これからの本の話をしよう

著者 :
  • 晶文社
3.09
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本棚登録 : 74
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794970756

作品紹介・あらすじ

本は「小さなもの」のためにこそ存在する。その原点を私たちは忘れてしまっているのではないか──。電子出版のためのウェブサービス「Romancer」、ブラウザ型読書システム「BinB」、本のプロモーション支援ツール「Power Thumb」を開発し、片岡義男全著作電子化計画など、数々の画期的な出版プロジェクトに取り組む株式会社ボイジャー。その創業者である著者が、25年にわたる先駆的な歩みを振り返りつつ、本と出版の未来について語った。紙か? 電子か? といった技術論やビジネス論にとどまらない、本そのものの魅力、役割、可能性を考えていく。自分たちのメディアを育て、確立していくための、デジタル時代の出版論。

感想・レビュー・書評

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  • 電子書籍が市民権を得つつある今日に読んでおいて損はない一冊だと思います。


    電子書籍には確かにデメリットもあります。
    しかし、電子書籍だからこそできること、拡大や読み上げを活用すれば、視力が極端に悪い人、目が見えない人も本を楽しめると述べられており、電子書籍は活用次第で無限の可能性があるのだと気付かされました。

  • (勝手に)期待していた中身と違った。

  •  電子書籍の黎明期に活躍した著者の経験に基づく様々なエピソードが詰まった一書である。電子書籍がコンピュータの進歩と密接な関係があるのは容易に想像できるが、まず本を電子版にすることで何ができるのかをゼロから作り上げていく話が面白い。私も多くの書籍を今は電子版で読んでいるが、最初の頃はかなり抵抗があった。紙でなければ本ではないという感傷的な思いと、スクリーンに映してしまうと書籍としてのメッセージの力が減退してしまうという無根拠の思い込みがあった。その多くは私の中では解消している。
     ただ、本が綴じられた紙の束として他と独立して存在しているという事実は、電子書籍の時代になって大きく変わったことは事実だ。電子書籍にはリンクを通して他の情報源にジャンプすることができるという点において他とつながっている。ただ、電子書籍としての領域は持っており、知識や経験の蓄積はその中に確かにある。ネット上に散在する情報と異なるのはあくまで一つの作品としての世界を持っていることである。
     電子書籍は自らの世界を確保しながらも、他とのつながりも仕組まれているという点において新たなメディアとして存在できたのである。これを立ち上げた人々の試行錯誤が本書には紹介されている。そして、これらの行為に敬意を表したくなるのである。

  • 1992年から、電子書籍事業に従事していたパイオニアの語る電子書籍の歴史と、これからの可能性について。

    ※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

     2年ほど前から、僕も専用のタブレットを購入し電子書籍を読んでいます。
     先日も、ある映画の原作の漫画を本屋さんで「在庫がありません」と言われ、電子書籍でネットで購入しました。ちなみに、1000円。紙の本なら、送料無料で1080円。
     あえて値段を出したのは、もっと安いように思える電子書籍の値段なのですが、この程度だということを知って貰いたかったからです。
     これは、紙の本のコピーとして出版社が電子書籍を考えているからだと作者は言います。
     なるほど、安くし過ぎると紙の本の売り上げに影響が出るということなのかな。
     
     本書を読んでいると、初期の電子書籍の様子から、今に至るまでがよくわかります。
     最初は、CD-ROMという形式だったようです。
     今のように読み取り用のタブレットがなかった。
     このデバイスの問題がありました。
     本を流通させる電子書店も少なかった。
     機器に対応したコンテンツ。つまり、商品も少なかった。

     そんな中、荻野さんのパートナーのボブ・スタインは、インターネットと本の融合、その可能性を確信していた。
     それまでは、本は個人が楽しむ嗜好物でしたが、ネット社会になり、本を媒介として読者がリンクするようになったのです。それをネットの初期に気づいたのが、ボブ・スタインでした。
     電子書籍には可能性があるとも言っています。

