消えたフェルメール (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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本棚登録 : 140
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680294

作品紹介・あらすじ

これまで盗難に遭ったフェルメール作品は4点。1990年に米ボストンの美術館から盗まれた〈合奏〉は、以来、姿を現していない。今、どこにあるのか!? 最新情報で未解決のアートミステリーを追う。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館でお借りした一冊です。
    「真珠の耳飾りの少女」で有名なフェルメール。
    日本にもファンが多いレンブラントと共にオランダを代表する画家です。

    アートドキュメンタリー映画「フェルメール The Greatest Exhibition -アート・オン・スクリーン特別編-」が、2024年2月2日より全国で順次公開されるますが、「真珠の耳飾りの少女」「牛乳を注ぐ女」などの作品で知られる画家ヨハネス・フェルメールの展覧会を捉えたものです。現存する作品のうち28点が集まった同展は、2023年2月から6月にかけてオランダ・アムステルダム国立美術館で行われ、65万人を動員しました。
    映画では、美術館館長やキュレーターの解説とともにフェルメールが手がけた絵画の数々に触れられ、研究によって明らかになった彼の手法も紹介されていきます。
    「アート・オン・スクリーン」は、美術史を変えた芸術家たちの作品や、優れた美術展の様子が高画質の映像に収められたシリーズ。これまでミケランジェロ、モネ、ゴッホ、ダ・ヴィンチ、ピカソ、ラファエロなどにスポットが当てられました。今回は、同シリーズの特別編としてスクリーンにかけられますが楽しみにしているファンも多いはず。

    本書はそんなフェルメール作品で盗まれた後、現在も在処がわからない「合奏」についてまとめられています。

    元々現存する枚数が少ないフェルメール作品、もしもオークションに出品されるような事があれば天文学的な金額となることでしょう。

    そんなフェルメールの作品は過去に何度か盗難に合います。

    でも、盗まれた名画はそう簡単に売ることも出来ません。
    時に政治的な交渉に、時に保険金目的で、時にブラックマーケット等を通じて...

    わかるんです、コレクターと呼ばれる大富豪が所有し、プライベート空間で独り占めする所有欲。

    でもセキュリティ面を含め、過去に盗まれた名画はやはりプライベート美術館が圧倒的に多いのも事実。

    人類の至宝とも呼べる名画、一説には盗まれた後に発見されるのは1.5%~10%程度とか...

    「合奏」のみならず、過去に盗まれ、現在も在処がわからない作品達。
    いつか無事に発見されることを祈らずにはいられません。


    <フェルメール>
    17世紀のオランダ・バロック期を代表する画家の一人です。同時代のオランダの画家レンブラントとともに有名です。彼は写実的な手法と綿密な空間構成、そして光による巧みな質感表現を特徴としています。彼が描く光の粒子の美しさから、「光の魔術師」という異名がつけられたほどです。

    フェルメールの代表作には、『真珠の耳飾りの少女』、『牛乳を注ぐ女』、『デルフトの眺望』などがあります。これらの作品は、フェルメールの色使いや構成、背景の描写などに彼の独自のセンスや技術が見られます。特に、高価な青色の顔料をふんだんに使った「フェルメール・ブルー」と呼ばれる青色は、彼の作品の魅力の一つです。

    フェルメールは、デルフトで生まれ、ほとんどの人生をそこで過ごしました。彼はカトリックの女性と結婚し、15人の子供をもうけましたが、4人は夭折しました。彼は画家としてだけでなく、パブや宿屋の経営、画商などの仕事もしていました。彼は43歳で亡くなりましたが、その死因は不明です。

    フェルメールの作品は、現在では世界中の美術館で見ることができます。日本では、東京都美術館や国立西洋美術館などにフェルメールの作品が収蔵されています。


    あのフェルメールの傑作はもう見られない?
    1990年3月、米ボストンのプライベート美術館、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館からレンブラントの〈ガリラヤの海の嵐〉を含む10数点の美術品と共にフェルメールの〈合奏〉が盗まれた。以来、約30年、美術ファン、美術館関係者の期待も虚しく、〈合奏〉はその姿を現していない。
    著者は他のフェルメール作品〈手紙を書く女と召使い〉〈恋文〉〈ギターを弾く女〉が盗まれた事件の背景を分析し、IRA(アイルランド共和軍)の関与などの政治的な動機、保険金目的、富豪コレクターの指示……といった側面から推理。同時にFBIによる捜査の進捗からもアート界最大のミステリーを追う。加えて、パトロンの存在、カメラ的な技術の導入、現存するものは最大37点といわれる作品数など画家フェルメールの謎にも言及。
    2000年刊『盗まれたフェルメール』を踏まえつつ、〈合奏〉にまつわる新事実を報告する決定版。

