大分岐―中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成―

  • 名古屋大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815808082

作品紹介・あらすじ

ユーラシアにおける発達した市場経済は生態環境の制約に直面していた。なぜ西欧だけが分岐していったのか。グローバルヒストリーの代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 15年前に衝撃だったのも、今ようやく訳が出るのも、まあ、納得。全部読んで序文をもう一度読むときが一番楽しかった。論証を追っかけるのが楽しめるかどうかで評価するかどうかになると思う。私は楽しかったけれど。時間食い虫ではありました。結局のところ、新大陸の存在と石炭が分岐だったという結論なんだが。

  •  ある一定の時期までは文明レベルにおいてほぼ拮抗状態にあり、また一体であったはずのヨーロッパとアジアが、どのようなタイミングで、なにをきっかけとして「分岐」したかを論じた書。
     発展の限界を迎えつつあった時代において唯一ヨーロッパのみがブレイクスルーを成し得た理由が大きく二つ、はっきりと具体的に語られているが、そのいずれもが偶然の産物、一種の幸運としてのみ提示されるところに主眼がある。

  • 東2法経図・6F指定 332.3A/P78d/Arakawa

  •  著者謝辞・序文・紹介・2001年版への注記が長い。それだけ内容の濃い本なんだろうなと思いながら読み進める。少し難しいない本のようだ。
    これ、世界史の知識ないと読めん。教科書片手に読もう。日本語を読み込むのに苦労する本。

    第4章 社会と経済システム
     市場システムの特異性を示した章、経済が市場を支配されていたと言える19世紀より以前の歴史をふり帰った章
     交換における利得と利潤を求めて行動する「経済人」が出る前の経済は、互酬・再分配・家政という3つの行動原理によって成り立っていた。互酬は家族と親族に対し効果的であるとされ、共同体の構成員としての徳目に実行に対して、経済的な補償を得ることになる。対称性という制度的パターンに助けられて機能する。(対称性:共同体内あるいは共同体相互において、個人あるいは集団はそれぞれの自己の「片割れ」をもち相互の贈り物のやり取りをする)再分配は社会組織が中心性という制度的パターンを持った時に機能する。生産物は中心的位置する人物に財ととサービスが徴収・貯蔵され、そして再配分される。家制はみずから使用するための生産の謂いであり。閉ざされた集団という制度的パターンで機能する。家制原理のパターンは閉じられた集団である。集団の構成員の欲求を満たすために生産し貯蔵するという事である。
    (―この章書きだすのにとても難しかった―)

    第5章 市場パターンの展開
     15、16世紀の商業革命の前の市場と、革命が何によってもたらされているのかが書かれていた章
     革命前の市場は、局地的市場・遠隔地市場、国内市場があった。遠隔地交易は略奪・海賊的行為から平和的取引へ変容した。局地的市場(主婦が日々の生活必需品の何某を市場に依存し、穀物た野菜の生産者あるいは地域の工芸職人がその製品を販売目的でそこに提供する市場)は18世紀中葉に到るまで見られていた。個別的な取引行為が時間の経過につて局地的市場の展開をもたらし、さらに国内市場へ発展するという考えが浮かぶが、そうではなかった。発展しない理由として、市場が、儀礼と式典という代価によって発展が抑制されていた。商業革命は重商業主義によってもたらされた。この主義は国家の意図的な行為によってもたらされた。重商業主義は農業主義的な国民に対して商業と貿易のために備えることを強いた。また独占と競争を生み出した。独占と競争に対して取られた保護的政策は経済活動の全面的な規制であり全国規模での規制は歴史上初めて取られた政策であった。これらを持って国際市場の形成、国際市場の形成となった。

    第6章 自己調性的市場と擬制商品――労働、土地、貨幣

  • こういう専門外の難しい本を読む忍耐を養わなければ・・・

  • どこでも同じように文明が発達しそうなのに、なぜ西ヨーロッパとその他の地域は違ったのか。ものすごーくたまたまだったというのがその答えのような気がしてならない

  • 333.6||Po

  • 大分岐 K・ポメランツ著
    世界4地域の近世以降を比較

    2015/7/19付日本経済新聞 朝刊

     グローバルヒストリー研究の代表作がついに翻訳された。2000年に刊行された本書は、ユーラシア大陸の東西両端の西欧と東アジアを相互に比較することで、18世紀を中心とする「近世」の世界史像を書き換える画期的な問題提起を行っている。







     本書の論点は2つある。その1つは、18世紀の半ば1750年頃まで、西欧と東アジアの経済発展の度合いにはほとんど差がなく、「驚くほど似ていた、ひとつの世界」であったことを明らかにした。旧世界に散在した4つの中核地域――中国の長江デルタ、日本の畿内・関東、西欧のイギリスとオランダ、北インド――では、比較的自由な市場、広範な分業による手工業の展開(プロト工業化の進展)、高度に商業化された農業の発展を特徴とする「スミス的成長」が共通に見られた。資本蓄積のみならず、ミクロな指標として1人当たりカロリー摂取量、日常生活での砂糖や綿布消費量や出生率でも、これら4地域では差がなかった。比較対象として、中国全土でなく、最も経済が発展し人口密度も高かった長江デルタと西欧(現在のEU圏)に着目した点がユニークである。


     第2は、ユーラシア大陸において発達した市場経済が、18世紀後半の人口増加に伴う生態環境の制約(エネルギー源としての森林資源の縮小や土壌流出など)に直面する中で、西欧だけがその危機を突破した原因を解明する。食糧・繊維(衣服)・燃料・建築用材のいずれを増産するにも、土地の制約に直面するなかで、イギリス(西欧)のみが、身近にあったエネルギーとしての石炭と、新大陸アメリカの広大な土地の活用によって、産業革命につながる社会経済の変革を実現できた。石炭と新大陸という全く偶然的な「幸運」があって初めて、西欧の台頭と工業化は可能になったのである。


     本書は、ウォーラーステインの近代世界システム論に代表されるような従来西欧中心に語られてきた近代世界経済の形成を、近世東アジアの中国・日本と双方向的に比較し、西欧中心史観を相対化する視点の提示が挑発的で、論争を引き起こしてきた。斎藤修の近世日本経済史、杉原薫のグローバル経済史の研究成果も反映されている。翻訳が遅れたことで本書の「序文」には、15年におよぶ論争を通じた著者の見解の変化や最新の論点も収録されており、原書以上の価値がある。訳文も読みやすく、今後、アジアから世界史認識を書き換える可能性を秘めた話題作になるであろう。




    原題=THE GREAT DIVERGENCE


    (川北稔監訳、名古屋大学出版会・5500円)


    ▼著者は58年生まれ。シカゴ大教授。13~14年、米国歴史学会会長。




    《評》大阪大学教授


    秋田 茂

  • グローバルヒストリーの主幹、読みたいんだけど夏休みだろうなあ。。

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