     だが、先ほども述べましたが、日本の電子書籍は、紙の本と一緒です。
     その現状に荻野さんは不満です。
     彼の出版した本を1つ紹介します。
     「小津安二郎の美学ー映画の中の日本」
     この本は、本文の記述に合わせて、映画の相当シーンをリンクさせています。
    P218このように見ていくと、小津映画の典型的なラストシーンはシークエンスを見ていくと、代表作の終わりは意図的にあるパターンを持っていた。となります。
     これは、もう、本と映画の融合です。
     他にも荻野さんは、片岡義男の作品の全作品を出版しました。
     公開された100作品を無制限に読める。記念のTシャツ。1口1万円。さらに、特典として、新作小説のメイキングを描いた読み物を読めるという、今までの本1冊こどに売るというやり方を変えようとしました。

     電子書籍にすれば、写真も動画も音楽もリンクさせられる。可能性は無限に広がる。ネットを介して、読者と読者も結び付けられると主張しています。表現形式が劇的に変化するのです。
     だが、出版社は海賊版を恐れて、本文のコピーをできないようにしたり、規制の方向にベクトルを傾けていると嘆いています。

     最後に、ライザ・デイリーの言葉でしめようと思います。
    「出版とは人が求める情報を説得的かつ魅力的に提供することです」
     それ以外にはないということです。


    ページ数:301
    読書時間 6時間
    読了日3/5
     

  • VOYAGER-株式会社ボイジャー
    https://www.voyager.co.jp/home.html

    晶文社のPR
    本そのものの魅力、役割、可能性とは

    本は「小さなもの」のためにこそ存在する。その原点を私たちは忘れてしまっているのではないか──。電子出版のためのウェブサービス「Romancer」、ブラウザ型読書システム「BinB」、本のプロモーション支援ツール「Power Thumb」を開発し、片岡義男全著作電子化計画など、数々の画期的な出版プロジェクトに取り組む株式会社ボイジャー。その創業者である著者が、25年にわたる先駆的な歩みを振り返りつつ、本と出版の未来について語った。紙か? 電子か? といった技術論やビジネス論にとどまらない、本そのものの魅力、役割、可能性を考えていく。自分たちのメディアを育て、確立していくための、デジタル時代の出版論。
    https://www.shobunsha.co.jp/?p=5004

  • 温故知新とは言うけれど。
    自伝書から令和時代の一歩目に繋がる気づきを見つけ出すのは無理だった。お話ししてみたいが読むのはきつかったです。すみません。

  • 思いのほか、著者の個人史的な部分が多いので、最初は戸惑いもありましたが、電子出版の黎明期に国内でこんなに魅力的な企画をやっていた人がいたとは驚きでした。
    映像の分野から出版にやってきた方というのもあって、本の定義がかなり柔軟な捉え方に感じます。出版業界はデジタルに対して、自分たちの利益ばかりを主張する保守的な姿勢ではなく、本を公共財として考える必要があるという苦言を呈されています。

  • 株式会社ボイジャー

    ブラウザ型読書システム BinB

  • 抽選で当選させてもらい、本書をいただいてレビュー。

    電子書籍までに、レーザーディスクや、DVDもあった。
    フロンティアに身を置くと、既得権益など様々な障壁と遭遇する。

    電子書籍においても、いまだ標準仕様というものとの戦い、もとい調整は意識せねばならない。

    出版の世界に限らず応用できる、我々が意識すべき案件がたくさんつまっているのではないだろうか。

    面白かった!

  • 2019/2/23読了。
    20世紀の終わりごろから電子書籍に関わって働いてきたが、本当に尊敬できる人というのは、この業界の僕から見えるところには数人しかいなかったと思っていて、その筆頭が本書の著者だと思っている。(直接お目にかかったのは、もう十年も前の、ほんの一度か二度だけのことですが。)僕には到底真似の出来ない姿勢で「電子」の「本」に関わり続けてきた方の著書として、本書を最敬礼の念を持って読了した。

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著者プロフィール

1992年ボイジャー創業以来、一貫して電子出版に関わり、小さなメディアとしての出版を追求している。
1946年東京都生まれ。1970年から東映教育映画部、その後1981年からレーザーディスク制作・企画、1990年パイオニアLDC取締役映画製作部長として映画のビジネス展開に従事する。1992年ボイジャー・ジャパンを設立。2013年ボイジャー代表取締役を退任、現在は取締役。

「2022年 『電子出版とは何かを問い続けて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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