阿部定事件: 愛と性の果てに (新風舎文庫 い 129)

著者 :
  • 新風舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797495317

感想・レビュー・書評

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  • 少し難しい日本語があったけど面白く読んだ。
    それにしても、阿部定は普通の、ただ恋男に溺れてしまった女の子だったんだなぁ。
    性欲が強い女は頭がおかしいと昔よく話してたけど、外国の友人が、ヒステリックな女はSEXが良いと言ってたの思い出した。

  • 2005年(底本1989年)刊。軍国主義の足音がヒシヒシと伝わってくる昭和11年(二・二六事件発生年)。男女の関係の究極ともいえる殺人と死体損壊事件で世間を騒がした阿部定。彼女の予審調書を軸として、本事件、特に定の行動と心情を解読しようとする。定におけるSEXの意味、快楽の価値、男の口説きへの感応については、男である私には読み解きようがないが、心持は割と明快に陳述しているよう。ただ、逆に、女殺しの人生を全うした被害者石田吉蔵、コキュ街道まっしぐらの大宮五郎。阿部定に関わった男たちの道程の方が興味をそそる。

  • 阿部定は、105年前の1905年5月28日東京は神田生まれの芸妓。

    老舗の畳屋の娘として生まれて、入学する前から常磐津や三味線を習い、近所でも評判の美少女だった彼女が、やがて歴史に名を残す≪毒婦≫になるのは何故か?

    ひとりの、本来なら平凡に生きる運命にあった女性が、あの事件を起こしたことである意味では時代の寵児となって、生涯その悪女の烙印に翻弄されて苦渋の一生を送ることになります。

    ことの顛末は、1936年、彼女が31歳のとき、不倫で愛人関係にあった石田吉蔵を、サディズムとフェティシズムの果てに性器を切り取ったあげく死に至らしめたという事件を起こしたことです。

    彼女としては、ただ単に愛した相手を他の誰にも渡したくない、独占したいというしごく当り前な感情から、そして快楽を追求するあまりに、ことの最中に首を絞めたりして“死んでしまうような恍惚感に到る(石田吉蔵が)”ことの、双方の結果から、死んでしまった愛する人から躊躇なく大事なものを切り取ったという訳です。

    やっぱりなんといっても、1936年という年に起こったということがすべてを運命づけていると思います。

    この事件が5月18日。そのわずか3か月前には、あの歴史を揺るがす大事件の二、二六事件が勃発しています。

    言い知れぬ不安とか鬱屈した雰囲気が充満していた、まさにそのとき、けっして喝采を浴びる明るいニュースではありませんが、世間の常識を逸脱した猟奇事件ではありますが、何か息苦しく覆っていた厚いベールをひきはがすような、一瞬ふたが開いて新鮮な空気がスッと入ってきたような感じがあったのに違いありません。

    すべては、彼女が、16歳で初潮をむかえる2年前に慶応義塾の学生にレイプされたことから人生が始まったように感じたことの演繹なのか、それとも、父親から女衒に身を売られるような不幸な身の上を押しつけられたことからの必然の帰結なのか。

    とんでもない、あるとき一瞬でも敢然と、自分の運命は自分のもの、どうあっても変えてやろうと思ったはずです。

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