文庫 戦争プロパガンダ10の法則 (草思社文庫 モ 1-1)

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794221063

作品紹介・あらすじ

第一次大戦からアフガン空爆まで、われわれは政府発表やメディアにいかに騙されたか。
気鋭の歴史家が戦争当事国による世論操作・正義捏造の過程を浮き彫りにする。

われわれはこうして騙された――
第一次大戦から冷戦、湾岸戦争、ユーゴ空爆、アフガン空爆まで、
あらゆる戦争において共通する法則がある。
それは、自国の戦闘を正当化し、世論を操作するプロパガンダの法則だ。

「今回の報復はやむをえない」
「ビンラディンは悪魔のようなやつだ」
「われわれは自由と平和を守るために戦う」
・・・・・正義はこうして作られる。

これまでに戦争当事国がメディアと結託して流した「嘘」を分析、
歴史のなかでくり返されてきた情報操作の手口、正義が捏造される過程を浮き彫りにする。
ブリュッセル大学で教鞭をとる気鋭の歴史学者が読み解く、戦争プロパガンダの真実。



ポンソンビー卿に学ぶ

第1章  「われわれは戦争をしたくない」
第2章  「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
第3章  「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
第4章  「我々は領土や覇権のためでなく、偉大な使命のために戦う」
第5章  「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
第6章  「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
第7章  「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
第8章  「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
第9章  「われわれの大義は神聖なものである」
第10章 「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

ポンソンビー卿からジェイミー・シーまでの流れをふまえて

感想・レビュー・書評

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  • 1.「われわれは戦争をしたくない」 
    われわれは「いやいやながら」戦争をするのである。「やむをえず」、「正当防衛」、もしくは国際的な「協力関係」のために参戦することになった

    2.「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
    条約というのは、その効力によって条件が保証される側にとってこそ不可侵なものであるが、条約を破棄したほうが有利になる場合には「紙切れ同然」のものなのだ。

    3.「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
    たとえ敵対状態にあっても、一群の人間全体を憎むことは不可能である。そこで、相手国の指導者に敵対心を集中させることが戦略の要になる。
    敵方の指導者は、その異常な姿が真実であろうとなかろうと、非人間的な怪物であり、狂人として国民に報道される。

    4.「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」
    戦争プロパガンダは、戦争の目的を隠蔽し、別の名目にすり替えようとする。

    5.「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
     敵側だけが残虐行為をおこなっており、自国の軍隊は、国民のために、さらには他国の民衆を救うために活動しており、国民から愛される軍隊であると信じ込ませようとすることだ。
     敵の攻撃を異常な犯罪行為とみなし、血も涙もない悪党だと印象付けるのがその戦略である。

    6. 「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
     どんな武器であれ、敵が一夫的にしよし、自国が敗北する原因となった武器は、歯医者にとってルール違反の卑劣な凶器とみなされるのだ。
     どこの国も、自分たちが使う可能性のない兵器だけを「非人道的」な兵器として非難するのだ。

    7.「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」

    8.「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」

    9.「われわれの大義は神聖なものである」

    10.「この正義に疑問を投げかけるものは裏切り者である」


    卒論にだいぶつかえそう。疑うことが我々の役目

  •  本書ではポンソンビー卿がWW1後に提唱した戦争プロパガンダに関する10項目の法則が筆者が各項目ごとに取り上げるプロパガンダの例や解説を通して、法則は現在も大きく変わっていないということが論じられている。なお、本書は筆者が新しい結論を導き出すというよりは、法則の普遍性を検証していくため、やや冗長に感じる部分もあった。読む人を選ぶと思う。

     本書では戦争における具体的に行われた両陣営のプロパガンダを法則ごとに並列して見ることができる点がとても面白いと思った。そうしたお互いの言い訳を知ると、戦争の大義名分などただの虚構であり、相手と戦うという意味のみにおいては両陣営とも、動機づけややり方も大差はないものだということを意識させられた。

  • 古典的名著「戦時の嘘」の指摘を現存する政治システムでたどり、共通するプロパガンダのメカニズムを示す。

    西側が敷いた包囲網により露は侵攻せざるを得ない… や親露派を解放するため… など現在でもまさに目にする罠。考えさせられる人間の愚かさ小賢しさ。

  • 『戦争プロパガンダ10の法則』 アンヌ・モレリ 著

     「人生を変える書物というほどではないにしても、物の見方を変えてしまう本がある。(中略)この本を一読して以来、テレビのニュースを見ていても、新聞を読んでいても、ふと思うのだ。ああ、これも、ポンソンビーの指摘していた『あれ』ではないかと。」 最後にある翻訳者の「訳者あとがき」の冒頭部分ですが、とても頷けます。

     英アーサー・ポンソンピー卿が第一次世界大戦を踏まて1928年に出版した「戦争の嘘」をベースに、原著出版の2001年頃までの出来事を盛り込み再構成したものと言えます。目次の10章のタイトルを見るだけで凡その内容はわかります(目次はAmazonにあり)。「戦争の嘘」以降の戦役でも、この10の法則が適用されると書かれていますが、まさに今のウクライナにもぴったりです(日本の太平洋戦争の時も)。

     これを知ったからと言って、どうアクションにつなげるかは難しいですが、「物の見方を変え」る示唆に富んだ一冊です。

  • この本を読んだら、ニュースの見方が変わるかも。一つ一つ解説される10の法則を読みながら、ロシアとウクライナのニュースが頭に浮かんだ。この本に解説されているプロバガンダの法則の通りに、各陣営から見解が発表されているのを思い出してゾッとした。凄く、面白い本だ。

