誰も知らない『竹取物語』の真実 かぐや姫の罪 (新人物文庫 み 5-1)

著者 :
  • KADOKAWA(中経出版)
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806148494

作品紹介・あらすじ

かぐや姫の話には、知られていない前日譚があった。神道研究の第一人者が明かす、「竹取物語絵巻」上巻に書かれた、かぐや姫が天上界で犯した罪と罰!

感想・レビュー・書評

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  • 神道学者の方が神道学の視点からかぐや姫の罪を解き明かそうとする本。
    文庫の値段で竹取物語絵巻がカラーでついてくるので、それだけでも価値があるかもしれない。
    すっきりするダイレクトな答えとか、どんでん返し的な裏話は書かれていません。
    結論の要約は「おわりに」の部分で書かれているので、買うのを迷ったらまずはそのページだけ読むのがいいかもしれない。本文はその論拠をあの手この手で語っている、そんな感じ。

    当たり前だけど「竹取物語」という物語自体は続編があるわけでもなくあれが全てなので、読者が「物語」の謎を解明したいという、一般的な小説を読むような姿勢であれを読むならば、それは各自で頑張って竹取物語を読み込んで謎をあれこれ推測するしかないわけです。
    ご存知のようにかぐや姫の罪が何かは原作本文には一切書かれていないので。
    それでも罪がなんだったか知りたければ、答えは物語中に求めるのではなくもう少しメタ的な視点に求めるしかない。作者の意図とか当時の社会的背景とか、そういうやつです(竹取物語は作者不詳、接ぎ木のように長い時間をかけて複数人の手で作り上げられたみたいです)。
    そういう意味で、神道学の視点で彼女の罪を推測するというやり方は確かに役立ちます。こじつけづくしではありますが、決して胡散臭い三流オカルト的こじつけではないし、ソースも著者なりの理屈も記されているので全部真に受けなくとも、少なくともかぐや姫の罪を考察する際の参考にはなります。

    なので、この本では古典文学のパターンや各地の神社の縁起物語、神話、昔の日本人の価値観などなどを考え併せて、「順当に考えてかぐや姫の罪とされていたのはこれだろ」と結論づけられる、という感じです。


    以下、かなり乱暴なたとえですが。
    戦争映画で「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」と言った若い男性キャラクターがいたとしましょう。で、物語終盤の戦争終了大団円のシーンで何故かそのキャラクターがいないとする。そのキャラクターに何があったのか? 
    これは俗に言う死亡フラグというやつです。なのでたとえ当該キャラの死亡シーンが明確に描かれていなくても、観客は「死んだのかな」と思うでしょう。それがお決まりのパターンだからです。
    さらにこの映画の監督が後のインタビューでインスパイアされた作品に別の戦争映画の作品名を挙げて、そちらには「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ→後に死亡」というシーンがはっきりと描かれていたとしたら。観客はますます「あのシーン、明らかにあの映画意識しているしやっぱり彼は死んだんだろう」と思うことでしょう。
    物凄く単純化して乱暴なたとえではありますが、本書において「かぐや姫の罪」はこんな感じの考え方で推測され結論づけられています。

  • 神道学者の三橋健氏による著作。
    『竹取物語』の主人公である「かぐや姫」について神道学から考察されているものである。
    『竹取物語』は一般的には国文学が研究対象として扱っているので、神道学の面から検討している内容については新鮮に感じることができた。

    私自身は神道学には疎いためか、多少考え方や論理の飛躍(p104の口承の説話の部分や、p125の「かぐや姫」=「富士浅間大菩薩」=「木花之佐久夜毘売」という箇所)が感じられた。

    また、歴史的事象の記述に問題が多々見られる(例えばp71の「かつて文字をもたなかった日本は、奈良時代に大陸から漢字を輸入して使い始め」の部分は明らかに大間違い)。

    内容は神道学者らしく神道学の概念や神社の縁起、また六国史などの史料も使われている。ただし、口承の伝承の使い方や縁起(中世以降に出来たもの)を史料批判なく使うのは如何なものだろうか。
    資史料の使い方には疑問を抱く点が多かった。


    概要は、「かぐや姫」は『竹取物語』の前世譚で罪を得ているという。罪は何かということで、富士山の神を祀る縁起『浅間御本地御由来記』、『富士浅間大菩薩事』を示しす。
    縁起中に出てくる「赫野姫」は「木花之佐久夜毘売」として祀られ、その神こそ「かぐや姫」であるとしている。

    縁起では「かぐや姫」は「姦淫の罪」を得たという。
    「姦淫の罪」というのは、神の子を身籠る、つまり処女懐胎のことを示し、不義密通を問われたとされている。

    これらの罪は、人々の罪(穢れ)を「かぐや姫」という神が被り、その罪(穢れ)を祓うために「さすらう」のだという。

    そして「かぐや姫」は『竹取物語』では異界から人間の世界へと「さすら」ったと著者は述べる。

    大まかな内容は以上のようなもので、考察の中では神道学の事例や世界の宗教学の事例が踏まえられており、共通する部分が多いとしているが、神道とキリスト教の事例を同様のものと捉えて良いものか。基本的に本書は飛躍の部分の多い印象を受けた。

