- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800300188
作品紹介・あらすじ
『涼宮ハルヒの憂鬱』から『ファウスト』、浦島太郎伝説、夏目漱石『それから』まで。絶望の国を生き抜くための白熱講義全12講。
感想・レビュー・書評
-
面白い作品をただ語り合う、だけではなく、学問に昇華しなくてはいけない「先生」というのは大変だなと思う。時間ループものは大好きなので、一覧にまとめたサイトは収穫。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
《目次》
◇第一講:オリエンテーション
恒川光太郎「秋の牢獄」精読――ユートピアに囚われて
◇第二講:時間ループ物語とは何か(1)
未来喪失という拷問――「エンドレスエイト」ほか
◇第三講:時間ループ物語とは何か(2)
猶予された時間の生き方――『恋はデジャ・ヴ』ほか
◇第四講:時間ループ物語とは何か(3)
ゲーム的試行錯誤の世界――『ひぐらしが鳴く頃に』ほか
◇第五講:時間ループ物語とは何か(4)
悦楽の時間よ、永遠に――『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』ほか
◇第六講:世代対立の不毛を超えて
コンテンツ批評の時間ループ物語論へ物申す――『不可能性の時代』ほか
◇第七講:ループものの起源をさかのぼる(1)
人生時間の伸縮――『ファウスト』、輪廻転生、さまよえるユダヤ人ほか
◇第八講:ループものの起源をさかのぼる(2)
予知と夢落ち――『フラッシュ・フォワード』「鼠穴」「芝浜」「夢金」ほか
◇第九講:ループものの起源をさかのぼる(3)
物語の迷宮と時間の近代化――「デス博士の島のその他の物語」「毒入りチョコレート事件」「時間の比較社会学」ほか
◇第十講:ループものの起源をさかのぼる(4)
浦島太郎伝説とユートピアの陥穽――『母系社会日本の起源』『銀河鉄道999』『夢十夜』ほか
◇第十一講:大先達に学ぶサバイバル法
高等遊民の愉悦と不安――『三四郎』『それから』『一握の砂』ほか
◇第十二講:ループの時代を超えてゆくために
平成ユートピアの囚われ人――『けいおん!』『門』『上海バンスキング』ほか
・ ものがたりの力を試す――あとがきに代えて -
時間ループものを材料に日本社会を論じたもの。一読の価値あり。
-
時間ループ物はアニメぐらいでしか知らないが、結構、古い作品があるのには驚いた。
この本の面白いところは作品の検証だけではなく、何故そのような作品が生まれたか、当時の世相なども交えて検証している事だと思う。
[more]
まどマギを観て、ループを題材として本がないかと探していたら図書館で見つけて読んだが、予想していた以上に濃い内容だった。
実際のループ物の系統分類に始まり、二次創作や現実の社会の状況も交えての解説は中々に読み応えがあった。自分が漫画、小説を読む時はそこまで深く考えないから新鮮だったな。
まあ、今後も深く考えて読む事はないだろうけど、少しは深く考えられるかな? -
評論
-
浦島太郎フォーマットが、実はまともな奴が多い(さう言へば安倍晴明も竜宮で修行してゐたのであった)といふか、アレは最下層だったといふ指摘は、はー。
生活系と日常系のメルクマール(目印)に、犬と猫があると言ふのは、角川版の『あずまんが大王』と『よつばと!』以降の小学館版での『あずまんが大王』の加筆部分とか、その『日常』での犬猫の描写とか、でもけっこう行けると思ふ。 -
てst
-
時間ループものの小説、アニメ、映画を、それが読者のどのような欲求を満たしているかという視点から分類・整理するとともに、文学史、あるいは神話、昔話と言った物語の歴史の中に相対化しつつ位置づけ、それを社会反映論的な見地からではなく、生き方を考える際のツールとして読むことを提起している。新旧の時間ループものの紹介としても面白い。ただ、最後の章での、時間ループ物語をツールとして提起されるこれからの日本での生き方は、シンプルライフやエコのようなもので、若干落胆させられる。これも、「だったら、読者のあなたが自分でこのツールを使って考えなさい」ということかもしれないが。