もっと知りたいベラスケス ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 東京美術 (2018年1月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
- / ISBN・EAN: 9784808711023
感想・レビュー・書評
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ベラスケスといえば『ラス・メニーナス』。
『ラス・メニーナス』といえばミシェル・フーコーが『言葉と物』のなかで、古典主義時代のデカルト的な知のパラダイムが確立したことを例証するために論じている。画家の視線がどうで、侍女の視線がどうで、鏡に映ってるのは国王夫妻で、表象がうんぬんかんぬん。というのをむかし読んでぐったりした。
そのためベラスケスと聞くと軽く拒否反応が起きる。
でも今回は、大丈夫、マネ経由。マネが崇拝した画家ベラスケスだ。マネはスペインまで模写旅行に出かけてその画技に驚愕したという。
本書ではじめていろんな絵を(おもに肖像画を)じっくりと眺めてみて気がついたのは、ベラスケスは宮廷付きの画家であったにもかかわらず、偉そうな(いろんな意味で)人物たちの姿が「盛って」描かれていなさそうだということ。
(例えば、誰が描いたんだっけ、馬に乗ったナポレオンの肖像画みたいに(あれ、大嫌い))。
面長の人がいたり、唇が分厚い人がいたり、すごく物憂げだったり、厳しそうだったり、チャラそうだったり、ふてくされた感じだったり、どれ一つとして似通った表情がなく、きっとかなりモデルに忠実に描いたのだろうと推測される。
思わず、今もこういう人いるいる、と言いたくなる顔ばかり。
「無原罪の御宿り」で描かれる聖母マリア、それから「修道女ヘロニマ・デ・ラ・フエンテ」とそっくりな人を知っている。
フェリペ4世だって、詩人ゴンゴラだって、イソップだって、すぐそこにいて手が届きそう。それはなんといっても、「皮膚」の描き分け方にあるのだと思う。時を超えて、肌の感触まで伝わってきそうな勢いで、素人ながら抜群の出来だと感じる。
(逆に風景の描き方はあまりパッとしないと思う。そんなこと言ったらプロに叱られるかな)
なにはともあれ、ベラスケスとの不幸な出会いがこうして違う道筋から相殺できてよかった。 -
T図書館
1599年生まれ
2022年スコットランド国立美術館展
日本初公開「卵を料理する老婆」
東京都美術館にて鑑賞 -
スペインの宮廷画家としてその名を馳せたベラスケス。彼の有名な傑作ラス・メニーナス、一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
この解説本によって、一枚の絵にどれだけの技巧が凝らされているか、単なる技術的なテクニックのみならず、人間関係を巧みに表す構図、絵画の背景にあるストーリー、全ての配置、全ての描き方に意味がある。そこまで(ある種画家にしてみれば当然なのかもしれないが)こだわり抜かれた作品ということに、ただただ圧倒される。サインを残さず、画家自身を絵画の中に描いた点は、個人的に「その手があったか」とはっとさせられた。
ちなみに、プラド美術館は閉館2時間前になると入場が無料になる。マドリードに行った際、その無料になるタイミングを狙って行こうとしたら恐ろしい長蛇の列で結局目の前で入館ならず。涙 ベラスケス作品を肉眼で拝めなかった後悔が絶えない…… 必ずリベンジしたい場所。 -
マネはベラスケスの事を「画家の中の画家」と呼んだ。天才的な画家は数多いけれどベラスケスほどの天才は一握りだと思う。きちんとした画集買おうかな・・。