劣勢を逆転する交渉力

著者 :
  • 中経出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806133858

作品紹介・あらすじ

「世界が尊敬する日本人100人」(日本版『Newsweek』)に選ばれたタフ・ネゴシエイターが明かす国際交渉の真実。堂々と渡り合い、交渉でイニシアティブをとるためのヒントが満載。

感想・レビュー・書評

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  • 水産庁において、タフな国際交渉をこなしてきた著者の経験を中心に、一筋縄ではいかない交渉のダイナミズムを知ることができる。

    特に印象的だったのが、200カイリ漁業水域の設定による、アメリカの排他的経済水域内での漁業権益交渉の帰結である。

    サケマス漁業のための重要な漁場であった、同水域について、日本はアメリカの定めた200カイリ内での漁業権を確保するために、劣位な交渉を続け、最終的には撤退を余儀なくされた。

    元々、サケマスの消費が少なく、加工技術もないアメリカにとって同海域は、日本にとって価値があるが自らは利益を得られないという環境にあった。
    しかし200カイリの制限により、日本は漁をしたければ、アメリカの求める条件を飲まなければならないという力関係が出来上がってしまった。それにより、年々制限が厳しくなるほか、アメリカへの漁業技術・加工技術・施設の提供等をも求められ、ついにアメリカが独力でサケマスビジネスを運営可能になった時点で切り捨てられた。

    日本としては、200カイリという不利な土俵を設定された時点で、先細りの状況の中、撤退もできず、搾り取られてしまう状況に陥っていたのである。
    長期的な戦略ビジョンがなければ、固定的なパワーバランスは維持され、有利な側にコントロールされてしまうという恐ろしい教訓が、ここに見て取れる。

  • 151226 中央図書館
    農水省官僚として、マグロや捕鯨の国際会議で厳しい交渉をこなした人による、シンプルなメッセージ。元気が出る。黙りこむな、とか、よく勉強して次の一手を撃ち続けろ、とか、とことん事前にディベートを繰り返すなど。

  • 実体験に基づく交渉論。国際交渉でこのように活躍する日本人がいることは励みになります。

  • 「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた
    タフ・ネゴシエイターが明かす国際交渉の真実!

    役人らしからぬ大胆な発言と強気な姿勢で
    IWC捕鯨交渉で日本の立場を鮮明にした著者が
    思いのたけをすべてを公開!

    ——————————————————————

    劣勢を逆転する交渉力・目次

    第1章 どんなに不利な状況でもあきらめない
        ——IWCの捕鯨交渉

     1 交渉の目的は合意ではない
       ・みずからの立つ軸を明確にする
       ・事なかれ主義は迎合につながる
       ・対立を当然と考える
       ・意見の対立と感情的な対立は別物
     2 絶対にイエスと言わない相手と粘り強く交渉する
       ・捕鯨支持国vs反捕鯨国の陣取り合戦
       ・圧倒的に不利な状況からのスタート
       ・日本の科学者をレベルアップする
       ・IWCの総会を日本に誘致する
       ・事実上の引き延ばし策に妥協をやめる
       ・当面は調査捕鯨の拡充を目指す
       ・クジラは増えている
     3 局面を打開するための布石を打つ
       ・硬直化したIWCを外部から切り崩す
       ・会議をプレスに公開する
       ・捕鯨は文化であり、伝統である
       ・捕鯨支持国と反捕鯨国が拮抗した下関会議
       ・ダブルスタンダードのアメリカ提案を否決に追い込む

    第2章 反撃の糸口は相手の批判のなかにある
        ——調査捕鯨の拡充戦略

     1 交渉相手の批判は宝の山である
       ・相手の主張につけ込むのも交渉のうち
       ・批判されてこそ次の手が見えてくる
     2 発想次第でピンチはチャンスに生まれ変わる
       ・反捕鯨国の間違いを証明する
       ・批判を受けて、さらに調査を続行する
       ・インパクトのある話で国際世論を動かす
       ・傍観者ではいられない捕鯨問題
     3 批判に応え、さらなる批判を封じ込める
       ・落ち込む周囲を横目に、批判を歓迎する私
       ・相手の批判に真面目に応えるだけで、相手にダメージを与えられる
       ・無茶な批判を封じ込める効果も

    第3章 国際交渉でイニシアティブをとる
        ——FAOでの議長経験と赴任時代

     1 誰よりも早く発言して議論を引っ張る
       ・大事なのは率先して話すこと
       ・議長ははたして中立か
     2 議長になって会議を仕切る
       ・ローマ赴任時代の財産を生かす
       ・議長として反対意見続出の行動計画をとりまとめる
       ・長引く会議をスムーズに進行する
       ・誰に話を聞くかで流れが変わる
       ・相手の国の言葉で「ありがとう」と言う
     3 日本人スタッフの地位向上をはかる
       ・分担金の大きさと比べて圧倒的に少ない日本人職員
       ・同じ話を何度もされるとプレッシャーになる
       ・特別なことはいらない、ただ続けるだけ

