「学びの責任」は誰にあるのか: 「責任の移行モデル」で授業が変わる

  • 新評論
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794810809

作品紹介・あらすじ

最初の10年ぐらい、私も講義形式で教えていました。次の10年はワークショップ形式でした。その最後の頃、講義形式に抱いた疑問と同じような感覚を、ワークショップ形式で行う研修のあり方にも持ちはじめました。
 学ぶ側はもちろん、教える側も学び続けられるという、みんなが自立した学び手になる教え方・学び方はないのかと模索しはじめたのは1995年以降でした。5年以上かけて探しだしたものの一つが、本書で紹介している「責任の移行モデル」です。
 本書の柱になっている、教師から学習者への責任の移行は、①教師が焦点を絞った講義をしたり、見本を示したりする(焦点を絞った指導)、②教師がサポートしながら生徒たちが練習する(教師がガイドする指導)、③生徒たちが協力しながら問題解決や話し合いをする(協働学習)、④生徒は個別に自分が分かっていることやできることを示す(個別学習)、といった四つの段階で表すことができます。
 注意していただきたいのは、これらは①から④へと順番に行うものでも、常にクラス全員を対象に、同じ段階の活動をさせるのでもないということです。たとえば、②番目の「教師がガイドする指導」をするためには、「①焦点を絞った指導」が終わっていることが前提となりますが、同時にまた、クラスの大半の生徒が「③協働学習」か「④個別学習」に取り組んでいることも前提となります。そうでないと、教師は少人数(2~6人)の生徒たちを集めて、10~15分の「教師がガイドする指導」を行うことはできませんから。
 本書ではこれら四つの要素を、異なる教科の例をふんだんに挙げながら分かりやすく解説しています。教師を含めた大人たちが、この四つの要素を身につけることができれば、授業や研修のあり方が変わるので、生徒や受講者の学びの「質」と「量」が飛躍的に伸びることは間違いありません。(よしだ・しんいちろう)

感想・レビュー・書評

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  • 本書では「責任の移行モデル」という教育方法について例を交えながら説明している。
    自転車に乗れない子どもが徐々に補助輪や親の手から離れていくように、生徒の学習にも「先生が教える」「先生と生徒が学ぶ」「生徒同士で学ぶ」「生徒が自分で学ぶ」の4つの段階がある。

    4つの段階のどの説明ページにも共通して載っているワードがある。
    それは「診断的評価」だ。
    学期末に行うテストのような「総括的評価」が、生徒への評価の大半を占めている現代。
    だが本当に大切なことは、途中で生徒たちがどの段階にいるかを教師が「診断」し、把握することではないだろうか。

    現在の教育は画一的だ。
    生徒によって学習の段階が違うのに、いつまで「公平な扱い」のもとで一斉授業を続けるのだろうか。
    生徒それぞれが出来ていないところに焦点を当て、それが出来るように段階に合わせた方法で促す。
    教師はそのように生徒一人一人にとっての「サポーター」であるべきだ。

    教育をするのは教師だけではない。
    親だって「教育」をしなければいけない。
    会社に勤めていれば、後輩を「教育」しなければいけない。
    教育は避けて通れない道なのだ。
    だからこそ教育方法について学ぶことは、今の日本にとって意味があることなのだと私は思う。

    今後は4つの段階において「どうやって」教育活動をするかがポイントになってくる。
    なぜなら、指導書通りの教育はAIでもロボットでも出来るからだ。
    そんな時代はすぐにやってくる。
    生徒が今どの学習フェーズなのかを観察、診断し、自分ならその段階で「どうやって」教えるかを考える必要がある。

  • 371.5||F28

  • 自立した学び手を育てるとは?

