日本の防衛10の怪

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218766

作品紹介・あらすじ

北東アジア情勢はいまだ冷戦構造を脱していない。南北が対峙するホットポイント朝鮮半島。日本を敵視しつづける北朝鮮。日本に軍事的脅威を及ぼしつつある中国、ロシア。一方で日米同盟は揺らいでいる。これほどの大国・日本はなぜ、近隣諸国の恫喝に有効な手を打てないのか。国際社会では通用しないマヤカシの「専守防衛」にしがみつき、不毛な安全保障論議をつづけ、国防についての国民の総意が形づくられていないからだ。戦史・地理・国力という公正なモノサシを当て、日本の防衛をめぐる10の問題点を検証。もっとも賢く日本を守る方法を示し、真の国軍建設への決意を促したリアルな国防論。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の防衛力を政治家は理解していない。 まず、外務大臣・防衛大臣においては地政学・軍事学を学ばなければならない。 時間が無いのであれば、防衛省から経験・知識の持っている人を招き、もう特訓で軍事学をレクチャーしてもらわないといけない。 また、日本の政治家にしても軍事学に疎すぎる。 今の陸上自衛隊の兵隊の充足率を見よ。 将来にわたって国力を堅持するためには現在の自衛隊を見直せ。

  • 日本の防衛は非常に歪な状態であろう事は素人でも想像できることだ。正面装備は陸海空とも超一流だが、銃砲弾の備蓄量が少ないとか、そもそもが困難で不利な専守防衛という発想や、実際の戦争時に兵力をどう展開できるのか、民間の資材人材を戦争に転用可能(私有地に塹壕を掘れるか?)なのか等だ。この本は現状と理想の狭間で、実現可能且つ効果的な国土防衛策を考えるものである。なんといっても日本の地理の特質を考えた防衛力整備がなされていないというのが主張だ。日本の形状は横に細長く島嶼ばかりで、奥行きが殆ど無いという状態だ。しかしそれはアメリカや中国・ロシアにとって、日本が自分の側に有れば、太平洋での展開が非常に有利になるものである。ここで提案されている石垣島の要塞化などは、すぐにでも取り掛かってもらいたいほど有効と思われる。そして最後は結局のところ人であり、いかに人材を永く確保する必要があるかということで結ばれている。

  • 左巻きは、
    「軍隊いらない、戦争なんて起こらない、戦争起こっても自分達は責任者じゃないから知らない、考えたくもない、考えること自体が戦争起こす」、
    という当事者意識ゼロの無責任性が特徴だが、
    右巻きは逆に、
    「これこれの事態にはこれだけの備えが必要、こんなことも考えてなかったのか、国民のことを考えず軍事を政争の道具として取り扱う政治家と、それに乗じて空虚な論理をこねくり回す官僚とが、自衛隊を駄目にしている、もっと(自分が考える)あるべき自衛隊にするために税金を振り向けろよ」、
    という、これまた日本の国情等を考慮しない実現性のない主張をして、俺偉い、私欲にとらわれず国のこと真剣に考えているという自己陶酔に陥っている無責任性が特徴だ。

    本書は、残念ながら後者の本だ。

    こういった本の特徴は大体、前半は現在の自衛隊の体制その他の批判。ここら辺ははっきりいっていくらでも言いようはあるので、説得力があるともないとも判断しかねる主張が繰り返される。

    しかし後半になって、批判を踏まえてのあるべき姿の提言になると、途端にぼろが出る。現実の自衛隊に関する意思決定が、苦しい内容ながらも、決定による実行責任を伴うものであるのに対し、こういった本はそれが全くないから、自説に関する苦しい点についてはすぐいい加減に開き直る。

    本書は、陸自の人員や、戦車・砲削減に反対という主張をしているが、それに関する経費面の問題については、最後にこう開き直っている。

    p220
    「金銭に換算できない、かけがえのない国民の生命を守るのだから、コスト&エフェクティブネスなど持ち出すのは不謹慎だ。そして、どんな相手にでも、この国土を犯し、同胞の生命、財産に危険を及ぼすものには、全力を尽くして対処する、経費など度外視するという覚悟の表明からのみ、本当の抑止力が生まれるのではなかろうか。」

    p248
    「人件費の増大は、人が主体の集団ではいたし方ないことで、カネよりも重要な問題があることを認識すべきだ。」

    無責任にも程がある。税金という有限の資源を用いて、如何に国民の幸福を達成するかが政治であり、お金について考えなくてよい国防論義なんてありえない。

    お金と人を天秤にかけて、感情論で自説を補強しようなんて、やっていることは左と同じではないか。

    トリアージと同じで、ヒト、モノ、カネという有限の資源を使って最大の効用を得るためには、はた目にはひどいと思われる決定が行われることもある。それを批判するも結構。でも本当に国に、国民に利益をもたらしたいと考えるのであれば、自説の無謬性にむやみに固執するのではなく、自説の問題点を、為政者の立場であればどのように克服するか、そこまで突き詰めて考えるべきではないか。

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著者プロフィール

軍事史研究家。1950年、神奈川県生まれ。
中央大学法学部法律学科卒業。国士舘大学大学院政治学研究科修士課程修了(朝鮮現代史専攻)。著書に「日本軍とドイツ軍」、「レアメタルの太平洋戦争」、「日本軍の敗因」(学研パブリッシング)、「二・二六帝都兵乱」、「日本の防衛10の怪」(草思社)、「陸海軍戦史に学ぶ負ける組織と日本人」(集英社新書)。「陸軍人事」、「陸軍派閥」、「なぜ日本陸海軍は共同して戦えなかったのか」(潮書房光人社)、「帝国陸軍師団変遷史」(国書刊行会)がある。

「2020年 『知られざる兵団 帝国陸軍独立混成旅団史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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