ペルーの異端審問

  • 新評論
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  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794810441

作品紹介・あらすじ

本書は、ノーベル賞作家マリオ・バルガス・リョサが高く評価する日系ペルー人作家、フェルナンド・イワサキの本邦初訳作品である。中世南米ペルー副王領の首都リマで、異端審問沙汰となった性にまつわる数々の珍事件を、一七の短編に再構成した異色の作品集だ。
 異端審問といえば、一般には拷問・迫害・蒙昧主義のイメージが色濃く、芸術性やユーモアと結びつけた作品はほとんど見当たらない。しかし著者は、人間性に対する鋭い洞察とみごとな筆致で、凄惨な歴史を極上の文学作品に精錬した。好色な聴罪司祭、悪魔に憑かれた修道女、男色司教に淫らな女性信者たち……?のような本当の話を裁判記録から精選し、軽妙な読み物に仕立て、読者を抱腹絶倒させることに成功している。罪を逃れようと屁理屈を並べる被告人、困惑した異端審問官たちが下す牽強付会の判決、書記が性的要素を隠そうとするあまり、かえってその淫靡さが際立たってしまった調書の文言……読みながら思わず笑いが漏れるとともに、一抹の物悲しさがよぎる。被告の多くは結局重い罰を科され、不遇のうちに人生を終えるからだ。果たして彼ら彼女らの罪は?神なのか、それとも人として自然な肉欲を隠さなかったことで俗世の権威と秩序を侵したことなのか。諧謔に満ちた物語が、いまなお温存されるカトリック社会の欺瞞を鋭く照らしだす。
 バルガス・リョサは、本書に寄せた「序文」で次のように述べる。「本書の魅力あふれる(ときに残酷な)物語は、リマ社会の裏に息づく官能と肉欲の炎を示してくれる。その炎は偏見や禁忌、迫害に抑えつけられたがために、かえって燦然と燃えあがったとも言える」。
 著者フェルナンド・イワサキは、二〇一五年にスペイン王室も主催に名を連ねるドン・キホーテ・ジャーナリズム賞を受賞したこともあって、近年世界的に評価が高まりつつある。またこれまでに数回来日、作家逢坂剛氏との対談や東京大学での講演を行っている。ラテンアメリカ文学の次なる名手をお探しの読書家に、自信をもってお薦めする。(やえがし・かつひこ やえがし・ゆきこ/翻訳家)
序文:マリオ・バルガス・リョサ
★巻頭推薦文:筒井康隆

感想・レビュー・書評

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  • 2016-8-12

  • (後で書きます。実際の異端審問記録等から掘り起こしたエピソードであるらしい)

  • 内容は興味深かったが、リマの歴史的背景をよく知らないので理解できない部分も多々あった。
    宗教や思想に欲望を抑圧されている中で聖職者の人間臭さが際立っていた。

  •  電車の中で読む本じゃないです。
    引用を登録しようと思ったんですが。内容が・・・!!
    これは、歴史書だ、歴史書だと思いながらも。各章最後の2・3文で笑えます。数年後このレビューをみても、死体の雄々しく立つ・・・との内容で簡単に思い出せる本です。

  • 聖職者といえども、いや聖職者だからこそ、愛欲にとらわれるのかも。告解に来る女性の体をまさぐる神父、神父に欲情する信者女性。人間くさいエピソードが、大真面目に悪魔や奇跡のせいであると正式に認定される。
    ユニークな本。小説でもないがノンフィクションでもない。しかし、どれも実際の宗教裁判の記録に基づいているのだから面白い。時折差し挟まれる作家のコメントに、クールなユーモアが滲む。

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著者プロフィール

1961年ペルー・リマ生まれの作家・歴史家・文献学者・評論家。長篇小説・短篇集・エッセイ・歴史書など著書多数。1989年よりスペイン・セビリアに在住。1996年から2010年まで文芸誌『レナシミエント』の編集長を務める。これまでにスペインの『エル・パイス』紙、『ABC』紙、『ラ・ラソン』紙、チリの『メルクリオ』紙、メキシコの『ミレニオ』紙ほか、スペイン語圏の有力紙に寄稿。1987年アルベルト・ウジョア・エッセイ賞を皮切りに、数々の文学賞を受賞している。邦訳に、『ペルーの異端審問』(八重樫克彦・八重樫由貴子訳、新評論、2016年)がある。公式ウェブサイト:http://www.fernandoiwasaki.com/

「2017年 『悪しき愛の書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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