    一斉授業だけではなく、段階を踏んで責任を移行する授業を行おうという本。すでに取り組んでいることもあるし、一斉授業のすべてを否定するものでもないし、メタ認知について大学で取り組んだから知っている理論もあって、飲み込みやすかった。

    まず何から取り組みたいかというと、目標を明確にして、それを授業で生徒に示すこと。ゴールを示すのが曖昧になりがちだから、明確に目標を示してモチベーションにつなげたい。それから形成的評価と総括的評価に分けて、評価方法と評価基準を作りたい。これもきちんと生徒に示したい。また、適切なフィードバックについても意識して行いたい。次に何をするかにつながるフィードバックをしていきたい。ガイドにしても、やはり答えを教えるのではなくて、成長のはしごかけになるように意識したい。

    多分このアメリカの事例をそのまま持ってくることは無理だけど、上に書き出したようなことは意識して授業作りにつなげていきたい。

  • 申し訳ありません。あまり新しさを感じませんでした。ヴィゴツキーの発達の最近接領域、ブルーナーの足場かけがわかっていれば読む必要はないかもしれません。また、なぜ「責任の移行モデル」なのかもう少し議論が欲しかったです。個別最適化が必要とされる現在において、なぜ「責任の移行モデル」を教室のみんなに強制せねばならないのか。このモデルはやや息苦しいように感じてしまいました。

  • 今でいう、習得、活用、探究の道筋にかさなる部分が多くてとても参考になりました。海外の実践、それもどちらかといえば低学年を相手にした話で、全て当てはめるわけにはいかないにしても、一斉授業だけ!アクティブラーニングだけ!なバランスになるのではなく、教員が教える部分と、生徒が取り組む部分を、非常に明快に書いている印象です。本の作り的に冒頭で大まかな授業の流れはわかりますが、それぞれの活動の狙いや理由についても詳しく書いてあります。日本型の教科書が決まった授業でどの程度応用ができるのかは、検討してみないとわかりませんが、理論的な話も多いので、講義とアクティブラーニングの往復をどう組み立てていくかのヒントが詰まっています。先生が教え、生徒たちがグループで学び、最後に個々の生徒にかえる。この流れをいかに作るか?学べることは沢山あります。

  • 誤字や文章がこなれていない部分はあるものの、大筋でいうと非常に納得感がある一冊。

  • 学校の先生が自らの授業とカリキュラムを考える際に参考にすべき文献。何かをすべきというときは、研究による支持があり、明示されている。とても信用できる。
    概要としては、教師が教える教室から、教師がガイドして子どもが学ぶ、子ども同士で学び合う、子どもが一人で学ぶ教室へと、徐々に変えていこうという、4段階のモデルを提案する。自律した学び手を育てることを目標に据えている。
    良書。

  • <目次>
    第1章  学校で学ぶこと、あるいは学ばないこと
    第2章  焦点を絞った指導~目的、見本を示すこと、考え聞かせ、気づくこと
    第3章  教師がガイドする指導~質問、ヒント、指示
    第4章  協働学習~クラスメイトと協力し合って思考をより強固なものにする
    第5章  個別学習~教えられたことを応用する
    第6章  責任移行モデルを実践する

    <内容>
    新評論社、吉田新一郎氏の教育指導本。これで読むのは三冊目だろうか?アメリカの教育実践の理論書シリーズで、今回は「学び」を子供たちの手にするための教育をする方策を体系だって紹介している。第2章から第5章で4段階のステップを経る。
    日本の場合は、「アクティブ・ラーニング」(文科省は最近、”主体的・対話的な深い学び”と言い換えているが、長いのでこの手垢のついた言葉で言っておく)という割に、小学校からずっと学びの責任」(教育の主導権?)は教師にあるままなので、このテキストのように生徒は考えてくれないだろうから、これを実行するのは前段階がかなりしんどいと思うが(アメリカも本の紹介では最初の20日間はこの教育の準備段階で様々な仕掛けを用意することが書かれている)、上手くいけば、授業中に生徒が寝ず、1年間終わると相当な知識と思考力が付き、主体的に応用的に物事を考えてくれるのではないか?と想像できる本である。実践にはやや二の足を踏むが、やってみたいことである。

  • 授業の「今」と「これから」が繋がる一冊。

    「今」と「これから」をゆるりと変えていける。

    学校の先生にはぜひ!

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著者プロフィール

Douglas FISHER  サンディエゴ州立大学教授、ヘルスサイエンス中等学校教師リーダー。

「2023年 『学びは、すべてSEL』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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