なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法 (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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本棚登録 : 153
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799325445

感想・レビュー・書評

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  • 何というか……、本当にタイトル通りの本だなあ、という感じです。実際の性行為に暴力や脅迫、証言などがあっても有罪どころか起訴にすら至らない性犯罪が、野放図にあるという事実は、ただただ衝撃です。

    2019年の3月、自分の娘に数年間にわたり性的虐待を繰り返した父親に、無罪判決が下されたというニュースがありました。詳しい起訴の内容はこの本を読むまで知らなかったのですが、親という立場を利用し、あざができるほどの暴力を娘が小学生の頃から振るい、中学二年からの5~6年間は性行為まで強いるという、鬼畜なものでした。

    さらに衝撃的なのが、そうした起訴内容を裁判では事実として認定しながらも、判決は「娘は著しく抵抗できない状態だったとは認められない」として無罪判決だったということです。これが無罪だったら、世の中の性犯罪の9割9分無罪だろ……

    この根拠となった刑法の要件というのが、100年以上前に作られたもの。もはや時代に合ってるとは思えない法になぜこだわるのか、理解に苦しみます。

    ただ一方で、自分の中の「性」への考え方を改める必要も感じました。この本の中で取り上げられた事例の一つに、財務官の女性記者へのセクハラ問題があります。その財務官の発言も相当気持ち悪いし、麻生大臣の「セクハラ罪という罪はない」という発言も「ええ……」とは思ったものですが、でも心のどこかで、
    「女性記者が一人で取材に行くってことは、少なからず『性』を武器にして取材する心づもりはあったのではないか」という考えも当時ありました。

    でも、こういうイメージってたぶん小説や、マンガ、映画などといった「女スパイ」のイメージから来てたんだろうな、と読み終えた今は思います。そんな歪んだイメージが積み重なった結果が、先に書いた無罪判決と、置き去りにされた被害者たちなんだろうな、という気がします。

    この本で紹介されている海外の事例では、同意のない性行為は禁止されている、であるとか、親や教師などの立場を利用した性暴力は犯罪と明記しているであるとか、またそれ以前に、子供の頃から性教育に力をいれているであるとか、自分も含めて日本の現状が情けなくなるような数々の事例があります。

    元TBS記者の山口敬之氏とジャーナリストの伊藤詩織さんの裁判についても、この本には収録されています。読めば読むほどに、伊藤さんの勇気と覚悟を感じます。これを読むと、確実に潮目は変わってきているようにも思います。

    自分もそして社会や司法も変わるタイミングというのは、確実にきているはずです。被害者の方の怒りや無念、そして表に出ることのなかった悲劇と叫びをなかったことにしてはいけないと、強く思いました。

  • 【#なぜそれが無罪なのか】性犯罪に関する刑法の現状と未来を語り合いましょう。
    https://d21.co.jp/column/naze_muzai/

    差別と戦い、日本の女性にも勇気を与えたギンズバーグ氏 伊藤和子弁護士が語る功績:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/60542

    なぜ、それが無罪なのか? | ディスカヴァー・トゥエンティワン - Discover 21
    https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2544-5

  • いかに日本の性犯罪に対する態度が緩いのか。法律が如何に甘いのかを改めて認識させられた。
    実の父親が娘に性行為をして訴えられても無罪になる社会はどう考えても異常だ。

    男性は女性が意に反する性行為をされた時に感ずる気持ちが分からないのではないか。どれほど傷つくことなのかを理解しないまま成長する男がほとんどだと思う。
    真剣に教えなければ変わらない。行為の結果、相手が苦しむことを想像できるように教育することが大切と思う。

    著者の言う通り、性についてアダルトビデオやらエロ雑誌から学んだ男どもの何と多いことか(私もその1人)。
    これでは誤った認識しかないままの社会は変わらない。もっと大々的に誤解のない、皆が納得する論説が繰り広げられることを期待する。

