ポジティブ心理学の挑戦 “幸福"から“持続的幸福"へ

  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799315767

感想・レビュー・書評

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  • 悔しいけどおもしろかった。いろいろ考えさせられた。

    ざっと読み飛ばすつもりで読み始めたが、すぐに腰を据えて読みたくなった。前作同様ありきたりなビジネス書や自己啓発本の体裁だが(そもそもこの邦題はなんとかならなかったのか!)、実に癪に障ることに共感せざるを得ないことが多い。これも前作同様だ。引用文献の一覧すら省かれているのは困ったところだが、この内容の本がこの値段で読めるありがたさで帳消し。
    確かに軽症のうつ病は薬ではなかなかよくならない。操作的診断基準が広げたうつ病の裾野は従来医療が関わることがなかった重篤なうつ病患者を掬い上げることにはそれほど役に立たなかったが、大量の治らない「うつ病患者」を生み出してしまった。この人たちは「軽症」であるが故に、治療への反応が乏しい。運良く薬が効いてもやめればまたぶり返す。結局製薬会社を潤わせ、薬物依存症者をあふれさせてしまった、と批判されていることはご存知の通りである。日本では今も我が世の春が続く認知行動療法もまた楽園へのパスポートではない。これは治療に携わる者には自明のことである。
    あらゆる困難や矛盾を解決してきた人類の歴史の最先端にいるはずのわれわれが、なぜそれほど心豊かに生きられないのか。著者は鬱にならない、病気にならない状態を求めるのではなく、積極的によりよく生きる具体的な方法を提案する。それはありきたりな「ポジティブシンキング」などではない。また認知行動療法のように症状に焦点が当てられたものでもない。きわめて目的本位なものだ。これは以前の著者の考えから最も理想的な方向への進化を遂げているように感じる。


    後半は陸軍における著者の取り組みを中心に述べられる。アメリカは他国に次々と戦争を仕掛けている、というのは事実で、軍が兵士が常に能力を発揮できるように注力し、そのために常に先端的な学術研究の成果を導入することに積極的というのもそうした軍事活動を円滑に行いかつ社会保障の負荷を減らすという意味合いが大きいことは確かではある。しかし同時にアフガニスタンへの軍事介入が「最前線の兵士が携帯電話で自分の家族と連絡が取れる最初の戦争である」という視点は、当然ながら兵士一人一人を人間として扱わなければ出てこない。またベトナム戦争における一般市民の虐殺も、それによってPTSDを発症した「アメリカ市民の健康」という問題にしか関心が向けられていないと批判されるが、殺された側に関する事実に目をつぶっていては兵士の罪の意識という問題の根源には近づけないことは言うまでもないし、実際にそこで起こった事実を冷静に記録し、しかるべき機会に公開しているのである。
    翻ってこちらの国ではどうだろう。徴兵制などという妄言を吐くものには次世代を担う若者へのむき出しの敵意があればまだいい方で、果たして若者を人間と見なしているかどうかも怪しい。過去の戦争犯罪は「なかったこと」にするのがもはやこの国では当たり前になってしまい、罪の意識など持てばそれこそ「国辱」扱いだ。
    もちろんアメリカという国が他国に対して行っている犯罪は決して赦されるものではないし、戦争は人間が行う最も愚かな行為だと思う。でも、それにしても、こちらとあちらを比べると、こちら側がひどすぎるのだ。

    まあとにかく、読んで損はないと思う。

  • 本書ではポジティブ心理学の中枢概念と言えるウェルビーイングについての本となります。著者はウェルビーイングを「天気」と同じような構成概念だと述べます。つまり「天気」は1つの指標であらわすことができませんが、気温、湿度、気圧など複数の指標を総合して「天気」と呼ぶわけです。それと同じでウェルビーイングも特定の1つの指標であらわすことはできず、複数の構成要素からなる概念だということです。著者はその構成要素を「PERMA」の頭文字で表していますが、具体的にはP:ポジティブ感情、E:エンゲージメント、R:関係性、M:意味・意義、A:達成、の5つです。幸福感や人生の満足度はポジティブ感情の中に含まれることになるため、幸福理論よりもウェルビーイング理論の方が対象が広いことになります。これらは主観的な指標と客観的な指標で組み合わされるわけです。
    ポジティブ心理学はどのような時に有効なのか。それは本書の最後に明確に記載されています。著者曰く、現実には「再帰的現実」と「非再帰的現実」があるがポジティブ心理学は「再帰的現実」世界で有用だという主張です。再帰的現実とは人々の期待が自己実現する世界で、株価がその典型です。多くの人々が、株価が上がると思って株を購入すると、本当に株価が上がってしまうからです。経済学では「ケインズの美人コンテスト」、として知られている現象です。また岩井克人先生の貨幣論も再帰的現実として説明されています。
    そして非再帰的現実とは、例えば自然現象で、月の満ち欠け・軌道などのように、人間の期待が変わろうと変化しません。つまり人間が楽観的だろうが悲観的だろうがなんら影響を及ぼさない事象です。著者は、非再帰的現実については、人間は現実主義者(リアリスト)であるべきだが、再帰的現実のなかでは楽観主義者たれ、と主張しているわけです。楽観主義であることが実際に健康を増進する可能性が高いことがその理由ですが、これは多くの研究で実証されている、ということで、ポジティブ心理学が有用である領域についても明確に記されており、大変好感が持てました。

  •  マイナスをゼロにする(苦しみを取り除く)だけじゃなくてプラス方面(人生をよりよくする)の研究ないかな?と思ったらあったので読みました。
     この本はポジティブ心理学の中でも、一瞬の幸せな気分とかじゃなくて持続的な幸福(ウェルビーイング)に着目していて、普段求めてる幸せに近い感じです。ハッピーというよりじんわり、最近いい感じと思うときみたいな幸福観です。
     

  • 不動産においてもウェルビーイングが流行しているが、COVID-19の後にはさらに注目されるだろう

  • ポジティブ心理学人々を一層幸せにすることができる
    Happier ❣️

  • 持続的幸福に必要な寄与する要素
    ポジティブ感情エンゲージメント意味意義達成関係性
    強みがこれらの要素を支える。
    強味好奇心審美向学心
    感謝の訪問
    頭に浮かんだ人に感謝の手紙を書いて自分で直接その手紙を届ける。手紙の内容は具体的に7-800字。その人が自分のために何をしてくれたのか、そしてそれが自分音人生にどう影響を与えたのかを具体的に描く。現在自分が何をしているのかを相手に知らせる。相手がしてくれたことを思い返していたと伝える。
    うまくいったこと
    今日うまくいったことを3つ書き出す。どうしてうまくいったのかを書く。
    達成=スキル×努力
    どちらかが0だと達成が起きない。スキルを構成する要素はどれだけ無意識的に作業できるか。10年間、週60時間で世界クラスになる。残りの時間で遅い処理ができ、仕上がりがよくなる。学習率。
    根気と自己コントロールは、まだわかっていない。
    破滅的な思い込みに立ち向かう。証拠を集める。楽観を使う。バランスの取れた見方をする。非現実的な間違いを途中で正す。
    人生の妨げとなる出来事の原因を一時的で、変わりやすく、局所的なものと考える。
    楽観性が健康を増進する。
    収入増加の持続的幸福量への貢献は対数的。時間は直線的.
    意味、意義と関係性、エンゲージメントは経済状況とは異なる動きをしうる。
    高いポジティブ感情、自尊心、楽観主義、レジリエンス、バイタリティ、自己決定、ポジティブな関係性、達成。

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