- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784815804534
作品紹介・あらすじ
占星術、超能力研究、東洋医学、創造科学……これらはなぜ「疑似科学」と言われるのだろうか。はたして疑似科学と科学の間に線は引けるのだろうか。科学のようで科学でない疑似科学を考察することを通して、「科学とは何か」を解き明かしてゆくユニークで真っ当な科学哲学入門。
感想・レビュー・書評
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「科学的」とは何かを哲学的に考える、その探索の過程として「疑似科学」と呼ばれるものを問う。
統計学という探索手法によって担保する、ということがいかに科学のカバー領域を広げることに貢献したかが突き刺さった一冊。
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これは面白い。「科学と擬似科学の間に明確な線引きは可能だろうか?」という問いを中心に置きながら、20世紀における科学哲学の論点を整理していくことで科学的なものの在り方がどの様に変遷していったのかを理解する事ができる。また各章の冒頭に創造科学や占星術、代替医療といった疑似科学を例に挙げられているためか、常に具体例との対比で考えさせる構成になっているためか教科書的な退屈さは全く感じられなかった。あとがきで述べられている「健全な懐疑主義」、まっとうに疑う姿勢とその技術の必要性については心の底から同意したい。
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著者、いちいち人間臭い書き方が持ち味か。
p.149 (原理的なレベルで意見が食い違ってしまっている場合に)「哲学というのはそういう場面で議論を整理してなにがしかのことを言う能力と責任のある学問」
ポパーの方法論的反証主義
補助仮説の後付けad hocの変更。
クワイン「どんな仮説でもどんな観察からも支持される」
決定実験の不可能性。過小決定。underdetermination
観察の理論負荷性。通約不可能性。パラダイム。通常科学。アノマリー。パズル解決。異常科学。科学革命。
「ある科学者集団が共有しているものがパラダイムである」クーン
専門母体disciplinary matrix 世界観や問題設定などいくつかの要素を含んだ広い意味でのパラダイム
見本例exemplar パラダイムの核心となる模範となる回答例
「パズル解決によるアノマリーの解消」という「通常科学」の営みがなければ科学ではない。クーン
ラカトシュのリサーチ・プログラム論。固い核。防御帯。新奇な予言、新しい現象の予測。前進的プログラム:防御帯の変更がどんどん新しい予言につながり、それを成功させていくプログラム。
観察と実験
成熟した科学の理論は近似的に真である。
オッカムの剃刀って切れ味がよすぎるんじゃないの? ベッカムの髭剃りくらいでいいと思う。
日本の科学哲学者は原発、放射能、低線量被曝について語ってるのかな?何を語れるのか興味ある。
工学的設計は科学理論ほど抽象度が高くないので、ひとつの人工物のなかに異なるパラダイムを混在させることも可能だろう。疎結合なサブシステム群として。
ロバート・マートン、コロンビア学派。
科学知識社会学。
標本サイズが大きいと、弱い相関でも有意な結果が出やすい。バイアスの疑いも高まる。
線引き問題で、成功した科学、近代科学(≠機械論的世界観)に分類するかどうかを問題にしている。再現性・操作性の高さにより特徴づけられる。
線引き問題って植民地の「被支配者の屈折した同一化欲望」と「支配者による疎外」の綱引きみたいな問題に似てるなーと思った。
「進歩主義的な結論にするためにはポパーやヒュームを否定して帰納主義を採用する必要があった」という印象の議論。「近代科学の成功は、知的価値において前進してるから成功なのだ」というのが、知的価値=善という補助命題(前提)を置いていて、ぼくから見るとトートロジーな感じもする。
「疑似科学」(あんなやつら)を「科学」の仲間にしたら、科学が「前進」(進歩)してないことになってしまう。だから仲間に入れてやんない。といってるように見える。 -
ferminさん (http://booklog.jp/users/fermin) にこの本を教えてもらったのはもう2年前。やっと読んだ。
とても面白かった。普通に科学を勉強しているだけだと、考えもしない切り口がいっぱい。考えるための武器もいっぱい与えてくれるけど、その武器は僕には重く、使い方も複雑だ。この本を読んだからといって、僕の「科学」と「疑似科学」に対する態度はなんら変わらなかったかもしれない。でも、考えることは大切で。。。
第3章くらいまでは楽しく読めたんだけど、第4章くらいから頭がおっつかねー。でも、第5章のベイズ統計の話は専門の本を読むよりも分かりやすいんじゃないだろうか。読んだことないけど。で、最終的にベイズ主義によって「線を引かずに線引き問題を解決」するというのが結論としてあるので、意外なところに着地した感じ。
ちなみにタイトルは、『「疑似科学と科学」の哲学』ですね。『「疑似科学」と「科学の哲学」』ではないと気づいたのは読み終わって改めて表紙を見てからだ。
文章はとても読みやすい。ジョーク交じりで楽しい。
この本の中ではたくさんの本が紹介されていて、読みたいと思ったものも多かったけど、その中でもいくつかだけメモ。
谷岡一郎『社会調査のウソ』
金森修『サイエンス・ウォーズ』
ロイ・ウォリス編『排除される知』
西村肇 他『水俣病の科学』
チャルディーニ『影響力の武器』
内井惣七『科学哲学入門』
(2011.11.29) -
代替医療については,昔読んだこの本で「えー,こんなのあるんだ!」とびっくりしたのを覚えている。この本は擬似科学について哲学的に面白く学べておすすめ。代替医療以外にもいろいろな擬似科学が紹介されている。
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2023-04-25
大変刺激的で面白かった。ぼんやりと考えていた「科学とはなにか」という問いに関する論考がこれでもかと詰まっている。
結局明確な答えは出ていないが、明確な答えが出ないという感覚も腑に落ちた。
特に疑似科学系に吸い寄せられる人、反射的に拒絶する人、必読。 -
疑似科学を避けるためには、哲学の疑う技術が必要