    第4章 過去の交渉の経験を次に生かす
        ——日米漁業交渉からミナミマグロ交渉へ

     1 二国間交渉で勝敗を決する
       ・国益と国益のぶつかり合い
       ・水産庁は稀に見る国際官庁だった
     2 事実上の撤退交渉から学んだこと
       ・生まれ故郷の役に立ちたい
       ・念願の日米交渉の担当に
       ・後手に回り相手の土俵で言いなりになる
       ・自然保護活動の高まりを受けて
       ・戦略の有無が勝敗を分けた
       ・大局的にものを見る
     3 過去の失敗を教訓に変える
       ・アメリカの罠にはまった日本
       ・ミナミマグロ交渉でまったく同じ構図が再現される
     4 こちらから先手を打つ
       ・やっかいな交渉相手
       ・先手を打って相手を黙らせる
       ・相手の裏をかく高等テクニック

    第5章 交渉は会議の前からはじまっている
        ——会議資料のつくり方と事前の根回し

     1 交渉の成否は事前準備にかかっている
       ・会議は交渉のごく一部にすぎない
       ・科学的なデータに立脚する
       ・収集したデータを取捨選択する
       ・資料は簡潔に、一目見てわかる形にまとめる
       ・次の一手を打ち続ける
     2 国際理解のための座標軸を手に入れる
       ・判断基準は自国の文化・歴史のなかにある
       ・日本の伝統捕鯨を掘り起こす
       ・宮本常一の本との出会い
       ・漁村の現場から見えてきたこと
       ・拾い集めた材料を現実の施策に反映させる
     3 事前の対話を通じて味方を増やす
       ・事前の話し合いで投票行動はほぼ決まっている
       ・徹底的に話し合って基本的な考え方を共有する
       ・お互いの意思を尊重して対等な関係を築く

    第6章 闘うための交渉力を身につける
        ——国際交渉における英語の実際

     1 国際交渉で求められる英語力
       ・伝わらないのが当たり前
       ・英語はゆっくり、はっきり発音する
       ・誰の考えなのかを明確にする
       ・発言内容を紙にまとめる
       ・通訳は必要か
       ・「わかりません」は思考停止
       ・わからないなら、わかるところまでを言う
       ・交渉力はどれだけ場数を踏んだかで決まる
     2 言葉には言葉を――議論に負けない交渉力
       ・タイミングよく言葉を切り返す
       ・相手の記憶違いを指摘する
       ・間違った批判には毅然とした態度で立ち向かう
       ・相手のくり出す批判に矢継ぎ早に反論する
     3 英語を自分のものにする
       ・人は打ちのめされてはじめて本気になる
       ・一度中断しても、またはじめれば継続になる
       ・何のために英語を学ぶのか
       ・最短ルートは外国で暮らすこと
       ・ヒアリング力を鍛える
       ・日常会話のほうがはるかにむずかしい
       ・英語の勉強は一生もの

    第7章 積極的な情報提供で世論を動かす
        ——交渉後のフォローアップと説明責任

     1 交渉の成果を広く世間に知らしめる
       ・説明責任を果たす
       ・誰のための交渉か
     2 会議にプレスを入れて交渉プロセスを公開する
       ・日本の主張がまともに報道されない
       ・反捕鯨国の主張を逆手にとる
       ・日本に好意的な報道が増えた
     3 メディアを通じて説明責任を果たす
       ・メディア戦略で後手に回る
       ・報道の力で世論を盛り上げる
       ・こちらが出さなければ相手の情報が使われる
       ・自分のエリアには人一倍コミットメントする

    第8章 つねに時代の変革者であれ
        ——私のリーダーシップ論

     1 改革を推進する
       ・みずから水産庁を去る
       ・交渉の場がなくなり、国際性を失った
       ・改革には抵抗がつきものである
       ・現状維持は既得権者の隠れ蓑
       ・漁業資源を維持・管理するために
     2 真のリーダーシップとは
       ・リーダーとそれを支える人がいてはじめて変革が起きる
       ・変化を拒む人、変化を受け入れない組織に未来はない
       ・国家公務員制度を変えよ!

  • カケキンレビュー。

    世界が尊敬する日本人100人のうちの一人。

    私の会社で講演をしてくだり、本をくださったので読んでみた。

    ぬぉー、ものすごいことをやってきたんだな、この人。


    本の構成的には全体的に著者の小松さんが水産庁のときに経験した水産関係の国際会議での武勇伝が書かれている。これはちょっとやらしい感があるけど、それでも面白い!!

    ミスター捕鯨といわれるほどの捕鯨大賛成理論をこの本でも展開しているため、日本人の捕鯨の立ち位置を再確認できる本でもある。

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著者プロフィール

農学博士。独立行政法人水産総合研究センター理事。
東北大学卒。77年農林省入省。米国エール大学院卒。農学博士(東京大学)。
IWC日本政府代表代理、FAO水産委員会議長、水産庁漁場資源課長等を経て、05年より現職。
[主要著書]
さかなはいつまで食べられる

「2007年 『さかなはいつまで食べられる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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