    原田マハ氏(作家)、福岡伸一氏(生物学者)推薦

    著者略歴
    朽木ゆり子(くちきゆりこ)
    ジャーナリスト。東京都生まれ。国際基督教大学社会学部卒業。同大学院行政学修士課程修了。米コロンビア大学大学院政治学科博士課程に学ぶ。1987~92年、『エスクアイア』誌副編集長。94年よりニューヨーク在住。著書に『フェルメール全点踏破の旅』『ゴッホのひまわり全点謎解きの旅』(ともに集英社新書)、『盗まれたフェルメール』『謎解きフェルメール』(小林頼子氏との共著)『ハウス・オブ・ヤマナカ』(すべて新潮社)などがある。

    内容(「BOOK」データベースより)

    あの傑作はもう見られない?一九九〇年三月、米ボストンのガードナー美術館から十数点の美術品と共にフェルメールの“合奏”が盗まれた。以来約三〇年、美術ファンの期待も虚しく、その行方は杳として知れない。著者は他のフェルメール作品盗難事件を例に政治的な動機、コレクターの指示、保険金目当て…などの分析・推理をしつつ、FBIの最新捜査情報をもとに“合奏”の現在を追う。アート界最大のミステリーの新事実を報告する決定版。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    朽木/ゆり子
    ジャーナリスト、ノンフィクション作家。東京都生まれ。国際基督教大学、米コロンビア大学大学院に学ぶ。フリーランスライター、編集者となり、1987~92年、『エスクァイア日本版』誌副編集長。94年よりニューヨーク在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • フェルメールにはミステリーがよく似合う。過去の盗難事件を考察することで、改めてフェルメールの魅力を知ることのできる一冊。

  • 2022/2/19 ジュンク堂三宮駅前店にて購入。
    2023/10/16〜18

    30点前後しかないフェルメール作品のうち、盗まれた「合奏」、「恋文」、「ギターを弾く女」、「手紙を書く女と召使い」に関する盗難の様子やその後がまとめられている。無事であることを祈るのみ。

  •  そもそも、絵画が「人質」になり得るのは、優れた芸術品は社会全体にとって貴重なもので、それを破壊するのは一種の蛮行で、その芸術品を鑑賞する機会を失うのは社会にとって大きな損失だ、という考え方が社会に浸透しているからだ。しかし、「絵画誘拐」には人身誘拐ほどの結果でも明らかなように、破壊されても修復できるケースも少なくない。つまり、この種の動機で絵画を盗んで、自分の目標を達成しようと思っても、成功するチャンスは少ないのだ。(p.113)

  • フェルメールの〈合奏〉は1990年3月にガードナー美術館から盗まれて以来行方不明だ。今でこそ有名な画家の一人だが、その当時、フェルメールは一部の人しか知らない画家だったというのは驚いた。盗難の事例紹介や、戻ってきた時に損傷があった作品を修復した際、新たな発見があったことなど、読めば美術がもっと面白くなる話ばかりだった。今、大阪ではフェルメール展の開催期間中だ。本書に登場した、1971年に盗まれた〈恋文〉と1974年と86年の2度盗まれた〈手紙を書く女と召使い〉も出品されているので見てみたい。〈合奏〉も早く見つかるといいな。

    p12
    ガードナー美術館で盗難事件が起こった一九九〇年、盗まれた一三点の美術品の中の"トップスター"はレンブラント(一六〇六〜六九年)だった。新聞でも、まず一番にレンブラントの〈ガリラヤの海の嵐〉(一六三三年)が画家唯一の海景で、いかに素晴らしい作品かということが書かれた。この時点ではフェルメール(一六三二〜七五年)は限られた人のみに知られたカルト的存在で、レンブラントよりずっと知名度が低かった。
    その状況は、一九九五年一一月一二日から翌一九九六年二月一一日まで、ワシントンのナショナル・ギャラリーで行われた「ヨハネス・フェルメール」展によって一変した。フェルメール作品二一枚が一堂に会したこの伝説的な展覧会は世界中で"フェルメール・マニア"を生み出し、〈真珠の耳飾りの少女〉(一六六五〜六七年頃/マウリッツハイス美術館、ハーグ)は、「九〇年代のモナリザ」と称賛された。

    p47
    FBIによれば、美術品盗難の年間推定被害額は約六○億〜八〇億ドルで、被害額は増大の傾向にある。年間平均五〜一〇万点が盗まれているというが、その中で大きな割合を占めるのはイラク、シリア、アフガニスタンなどの戦闘地域から持ち出される文化財や遺跡からの盗掘品だ。

    p62
    競売企業は、競売に出す作品とロンドンに本社があるALRの盗難品データベースとを付き合わせる作業を常時行なっている。クリスティーズやサザビーズといった世界的な競売企業にとって、盗品を売るのは不名誉であり、また訴訟の対象になる可能性があるからだ。しかし、これは作品が盗まれた時に持ち主がALRのデータベースに登録していることが前提となる。