    神道学の話自体は興味が湧いたので、これをきっかけに、著者が参考文献に使われた文献にも触れてみたいものである。

  •  先日鑑賞したアニメ『かぐや姫の物語』のサブタイトルに「かぐや姫の犯した罪と罰」とあったのであるが、それを語る部分が希薄だなぁという印象を受けた.
    アニメの原作でもある『竹取物語』でも、かぐや姫は「月の世界で罪を犯し、それを償うため地上の世界に下された」設定になっている。本書は、神道研究家である筆者が海外の大学で教鞭を取っていた時に現地の学生から「かぐや姫の犯した罪とは何?」という質問を受けたことがきっかけで、その罪は何であるのかを専門である神道面から考察した良著。
     『竹取物語』は、貴人たちの求婚譚(一種の貴種流離譚)、羽衣譚(天女は天地を行き来するために羽衣が必要。竹取物語では、ラストシーンで月からの迎え人に掛けられる月の世界の衣装がこれに相当)、物語成立当時日本にあった真竹とかぐや姫の成長サイクルの類似と竹の神聖性などがミックスされて出来ている。その中で「かぐや姫の罪」とだけあっさりと記載されているのを見て、当時の人は「なるほど」と罪の中身を類推できたのではないか。しかも詳細に書く必要もないまま(書くことが憚られるまま)に。結果として、筆者は富士山浅間神社縁起(神社の成立を語った物語)をメインに、処女懐妊譚や様々な類似した神話・説話から罪とは何であったかを推定している。
     肝心な罪の解明への道筋が大雑把ではあるが、『竹取物語』が内在している様々な説話性、つまり取り残された竹取老夫婦の問題、天皇と姫の関係、月に帰る時に激変をみせる姫の感情変化の源泉など、興味深い内容を多々含んでいる点を明らかにしている面白い書物。これを読むと、『竹取物語』自体や「かぐや姫」に対する印象も違ってくるかもしれない。

  • 他のコメントにもあるように、かぐや姫の罪にたどり着くまで結構時間がかかります。でも、その過程で出てくる寄り道話が面白いので星4です☆
    ぜひ久しぶりに道草をくってみてください!

  •  この罪が衝撃的だった。
     ネタバレが過ぎるので書かないが、例えばこれをモチーフとして映画化したら、炎上するのでは?くらいの。
     ただ、もちろん荒唐無稽な罪ではなく、物語の形づくられた時代背景や伝承を鑑みると納得ができる。でも納得できるが、認めたくない感じ。
     なかなか得がたい読書体験でした。

  • 教養としては悪くありません。 日本古典や神学文学が数多く引用されており、幅広い観点からかぐや姫を読み解いています。 ですが、俗物な私からすれば「クドい!もう縁起物はいいから、罪について書いてよ!」でした。 作者不詳の遠い昔の物語に今更答え正解を知り得ることは不可能であっても、憶測でもそこを追求して欲しかった。姦通罪ということわかっている。でも蛇神と?スッキリ来ない一冊でした。私的には内容がもっと俗っぽい方がよかった。

  •  他宗教を例に挙げるなど、興味深い面もあるが、表現方法が断定的なところが気になった。また、引き合いに出しているジャンルが多く、話が広がりすぎてしまった感がある。的を絞った方が「罪」の部分の説得性が強くなると思った。
     なお、日本文学だけでなく、民俗学的な知識があると、もっと深く読める気もする。民俗学関係の本を読んでから、再読してみたい。

  • 読み物としては面白かったんですが、時系列がよく分かりませんでした。

  • 2015.5.21

  • この前、映画のほうを見たのでね。とりあえず。まぁ関係はないようだけど。

    竹取物語なんて本当に国語以来に読んだので、物語の再確認としても。まぁもともと罪なんて意識していなかったわけだけど、そんなんかと。

    納得はしていないけど、そういう考え方もあるのかというところ。

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著者プロフィール

1939年、石川県生まれ。神道学者。神道学博士。國學院大學文学部日本文学科を卒業。同大学院文学研究科神道学専攻博士課程を修了。1971年から74年までポルトガル共和国のコインブラ大学へ留学。帰国後、國學院大學講師、助教授を経て教授となる。1992年、「国内神名帳の研究」により國學院大學から神道学博士の称号を授与。定年退職後は「日本の神道文化研究会」を主宰。『神社の由来がわかる小事典』(PHP新書)、『図説 神道』(河出書房新社)ほか著書多数。

「2023年 『古事記に秘められた聖地・神社の謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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