  • 洗脳ですね

  • 手に取った経緯は忘れたが、現在のウクライナ情勢もあり、興味深く読めた。個人的には、旧ユーゴスラビア紛争に関する言及が多かったことも、関心を持って読めた理由の一つ。

    いつの時代の戦争にも共通している内容で、結局情報戦をいかに制するかが、戦争をする上で重要ということ。

    現代はSNSが発達し、様々な情報に簡単にアクセスできるようにはなったが、昨今のフェイクニュース問題のように、情報が常に溢れているがゆえに、手に入れた情報が本当に正しいものかどうかを見分けることが逆に困難になっているようにも感じる。

    結局は自分で情報を吟味できるよう、メディアリテラシーを身につけることが大事だが、その点において本書のプロパガンダの法則を知っていることは大きな助けとなる。手に入れた情報を鵜呑みにしない=一度疑うという、一歩引いた場所から見る視点を常に意識したい。

  • 情報の鵜呑みは止めねばならない。というのはわかっているものの、どこまでが真実なのかを見極めるのはすごく難しい。

    余談だけど、この本、紙質がすごくいい。

  • 朝日新聞2022730掲載 評者:中村文則

  • 戦時の嘘 『戦争プロパガンダ10の法則』 - HONZ(2015年3月4日)
    https://honz.jp/articles/-/41226

    時代が変わっても共通する戦争時のプロパガンダとは 『『文庫 戦争プロパガンダ10の法則』』 | BOOKウォッチ(2022/4/28)
    https://books.j-cast.com/book038/2022/04/28017967.html

    【文庫】戦争プロパガンダ10の法則 | 草思社
    http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2106.html
    戦争プロパガンダ 10の法則 | 草思社
    http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_1129.html

    • ちーママさん
      猫丸さん

      オーディオブック の件ですが、私が調べた時にはみんながよく知っている本とかベストセラーの本しかなかったように思います
      私が読みた...
      猫丸さん

      オーディオブック の件ですが、私が調べた時にはみんながよく知っている本とかベストセラーの本しかなかったように思います
      私が読みたい本はありませんでした
      今はちょっと変わっているかもしれませんが2年前のことなので

      それと私は割と耳で聞く力が弱いように思います

      目で色んな事覚えたりするところがあるので、それでそんなに本気になってないかもしれません
      紙媒体が好きで、線を引いたりしてあとで読み返すこともあるのです

      ハンデがあるコトを不器用とは言わない

      そうですね
      不器用というのは乱暴な言い方をしてしまいました
      どうして不器用と言ってしまったか考えてみました
      私自身は学生時代から、脳性麻痺の友人の介護に入って、いろんな気付きや学びがあったと思ってきました
      また教員になってからも特殊学級を担任して、障害を持つ子どものお母さん達からいろんなことを学ばせてもらいました
      私が担任した頃は特別支援学級ではなく特殊学級と呼ばれている時代でした

      ただ今、自分自身が、これも障害と言えるかどうかわからないけど、以前よりもできない状態に陥っていることの整理ができてないところがあります
      確かに以前より、ハンデが軽減されるような機器や施設は進歩してきたと思います
      それもわかってるんですけどね
      私は近視と乱視と老眼で視力が弱い部分が多かったのですが、
      2年前に加齢黄斑変性の発見が遅れて、視神経にダメージを受けてしまいました
      2ヶ月に1回目に注射をすることで進行を防ぎます

      また、この病気のおかげでと言うか、緑内障も発見されました
      最近は白内障も進んできたのでどこかのタイミングで手術をします

      色々書きましたが、まだまだ自分の中に受け入れられてない部分があるんだと思います

      でもこの病気になったことで、ブクログを始め、
      こうやって一つ一つの言葉にこだわる猫丸さんという面白い方との交流もできるようになったのは、プラスだと思ってます
      また何か情報があったら教えてください
      2022/05/14
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ちーママさん
      > 私が読みたい本はありませんでした
      それは残念。テキストデータを音声に変換するソフトがあるくらいですから、今では増えているか...
      ちーママさん
      > 私が読みたい本はありませんでした
      それは残念。テキストデータを音声に変換するソフトがあるくらいですから、今では増えているかも、、、

      > それと私は割と耳で聞く力が
      聴きたい本が増えて、聴く機会が増えたら慣れて力が付きますヨ!

      > どこかのタイミングで手術をします
      そうなんですね。それまで目を労わって備えてください。

      > まだまだ自分の中に受け入れられてない部分があるんだと思います
      んー
      受け入れたら楽になる部分と、抗うコトで伸びる場合があるでしょう。
      人生って夢を追いながら、今この時と折り合いを着かなきゃならない。
      ちーママさんがベターだと思う道を見つけてください、、、
      2022/05/14
    • ちーママさん
      返信コメントありがとう
      自分にとって刺激のあるコミュニケーションになったと思います
      ではまた
      返信コメントありがとう
      自分にとって刺激のあるコミュニケーションになったと思います
      ではまた
      2022/05/15
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著者プロフィール

アンヌ・モレリ(Anne Morelli)
歴史学者。ブリュッセル自由大学歴史批評学教授。歴史批評を近代メディアに適用し、世論を特定の方向に誘導するからくりを体系的に分析してきた。著書に『Lettre ouverte ── la secte des adversaires des sectes (宗教団体を弾圧する団体への公開質問状)』。

「2015年 『文庫 戦争プロパガンダ10の法則』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アンヌ・モレリの作品

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