文庫 中国の産業スパイ網: 世界の先進技術や軍事技術はこうして漁られている (草思社文庫 ハ 3-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794224767

作品紹介・あらすじ

「本書が問題にしているのは、中国の『自分たちが必要とする外国の技術を選び出して特定し、
考えられるあらゆる方法を使ってそれを入手し、それを兵器や競争力のある製品に変えるための、
入念に作り上げられた国ぐるみのシステム』のことだ。(中略)
中国の台頭については至るところで語られているが、不思議なことに、その台頭と、
中国が外国の技術や才能を盗用していることとの関係についてはほとんど研究が行われていない」(本文より)

知的所有権の世界最大の違反者である中国による盗用の実態を、
中国の状況に通暁する専門家チームが詳細に分析した警告の書!


第1章 中国は昔から西洋の技術に依存してきた
第2章 国をあげてオープンソース情報を収集
第3章 外国企業の研究開発施設を誘致
第4章 中国にある外国技術移転組織
第5章 アメリカにある中国の技術移転組織
第6章 アメリカの中国人留学生
第7章 外国の技術を中国に〝持ち帰る〞
第8章 情報機関による産業スパイ
第9章 中国のサイバースパイ
第10章 産業スパイで国は変わるか
文庫版訳者あとがき――米中新冷戦時代の到来

感想・レビュー・書評

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  • 【295冊目】内容はタイトルのとおり。有益な情報が詰まっていたと思うのだけど、技術移転(TT=Technology Transfer)にかかわる国内外の中国の組織の列挙が長すぎて頭に入ってこない……。とはいえ、その説明が冗長に思えるということは、TTに何らかの形で関与する組織が大量にあるということや、それぞれがきちんと役割分担されていないように見えるということを示している。個人的には、純粋な産業振興や学術振興のような名称を掲げる組織や団体の立ち上げに教育部が関係するのは理解できるが、しばしば公安部が関係していると書いてあったことが不可解。やはり、それら組織・団体は公安部をスポンサーとして、”そういった情報”の収集ツールとなっているのだろうか。(ここについて何の言及もなかった本書は残念!)

    また、中国の情報機関に関する定説につき、反論を加えていく様も興味深かった。中国のスパイも、うまく誘導するのではなく盗むし、米ソのような通常のスパイの手法も使うし、悪意の情報提供者も使うと言うのである。そして、こうした反論はこれまでに米国司法当局によって明らかにされてきた数々の産業スパイ事件によって証明済みと筆者は説明する。

    実は、本文だけでなく、玉置悟さんという方による訳者あとがきも読み応えがあった。米中日3カ国が対立に至る歴史が、それぞれがどう作用しあっているのかを含めてコンパクトにまとまっている。悪いのは中国だけじゃないだろ!と、チクリとする大人な主張にも思わずニヤリとさせられる。

  • 中国の国家ぐるみの技術移転や情報収集システム(組織、団体)について調べ上げた本。過去数十年にわたって、明確な意図をもって米国の技術を移転させるために中国が行ってきたことを具体的な記録をもとに詳述。

    100を超える色々な団体が名称やURLとともに登場するが、その数の多さに辟易してくる。

    2015年に元の本が発行されているが文庫本の発行は2020年。中国による国家主導の産業スパイ行動が明確となり、ヒューストンの領事館が閉鎖されたり、華為の通信機器が排除されたりというニュースが一般的になっている。

    中国語では「情報」はintelligenceであり、informationに相当する言葉は「信息」と区分されている。中国には、世界中の産業/科学に関する「信息」を収集翻訳し「情報」に変換するための数十万人のプロフェッショナル集団(企業、役所、研究機関、大学)がある。

    従来は紙ベースで集積されていたこれらのinformation/intelligenceは、技術の進展によりデジタル化されて活用が加速度的に上昇していくことが予想される。

    おりしもコロナ禍により両国の人的交流はいったんストップしている。ポストコロナの中国は国家統制の強化を明確にしており、西側諸国との価値観の違いが際立つようになっている。今後の中国がどのように変わって行くかを観察、判断する基盤となる見方を得た。

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著者プロフィール

シカゴ大学中国語学科大学院修士過程、ペンシルヴェニア大学アジア言語学科大学院博士課程卒(アジア言語学博士)。米海軍及び統合特殊作戦軍に勤務。現在はアメリカ政府の部局で上級エグゼクティブ。

「2015年 『中国の産業スパイ網 世界の先進技術や軍事技術はこうして漁られている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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