる。ただ、彼らが「病気」なのかどうかはぼくにはよくわからない。人並み外れて胸糞悪いのと病気なのはどこが境目なのだろう? 病気は当人の責任ではないが、子どもを虐待するのは病気なんだろうか? そういう連中を「治せる」のだろうか? 

  • 前半部分は面白かったが、事例に出てくる患者のほとんどは救えていないので、尻切れトンボ感がある。ただ、参考になる部分もあった。
    終盤の「集団の悪」の部分は、精神科学や心理学というよりも、根拠の明示されない論文をただ読まされているような、そんな印象だった。

    全体を通して作者の思想や考えに偏りがあるように見受けられる。
    また所々で、作者が人種差別的な意識を持っているように感じた。アジア人や黒人に対して。
    総じて、作者の考える邪悪性というものに対して、作者の決めつけ感が拭えず、腑に落ちない部分が多々あった。

  • 草思社文庫。M、スコットペック。森英明訳。原著は83年、96年訳、文庫は11年刊。
    タイトルから想像する内容とはちがった。著者が臨床医師としてあつかった何人かの患者の所感から、「邪悪な人々」の接見記録をかいたもの。邪悪な人とは、罪悪感なく虚偽を働く嘘つきのこと。罪悪感がなく、自分ではそれが自分ないしあいてにとってよいことだとおもって行っているがゆえに、自覚して虚偽を働く人間とはちがうのだという。事実著者はかれら邪悪な人たちと接見するなかで、その事実をほのめかしたり指摘したり、さまざまな方法で自覚させようとするのだが、そうすればするほど、彼らは一向に意に介さないかまたは気分を害して、より一層ウソや虚偽を働く。
    邪悪な人々は統合失調症的症状をみせることがある、としたうえで、以下のようにその特徴をまとめている。P246
    a定常的な破壊的、責任転嫁的行動。ただし隠微な形をとる。
    b通常は表面にあらわれないが、批判その他の形でくわえられる自己愛の損傷に対して過剰な拒否反応を示す。
    c立派な対面や自己像につよい関心を抱く(憎しみや執念深い報復に貢献)
    d知的偏屈性(ストレス時混乱を伴う)

    著者がフロイト精神分析に理解をしめしているのに時代を感じる。彼の心理分析には頷けるところも多いのだが、そのうえでこの施療方法が役に立つかは微妙に感じるところもなどもある。
    ほかにも、心理学界の言葉が散見される。珍しいのでメモしておくと、特定の考えや行動に固執する「呪術的思考」(自分の考えがそのまま物事を引き起こす原因になると信じること)や、エリッヒフロムのとなえた悪の性格(「屍姦症」の定義を拡大したアイディア。他人を支配可能なものにし、その人間の他者依存性を助長し、自分自身で考える能力を弱め、その人間の独自性および独創性を減じ、制御可能な状態に抑え込んでおきたいという欲望)。

    接見した患者の例には以下のような人々がいる。ちなみに彼らはすべて邪悪な人々の被害者であり、著者は彼らに接することで間接的に邪悪な人々の存在を分析しているわけ。
    自殺した兄の使用した銃をクリスマスプレゼントとして親からもらった抑うつ状態の14歳男児、中流家庭の息子で抑うつ状態の15歳男児、妻に完全に抑圧されている中年夫、身持ちの悪い母親に似ていく娘。

    第四章「悲しい人間」では一章まるごと邪悪な人そのひととの接見にあてている。そこでの被害者は結局著者自身であるようだ。
    シャーリーンは35歳の時恋人と別れて鬱状態をうったえて自ら施療をのぞんだ。小柄で魅力的な外見、ユーモアと知性をもっているが、能力以下の成功しかおさめていないようだった。彼女の両親は育児に興味がなかった。父は財産管理にかまけ、母はたえずイエスの名前を口にする狂信的な聖公会教会教徒、人前はばからず夫への憎しみを公言していた。シャーリーンは両性愛を自認し、妹はレズビアン。大学試験に落第しつづけ、ボランティアとして1年働いた経験から聖公会教会に宗教教育の責任者として雇われたが6ヶ月後に解雇され、その後7回失職し、接見に訪れた時には電話交換手として働いていた。接見した内容から著者はふつう数時間で患者の問題を見抜くものだが、彼女に関しては何十回接見を重ねてもそれができなかった。数ヶ月経って報酬の小切手をうけとるとき、毎回デザインを(そのため銀行も)変えていたことに気づかされる。それは愛する先生へのシャーリーンからの霊感おびた贈り物だった。彼女はその事由については問われない限り自分からは答えず、ほかにも呪術的行動をくりかえしていた。入信しているカルトの食事規定や、転職先の業務についてあらかじめ自分のやりかたを決めておく、など。このあたりから著者は彼女が「虚偽の人」であると感じ始める。彼女は著者の自宅の前でカーラジオを聞くのを楽しんだり、敷地内に「待合室とまちがえて」はいったり、夜中に宅前でガス欠おこして著者の車からガソリンをせびり、あるいは診療のおわりに彼に抱きついて突き放すまで離れなかったこともある。著者の接見所感は、4歳以前親からの愛情を十分にうけられなかったエディプスコンプレックスだと考える。ところが治療に必要な「退行」をうけいれずにセックスをねだる。
    また自閉症とも結び付けて考えているあたりは疑問符付きで読んだ。著者は、自分を現実に従わせることが全くできない精神障害を「自閉症」と呼んで(p321)、また自閉症の最高の姿がナルシシズムである、とも。
    シャーリーンは著者を愛している、よくなりたい、としきりに語っていたが、それがみせかけだけだといぶかるようになり、それは夢について話した時に決定的になる。惑星間戦争のさなか、彼女は機械を発明する。それは魚雷、ロケット、化学兵器など発射できるのだが、同時にその発明を壊そうと敵国からスパイがやってくることも予見していた。男がやってきて彼女を誘惑すると、彼女はそれを受け入れるのだがその瞬間男は機械にかけよって壊そうとする。あわててそれをとめようとするのだが、そこで目が覚める。著者と話をするなかで、その機械とはなにかと問われて彼女は「知性」だと答え、著者がそれは「きみの神経症」だと指摘するとかたくなにそれを否定して、それがいかに素晴らしい機械だったか説こうとする(途中で著者がふきだして、彼女は不機嫌になり話は中断、帰宅してしまう)。彼女は3年を過ぎた421回目の診療日、50分かけて自分の病気を驚くほど整然と語り、もう治療は必要ないと言ってでていきその後音沙汰もない。著者は治療に失敗したと結論付けている。

  • 人が持っている邪悪性について話されている。
    邪悪の根源には原因があり、子ども時代に愛を受けなかったら邪悪になる確率が高くなったり、環境による。
    精神病になって、邪悪性に気づかない人やそれによって苦しんでいる人もいる。
    悪「evil」の反対は生「live」である。
    新しい発見のある一冊である。

  • 善の心とは躍動を生む事。
    ある脅迫神経症患者の告白。

全81件中 1 - 10件を表示

M・スコット・ペックの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×