文庫 ソーシャル物理学: 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 (草思社文庫 ぺ 3-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794223579

作品紹介・あらすじ

SNSをどう利用するかで投資家の利益率は変わる。
会議で全員が同じだけ発言するようにすると生産性は上がる。
風邪の引き始めに、人は普段より活動的になる。

身につけるセンサなどによる人間行動のビッグデータから、それまでいかなる社会科学や人間研究にも不可能だった知見が次々と得られるようになった。
世界的なデータサイエンティストである著者は、それらの知見をもとに組織や社会の構築・改善を試み、多くの成功を収めてきた。
この「社会物理学」は社会科学に革命を起こし、企業などの組織運営のあり方を根本から変え、
都市計画や社会制度設計に大きなインパクトを与える“新しい科学”である。


はじめに―本書はいかにして生まれたか

第1章 社会物理学とは何か
──社会の進化をビッグデータで理解するための新しい枠組み

◆パート1 社会物理学
第2章 探求
──いかにして良いアイデアを発見し、優れた意思決定に結びつけるか
第3章 アイデアの流れ
──集合知の土台となるもの
第4章 エンゲージメント
──なぜ共同で作業することができるのか

◆パート2 アイデアマシン
第5章 集団的知性
──交流のパターンからどのように集団的知性が生まれるのか
第6章 組織を改善する
──交流パターンの可視化を通じて集団的知性を形成する
第7章 組織を変化に対応させる
──ソーシャルネットワーク・インセンティブを使用した迅速な組織の構築と、破壊的な変化への対応

◆パート3 データ駆動型都市
第8章 都市のセンシング
──モバイルセンシングによる「神経系」が都市をより健全・安全・効率的に
第9章 「なぜ人は都市をつくるのか」の科学
──社会物理学とビッグデータが、都市の理解と開発のあり方を変える

◆パート4 データ駆動型社会
第10章 データ駆動型社会
──やがて来るデータに基づいて動く社会とは、どのような姿になるのか
第11章 社会をより良くデザインする
──社会物理学が人間中心型社会の設計を支援する

解説 [矢野和男(日立製作所フェロー)]

付録1 リアリティマイング
付録2 オープンPDS
付録3 早い思考、遅い思考、自由意思
付録4 数学

感想・レビュー・書評

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  • 発行からおくればせながら本書読みました。MITのメディアラボに所属しているペントランド先生の本ですが、いかにもメディアラボの本という感じでとても面白く感じました。スマホやソシオメトリック・バッヂと呼ばれるセンシング機器を通じて人々の交流情報や活動情報を集め、そこから普遍的な特徴を洗い出すのですが、ペントランド先生の視点は西洋の個人主義的な価値観ではなく、むしろ東洋のコミュニティ的な価値観からモデルが組まれていて興味深かったです。

    ペントランド先生は本文中で、集団をアイデアを生み出すマシーンと表現していますが、私の印象は、あたかも集団が多細胞生物かのようであり、人間はその細胞群のようなイメージを持ちました。あるセル(人間)は外部でアイデアを探求した上で、それをコミュニティ内に持ち込む。そしてソーシャルネットワークを通じて、その新アイデアが浸透していく、というプロセスをビッグデータによって可視化するフレームワークを提示したことになります。これはあたかも人間が「神の目線」を得たかのようであり、以前に読んだ「ホモデウス」の著者が、これからの人間は「不死・幸福・神性」を求めていくだろう、と述べていたのを思い出しました。デジタル全盛時代には否応なく本書に書かれているような社会分析が増えていくのでしょう。そして著者が述べているように、これは一つ間違えるとビッグブラザーが支配する恐ろしい社会を作ってしまいますが、正しく使う事で、流行病の拡散を防げるなど社会をより良い方向に導いてくれるのでしょう。大きな希望と恐怖の両方を感じる不思議な本でしたが、多くの人が本書を読んでおくべきだと感じました。

  • ビッグデータの解析で明らかになった人々の行動パターンから、「アイデアの流れ」の活性化とそれによる組織や都市の改善方法を論じている。
    組織の成果も都市の発展も、新しいアイデアの探究と試行をどれだけできるかにかかっており、独りよがりな方法や他人(他組織)の単純な模倣からは最適解を見出せないということがわかった。(これを議論の前提とした色々な検証も挙がっていたが、個人的にはこれ自体が大きな発見であった)
    組織の改善は仕事にも役立ちそうな内容であった。
    ・成果を出すチームは、ミーティングでの各自の発言量が同程度
    ・リーダーと各メンバーの間だけのコミュニケーションでは不充分で、全てのメンバー間での交流が必要
    等。
    数学的な説明にはついていけなかったためその点では本書の良さを味わいきれていない。が、そのような読者も想定して数学的な説明を巻末付録に寄せてくれているのはありがたい。(本文に出てきていたら読むのをやめてしまったと思う…)

  • 独りよがりにならず、多くの人とのつながりをうまく活用していくことが大事だと思った。

  • 副題にもあるように、よいアイデアの広がり方について、社会科学的(社会物理学的)な見地から述べた本です。

    よいアイデアが広がるために必要な条件は、我々が経験的に知っていることとあまり齟齬はないように思います。
    たとえば、リアルなコミュニケーションが大切であるとか、コミュニケーションの回数が大切であるとか、自由にアイデアを出し合えることが大切であるとか、アイデアの多様性が重要であるとか。
    その一方で、アイデアのよさのようなものは、実は重要でないそうで、それは意外でした。

    新しいことをする上で大切なのは「わかもの・ばかもの・よそもの」と言われることがありますが、このことも、ソーシャル物理学的には正しいといえそうです。

  • 2015年に発行された本の文庫版。
    今でいうビッグデータを分析することで定量的にそれを評価し社会的生産に活かしていこうとする研究を紹介している一冊。

    IT素人な自分ですが、現在(2018年)から3年前に発行された本書を読んで、ちょっと古いかな~って感じてしまった。
    それくらいこの分野のテクノロジーは進化してるのかなと、日進月歩どころか秒進分歩だなと。。。

    データを定量的に分析すれば何らかのアウトプットは得られ、コンピュータとインフラの進化でやっとそういったデータ集積と解析ができる環境が整ったのが今現在、これからの「結果」が気になるところです。
    その一方ビッグデータ分析の障害は「プライバシー」、ここだけは非常にデリケートに扱い続ける未来であってほしいと思う次第です。

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著者プロフィール

アレックス・ペントランド( Alex Pentland)
マサチューセッツ工科大学(MIT)教授。MITメディアラボ創設から関わり、現在はMITコネクションサイエンス・ラボとヒューマンダイナミクス・ラボの所長を務める。ビッグデータ研究の世界的第一人者で、フォーブス誌が選ぶ「世界で最も有力な7人のデータサイエンティスト」にも選ばれた。また、10社以上のビッグデータ関連の会社を創立した起業家でもある。世界経済フォーラムでは、ビッグデータと個人データ保護に関するイニシアチブをとった。邦訳されている著書に『正直シグナル—非言語コミュニティの科学』(みすず書房)がある。

「2018年 『文庫 ソーシャル物理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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