    ただし、本書内で用いられている.他の犯罪と安易に比較するスタンスは間違っていると思う。行為には其々に異なる環境要因が絡んでいるのだから。

  • 4.17/124
    内容(「BOOK」データベースより)
    『2019年3月、岡崎、福岡、静岡、浜松…相次ぐ性的虐待やレイプ事件への無罪判決。2017年に110年ぶりに大幅改正されたものの、世界のなかでまだこんなに遅れている!2020年、性犯罪の刑法見直しなるか。』


    『なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法』
    著者:伊藤 和子
    出版社 ‏: ‎ディスカヴァー・トゥエンティワン
    新書 ‏: ‎285ページ
    発売日 ‏: ‎2019/8/13

  • 強姦の無罪判決が出るたびに、この本が話題になっていたので読んだ。
    日本ではレイプを起訴して加害者を罰するのが呆れるほど難しいということがわかって、やるせない気持ちになる。
    著者の文章が女性に寄り添っていることや、他の国の強姦の法律を見て少し慰められる。
    が、日本の法律や男性の認知の歪みには不安しか感じなかった。どう考えてもおかしいでしょう。

  • 法律家による日本の性犯罪と刑法の解説。
    裁判の判例や世界の刑法なども掲載されています。
    法律に詳しくなくても、日本の刑法がグローバルスタンダードより遅れをとっているのが分かります。

    "No means No"、"Yes means Yes"は、日本に今すぐに必要な考え。

    悲惨で壮絶な数々の判例や、政治家の無知で身勝手な発言が載っていて、読み進めるのが辛くなる部分も多くありました。でも、これが、日本の現状。


    伊藤詩織『Blackbox』と姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』も読んでおくとより理解しやすいかと。

  • 性犯罪の無罪判決や刑が軽い事が気になっていたけど、呼んだらある程度訳が理解出来た。法律も意識も、これから変わっていってほしいな。

  • 断片的には知っていた情報が本になってバーっと繋がると色々思うところあった。日本は変わらないと。

  • ●2017年、110年ぶりに刑法の性犯罪に関する規定が改正されました。強姦罪の名称が「強制性行等罪」に変更されました。また被害者には男性も含まれることになりました。
    ●日本における「性行同意年齢= 13歳」は諸外国と比較して極めて低年齢の設定。
    ●相変わらず高いハードルなのは、暴行又は脅迫が要件とされていること。
    ●アンケートによると、女性の13分に1人が性被害に遭っている。男性は67人に一人。
    ●被害者が加害者に罪を問う為に求められること。①性行されたことを証明する事が必要。②合意がなかったことを証明しないといけない。③「暴行」「脅迫」または「心神喪失」「抗拒不能」の要件④最後に立ちはだかるのが「故意の壁」加害者の故意が必要。
    ●検察は少しでも勝てない可能性があると不起訴にする。しかし民事訴訟の場合には「疑わしきは被告人の利益」の原則ではなく、証拠が優越していると認められた側が勝訴します。
    ●イギリスでは、暴行脅迫等がなくても犯罪とされている。スウェーデンではさらに、相手のNOを見落としていたらアウト。
    ●麻生大臣の「セクハラ罪と言う罪は無い」発言
    ●性被害にあったらまず①警察。警察庁は相談窓口#8103 (ハートさん)を導入している。
    ②病院③ワンストップ支援センター
    ●この刑法そのものが110年前、女性に参政権もない時代に出来たのです。もちろん法律制定の議論に女性は参加していませんし、女性の被害体験のCDを反映して作られた法律では無いのです。こんな法律を金科玉条のように祭館店とするのはいかがなものでしょうか。
    ●紅茶の理論。無理矢理相手に飲ませない。

  • 東2法経図・6F開架:326.22A/I89n//K

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著者プロフィール

弁護士(ミモザの森法律事務所),国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

「2023年 『ジェンダー法研究 第10号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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