飛ぶ教室 第52号(2018年 冬) (【特集】「飛ぶ教室」的 世界一周旅行!)
- 光村図書出版 (2018年1月25日発売)
- Amazon.co.jp ・雑誌 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784813800071
作品紹介・あらすじ
■特集 「「飛ぶ教室」的 世界一周旅行!」
<創作>
台湾「十元アゲハ」 呉明益/天野健太郎 訳
モロッコ「アマルの いちにち」 松田奈那子
ドイツ「ケバブ」 マライ・メントライン
〈エッセイ・レポート〉
オーストラリア「宇宙の子ども」 川端裕人
タイ「バンコクで子供の本を読む」 ピヤワン ニン サップサムルアム
韓国「韓国こどもの本のいま」 渡辺奈緒子
中国「北京の春節-児童と書籍」 王林/皮俊珺 訳
ネパール・インド「たくましき子どもたち」 矢萩多聞
ケニア「ケニアの子どもと本」 さくまゆみこ
スペイン「本とバラ」 古久保真依
ドイツ「眠りの精とツィヴィールクラージェ」 那須田淳
オランダ「子どもたちの十二か月-オランダの子どもの本を通して」 野坂悦子
アイルランド「子どもたちによろしく(32)」 長崎訓子
アメリカ「学校と本と子ども」 ブラム末廣 理沙
〈絵エッセイ・絵レポート〉
タイ「タイ 子どもの本 紀行」 陣崎草子
イギリス「イギリスでのワークショップ」 高畠純
〈子どものいる風景(絵)〉
スロバキア 洞野志保
スウェーデン 大森巳加
〈対談〉
日本・アメリカ・イギリス 「子どもの本の、今、これから」 金原瑞人 × 三辺律子
〈読み切り〉
「笑うだけよ! 寄席」 加藤休ミ
「誘拐ごっこ」 いとうみく
「秘密結社園芸クラブ」 寺地はるな
〈連載〉
「日々臆測(6)」 ヨシタケシンスケ
マンガ「さんぱつやきょうこさん(51)」 長谷川義史
〈BOOKS〉
〈絵本〉及川賢治(100%ORANGE)/〈児童書〉安藤由希/〈YA〉山本悦子/〈大人の本〉幅允孝
■公募
第41回作品募集結果発表 選者 石井睦美/川島誠
■表紙
早川世詩男
感想・レビュー・書評
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『若いころは十分以上の潜水ができたという彼だが、ぼくはとても信じられず、お愛想で褒めたものの、彼の大きな目がまっすぐこちらを見たとき、自分のおべっかを見抜かれていると思った』
天野健太郎翻訳の呉明益を読みたくて「飛ぶ教室No.52」を手に入れる。これは「自転車泥棒」に連なる話であることを理解する。蝶を巡る過去と現在の混交。もっと続きが読みたいのに、あっという間に読み終えてしまうのが寂しい。もう、この翻訳で呉明益を読むことはできないのだな。
聞き慣れぬ蝶の名前がわざわざカタカナで書き下してある。言葉の切れ目を探して慎重に音に変換する。それらの蝶の名前については文末にややマニアックな原注があり蝶の特徴なとが解説されているのだが、そこには漢字の名前も記されていて、もちろんそれを「見れば」カタカナの音は必然的にそう読めることはまさに「一目瞭然」なのだが、それを意図的にカタカナで通している翻訳の向こう側で原文ではどう記されているのだろうと思いが漂う。漢字を回避した表現がそこにはあった筈だと勝手に想像してしまうのは、もうお馴染みとなったこの翻訳者ならではのこだわりがある筈だと推察するから。
蝶だけではない。台湾の離島の地名も、漢字で補足してはあるもののカタカナで記されている。それは、著者の言葉へのこだわりを丁寧に受け止めて、台湾の読者が感じるであろう小さな違和を、日本の読者にも解ってもらえる形に変えて、翻訳されている、というからくりなのだ。そんなこだわりをゆっくりと楽しむ。タオ族の言葉の響きは南方特有のリズム感があり、それが何だかアイヌ語のリズムのようでもあり、見知らぬ人々の文化的背景を勝手に身近なものに引き寄せて、妙な親近感を喚起する。
もちろん作家の独特の世界が堪能できることは言うまでもないない。台湾史をベースに置きながら、静かな口調で語る視線は為政者に向けられた鋭い眼差し。しかしそれは批判ではない。あくまで現在が過去の延長上にあるという事実を忘れるなという訴えだ。「歩道橋の魔術師」ではそれを郷愁と感じたけれど、「自転車泥棒」ではその描写に込められた意図は鮮明だった。きっとその理解の仕方で自分の足元や当たり前のように見慣れたものをもう一度見つめ直す必要があるのということなのだな、と妙な感想にたどり着く。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世界には面白い子供の本がたくさんある。児童文学の翻訳に関する対談を読んで、そこに紹介されているBookmarkという小冊子のことを知る。世界がひろがった。