大いなる闇の喚び声 美術調律者、最後の戦い (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)

著者 :
  • 創土社
3.75
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 24
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798830278

作品紹介・あらすじ

呪われた血脈をもつ形上太郎は、一にして全なる教え「一全教」を開き、非業の死を遂げた。その弟・四郎は芸術家となり、その作品に目にした人々は、心酔するか、非業の死をとげるか、どちらかの道をたどる。四郎の息子の影は、父と同じく芸術家となり、異形の姿となり果てた父と対峙する。影を支える幼馴染の兄妹、安倍晴明の末裔たる陰陽師を擁する警察庁の霊的国防セクションとともに、影は、父・四郎に決死の戦いを挑む。絵画と音楽に彩られた禁断のアートホラー!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 美術調律者シリーズついに完結。おそるべき悪霊との対決にようやく終止符が打たれます。
    随所に挿入された黒形上赤四郎の詩とイラストがなんともいえず不気味で素敵。次々に起こる凄惨な事件も、やたらあっさりとした筆致で描かれている分恐怖をかき立てます。そして「邪神」ってのはまさか……あれだったのね! 少しラヴクラフトを読んだのでようやくわかったぞ!
    父の悪霊に立ち向かう影の姿は、繊細でありながら力強くて、よくぞここまで成長したなあ、という気持ちで感無量に。そしてあのラストは素敵でした。

  • クトゥルーものとしては大変完成度が高いとまず感じた。全一教の内容がまさかああいう事だとは……。間違いなく、ここに登場した全一教の秘本はクトゥルー世界の魔道書のひとつに数えられていくだろう。
    宇宙的恐怖というものの登場のさせかたについても申し分がない。それに立ち向かうべき主人公が、血筋として恐怖の系譜に連なる者であるという設定、主敵が実の父であるという関係性も、まさにクトゥルーものの典型であり、かつスリリングに演出されている。
    だがしかし……。一つ残念なことは、聳え立つ敵としての黒形上赤四郎が、背景に邪神を背負った時、ラスボスではなく、中ボスの存在に格落ちしてしまう事だ。前巻までは圧倒的なラスボスの立ち位置を占めていただけに、これだけは残念。
    その一点を除くと、黒形上の出現の仕方、激闘の舞台、変化する壁画など、まさにインドアでありながら凄いスペクタクルであり、手に汗握る戦いであり、かつ、一人のヒーローが役目を終えて人生の次のステージに足を踏み入れる、一種爽快かつほっとする結末が用意されていて、物語としての完成度も非常に高いのではないかと思う。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1960年、三重県生まれ。
早稲田大学在学中に幻想文学会に参加、分科会の幻想短歌会を主宰。
1987年、短篇集『地底の鰐、天上の蛇』(幻想文学会出版局)でささやかにデビュー。
1989年、第一歌集『日蝕の鷹、月蝕の蛇』(同上)を刊行。
平成とともに俳句に転向、「豈」同人。句集に『アンドロイド情歌』『悪魔の句集』『怪奇館』など。俳句関連書に『怖い俳句』『元気が出る俳句』『猫俳句パラダイス』などがある。
1998年より専業作家。ホラー、ミステリー、幻想小説など多彩な作品を発表。近年は時代小説の文庫書き下ろしを多く手がけ、オリジナル著書数は130冊を超える。
趣味はマラソン、トライアスロン、囲碁・将棋、油絵、鉄道など。

ホームページ「weird world 3 倉阪鬼一郎の怪しい世界」
http://krany.jugem.jp/

「2017年 『世界の終わり/始まり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉阪鬼一郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×