    p108
    フェルメールの作品には、〈恋文〉を含めて手紙をテーマにした絵が六枚ある。年代順に並べると、〈窓辺で手紙を読む女〉(一六五七年頃/アルテマイスター絵画館、ドレスデン)、〈青衣の女〉(一六六三〜六四年頃/アムステルダム国立美術館)、〈手紙を書く女〉(一六六五〜六七年頃/ワシントン・ナショナル・ギャラリー)、〈女と召使い〉(一六六六〜六七年頃、フリック・コレクション、ニューヨーク)、〈恋文〉〈手紙を書く女と召使い〉となるが、〈恋文〉は後期の作品で、一六六九〜七〇年頃に描かれたと推定されている。六枚のうち、最初のほうの作品はシンプルな構図で、主人公の女性の表情もニュートラル、背景に掛かっている地図や絵、室内の小道具も最小限だ。オランダの風俗画が、様々なモティーフの選択や小道具による寓意で、当時の理念や教訓を伝えようとする媒体だったことを考えると、これらのフェルメールの絵には不思議にそうした要素が少ない。それが一七世紀に生きたにもかかわらず、フェルメールが二一世紀の今でも愛されている理由の一つといえるだろう。
    ところが、その傾向は〈女と召使い〉あたりから変わる。〈女と召使い〉〈恋文〉〈手紙を書く女と召使い〉の三枚は、いずれも女主人公と召使いが登場する絵柄だが、召使いのもの言いたいげな表情、それに答えるかのような女主人の上目遣い、背景の地図や絵、そして楽器、箒、スリッパ、封蝋などの小道具にも、すべて恋の寓意画としてのほのめかしが満載だ。オランダの一七世紀の風俗画という典型的ジャンルに回帰してしまっているのだ。

    p142加筆された箇所は、手紙を書く女の机の前の部分だった。床の上にはクシャクシャに丸められたと思われる紙と小さな本のようなものが落ちている。その左側の濃紺のタイルの部分がオリジナルではない絵の具で上塗りされていた。絵の具を取り除くと、下から小さな赤い円と灰色のチョークのような小さな棒が現れた(現在流通している画集に載っているのは、この修復後の画像だ)。
    (中略チョークのように見えるのは封印に使う棒蠟で、赤い円は手紙を封印していた蠟だった。

    p144
    召使いが女性に宛てた手紙を持ってきた。その手紙は折りたたまれて赤い封蠟で封印されていた。彼女はその円形の封蠟をはずし、手紙を読む。そしてその内容に気分を害し、丸めて捨てた。それだけではない。机の上に乗っていたものすべて(赤い円形の封蠟、恋文の例文集、そして返事に使われる棒蠟)も払い落とした。そして、すぐに返事を出したいと思って、召使いを待たせて一心不乱に返事を書いている……。
    見た目は静かな〈手紙を書く女と召使い〉だが、赤い円が出現したことによってフェルメールの絵としては珍しい感情の起伏が隠されている可能性が出てきた。

    p186
    この時、絵の状態を一緒に点検したマウリッツハイス美術館のユルゲン・ウェイドム修復技術が、手紙を書いている女の左目に針でつついたような小さな穴を発見した。そしてこの鍵穴の発見が、フェルメールの絵における透視図法技術に関するウェイドムの仮説へと発展していく。

    p187
    ウェイドムは〈手紙を書く女と召使い〉で発見した針穴と同じような穴が、フェルメールの他の一二枚の作品、〈絵画芸術〉〈牛乳を注ぐ女〉〈兵士と笑う女〉〈音楽の稽古〉(一六六二〜六三年頃/英国王室コレクション、ロンドン)などにも存在していることに気がついた。そして彼は、それが実際に針を突き刺した跡であると仮定したのである。

  • 「合奏」盗難を中心に据えながら、フェルメール絵画の流転、フェルメール研究の歴史にもコンパクトに触れてある。
    入り口で読んでも、ある程度フェルメールについての知識を持った段階で読んでも、いずれも充実感の得られる好著。
    2018.10.10 第1刷 帯付き

  • 20190120

  • フェルメールは別段好きな画家ではない(どちらかと言うと、その過熱する人気を斜めに見てるくち)が、本書は大変面白かった。
    あくまでフェルメールが中心(だが、それのみにとどまらない)絵画盗難の歴史、経緯、そして捜査と捜索の今後の展望が読みやすく、わかりやすくまとめられている。絵画盗難ものは何冊か読んだが、いずれも海外の美術専門家による大部なもので、著者のこだわりや蘊蓄もあったりして、けっして風通しの良い代物ではない。そこのところ、翻訳ものに不可避なタイム・ラグもなく、最新情報を網羅してくれる本書は非常に有用だった。

    それにしても、妻とその母親の庇護があったればこそ、高価なラピス・ラズリ顔料まで使ってのんびりと絵を描いていられたご身分でありながら、その妻に11回もの妊娠・出産と11人の育児を強いたとは。16世紀の医療水準にあっては、ほとんど虐待を超えて拷問だろう。妻が死ねば、その結構な生活も失われてしまうのだろうに…つくづく、男なるものはどうしようもない。

    2018/10/22~10/23読了

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