異端思想から近代的自由へ (学術選書 103)

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  • 京都大学学術出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784814004140

作品紹介・あらすじ

近代思想の萌芽はオッカムに始まると言ってよい。個を離れて普遍はない。教会のカトリシスムという普遍性から個を解放するなかで、近代的な自由が開花する。本書はデカルト、スピノザらいわゆる異端思想家たちが目指したものが、個としての人間の自由に結実し、やがて政治思想、経済思想へと発展する過程を、独自の史観のもとに描く。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:133A/O87i//K

  • 序 章 唯名論の現代性
       言葉と普遍性
       カトリックと普遍性
       言葉が世界を作った
       普遍と個別の矛盾
       神は三位一体か?
       ロスケリヌスの三神論
       普遍とは?
       普遍の個別化
       オッカムの剃刀
       オッカムの普遍論
       普遍を自由に操る
       認識活動の自由
       意志と想像力
       言葉の力は主体の知性の力

    第1章 デカルトにおける精神の自由と合理主義
     1 デカルトの人生とその著作『宇宙論』、『方法序説』
       平和と寛容の子
       デカルトの幼少期
       財産処分
       イエズス会のコレージュ
       思想転回
       バラ十字会
       自己を見つめる
       『宇宙論』の執筆と出版の断念
       『方法序説』の執筆
       『方法序説』の概要
     2 デカルトへの哲学的批判
       『省察』について
       否定は欠如
       目的原因の否定
       意志は自由
       感覚論者の批判
     3 オランダにおけるデカルト攻撃
       プロテスタントによる攻撃
       人間の自由と神による救済決定
       デカルトは無神論者か?
     4 人間の自由意志と精神の永遠性
       自由意志の確立
       精神の不死性と身体の可死性
       エリーザベトからの批判
     5 デカルトのマキアヴェッリ論
       デカルト、『君主論』を読む
       財産重視
       嫉妬ないし羨望は悪徳
       デカルトの敵

    第2章 スピノザにおける思想の自由
     1 自由思想家スピノザ
       亡命ユダヤ人の家系
       スペインのユダヤ人
       オランダのユダヤ人
       スピノザの青年時代
       父の死と遺産相続
       ユダヤ教からの破門
       最初の論文
       レインスブルフ時代
       『知性改善論』
     2 呪われた書、『神学・政治論』
       『神学・政治論』の執筆意図
       『神学・政治論』の構成と内容
       旧約聖書批判
       神学と哲学
       政治論または国家の基礎論
       『神学・政治論』の刊行とその反響

    第3章 ルソーにおける自然状態と社会状態
     1 自然状態の人間
       自然状態のジレンマ
       楽園喪失とその意味
       自然状態での生産活動
       自然状態における人間の自由
       文明状態は病的状態
       「自然に帰れ」
       ルソーの三大告白文書
     2 自然状態から社会状態へ
       人間の霊性
       神に背く自由
       自己完成能力のパラドックス
       憐れみと同情
       スミスの反論
       未開人の性愛
       偶然が社会状態を招く
       観念と歴史
       私的所有と先占権
       私有観念の発生
       アリストテレスの形而上学的思考
       分業と交換
     3 ルソーの家族観
       力と権利の分離
       男女の愛と家族
       反社会性とルソー
       小所有者の代弁者
       家族愛のユートピア
     4 人間の不平等状態
       社会状態の時期区分
       不平等の最終段階

    第4章 労働、禁欲、慈善の近代思想史
     1 マルクスの『資本論』における本源的蓄積
       労働者の誕生
       先行的か、本源的か
       交換、分業、蓄積
       自由な労働者の創出
       過去の大罪
       歴史としての資本の本源的蓄積
       国債と近代的租税
     2 カルヴィニズムにおける世俗内禁欲としての労働
       宗教改革の社会的影響
       神に向き合う個人
       魂の救済
       労働は禁欲
       汎「罪」論
     3 マンデヴィルの幸福な経済自然主義
       『蜂の寓話』の社会論理学
       慈善なき汎労働社会モデル

    第5章 アダム・スミスの労働のユートピアとその崩壊
     1 人間の効用価値
       スミスへのマンデヴィルの影響
       労働の価値
       公平に収入が得られる社会
       善なる自由社会と悪なる強制社会
       労働の分割としての分業
       富があふれる豊かな社会
       国家も解放される
       商品交換社会の人間の条件
     2 慈善が強制されない社会
       慈善は忌むべき浪費
       他人の感情は不可知
       カタルシスは自己利益
       損得勘定の社会
     3 唯名論的自己利益社会
       商品社会の唯名論的特徴
       スミスにおける公共支出論
       軍事費の肥大化
       スミスの経済主義的軍事論
       戦争と公債
       スミスの財政再建策
       植民地の放棄
       『諸国民の富』の運命

    第6章 マルクスによるスミス批判
       奴隷労働
       人類愛溢れるケース
       重農主義の影響
       スミスのドグマ
       スミスの「粗雑な」唯名論的方法論
       交換価値と使用価値
       資本蓄積と分業
       スミスはどのような時代にいるか?
       剰余労働の発見
       市民階級の失われた楽園
       生産資本と商業資本の区別
       生産的労働と不生産的労働
       どんな労働が生産的労働なのか?
       犯罪は生産的?
       勤労と分業と収入のディストピア

    終 章 エンゲルスと未来社会
     1 ヘーゲルとエンゲルスの国家論
       国家とは
       ヘーゲルの人倫的国家観
       家族は人倫で国家を補完
       国家権力と議会
       自由と平等の未来社会
     2 私有財産、家族の未来
       女性が解放される未来社会
       婚姻制度の古代史
       婚姻制度の近代史
       『家族・私有財産・国家の起源』が描く未来

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著者プロフィール

1945年大阪府に生まれる。
甲南大学名誉教授。
専門はヨーロッパ社会思想史。

主な著訳書
『啓蒙主義の辺境への旅』(世界思想社、1986)、『倫理の大転換』(行路社、2012)、『思考の自由とはなにか』(晃洋書房、2012)、『異端思想の500年』(学術選書、京都大学学術出版会、2016)など。
ジャルダン『トクヴィル伝』(晶文社、1994)、フュレ『フランス革命を考える』(岩波書店、1989)、レーナル『両インド史 東インド篇』上下巻(法政大学出版局、2009, 2011)、レーナル『両インド史 西インド篇』上巻(法政大学出版局、2015)、ランゲ『市民法理論』、フリードリヒ二世『反マキアヴェッリ論』、トクヴィル『合衆国滞在記』、ネッケル『穀物立法と穀物取引について』(訳者代表)(以上、近代社会思想コレクション、京都大学学術出版会、2013, 2016, 2018, 2021)など。

「2022年 『異端思想から近代的自由へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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