〈驚異〉の文化史―中東とヨーロッパを中心に―

制作 : 山中 由里子 
  • 名古屋大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815808174

作品紹介・あらすじ

驚異の比較研究に挑戦。アレクサンドロスも遭遇したという怪物から、謎の古代遺跡や女だけの島まで、たえず人々の心を魅了してきた"驚異"。旅行記や博物誌が語り、絵画や装飾品に表れるその姿は、人間の飽くなき好奇心について何を教えてくれるのか。"驚異"の「黄金時代」であった中世以来の精神史を細やかかつ大胆に描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 結構ガチな文化史で、「驚異」という概念に関して、ヨーロッパと中東を中心に、それぞれの専門家が章立てして評論しています。「驚異」というからには、もう少し図版が多く、大きく、カラーで載っているとよかったんですが、こういう本が世に出るだけでありがたやと思わないとですかね。自分の興味のある章だけ、つまみ読みするのがおすすめです。

  • 《編 者》山中由里子
    《執筆者》(執筆順)
     池上俊一  二宮文子  亀谷  学  守川知子
     大沼由布  黒川正剛  辻明日香
     林  則仁  小林一枝  松田隆美  金沢百枝 
     杉田英明  家島彦一  鈴木英明
     見市雅俊  武田雅哉  小宮正安  小倉智史 
     宮下  遼  菅瀬晶子

    価格 6,300円
    判型 A5判・上製
    ページ数 528頁
    刊行年月日 2015年
    ISBN  978-4-8158-0817-4
    Cコード C3022
    http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0817-4.html

    【目次】
    序章 驚異考…………………山中由里子
      1 驚異とは?
      2 驚異と中世一神教世界
      3 先行研究
      4 比較研究の可能性と問題点
      5 ジャンルの問題
      6 驚異の定義
      7 歴史的展望

      第Ⅰ部 驚異とは何か
    第1章 ヨーロッパ中世における驚異……………池上俊一
      はじめに
      1 中世知識人にとっての驚異
      2 分類・定義の試み
      3 キリスト教的驚異について
      4 驚異の歴史
      おわりに

    第2章 イスラームにおける奇跡の理論………………二宮文子
      はじめに
      1 イスラームにおける奇跡の発生原理
      2 イスラームにおける奇跡の分類
      3 驚異譚・奇跡譚・歴史叙述――中世南アジアの事例から
      おわりに

      第Ⅱ部 驚異の編纂と視覚化
    第1章 中世イスラーム世界の旅行記と驚異譚――驚異を目にした人々………………亀谷 学
      はじめに
      1 イスラーム世界における旅と旅行記
      2 旅と驚異
      3 ガルナーティーの旅と驚異
      4 旅行記と驚異譚の書
      むすびにかえて

    第2章 天上・地上の驚異を編纂する――ペルシア語百科全書成立の12世紀……………守川知子
      はじめに
      1 トゥースィーの『被造物の驚異と万物の珍奇』
      2 諸学を編纂する
      3 12世紀の思想潮流の中で
      おわりに

    第3章 ヨーロッパ中世の東方旅行記と驚異……………大沼由布
      はじめに
      1 驚異の目撃譚としての旅行記
      2 旅行記という枠組みが与える他の条件
      3 信憑性を持たせるための記述上の工夫
      おわりに

    第4章 ヨーロッパ中世の奇譚集………………黒川正剛
      はじめに
      1 古代から中世へ――奇譚集の誕生
      2 『皇帝の閑暇』における奇譚
      3 『アイルランド地誌』における奇譚
      4 三大百科全書と奇譚
      おわりに

    第5章 コプト聖人伝に見られる驚異な奇跡譚…………辻 明日香
      はじめに
      1 もう一つのキリスト教世界における奇跡譚の編纂
      2 「驚異」 としての奇跡譚
      おわりに

    第6章 中東イスラーム世界の写本絵画と驚異……………林 則仁
      はじめに
      1 中東イスラーム世界における写本絵画の伝統と『被造物の驚異』
      2 カズウィーニーの 『被造物の驚異』
      3 驚異の視覚的描写から見る世界観
      4 視覚化によって高められる信憑性
      5 『被造物の驚異』 写本絵画と他の書物
      おわりに

    第7章 イスラーム美術に表された驚異の動物……………小林一枝
      はじめに
      1 初期の動物表現、実在する動物と空想動物
      2 聖獣もしくは瑞獣としての空想動物
      おわりに

    第8章 ヨーロッパ中世写本の挿絵に見る驚異…………松田隆美
      1 驚異の視覚化と挿絵
      2 死後世界への旅と驚異
      3 典礼書の余白に描かれた驚異
      4 装飾モチーフ化される驚異

    第9章 ロマネスク床モザイクに見る驚異――オトラント大聖堂の分類不能な怪物たち……………金沢百枝
      はじめに
      1 謎を読み解く試みの数々
      2 オトラント大聖堂の床モザイク
      3 偉人の驚異譚
      4 分類不能な怪物たち
      おわりに

      第Ⅲ部 驚異のトポス
    第1章 ヨーロッパ中世の驚異譚における空間(トポス)と時間(クロノス)…………池上俊一
      はじめに
      1 驚異の空間
      2 驚異の時間
      3 古代形象の例――魔術師ウェルギリウス
      おわりに

    第2章 東方の驚異――ヨーロッパにおける巨大蟻の記述の変遷……………大沼由布
      はじめに――東方の驚異と古代からの知識の継承
      1 ギリシア・ローマ時代の巨大蟻の記述
      2 ヨーロッパ中世における巨大蟻の記述
      おわりに

    第3章 動く島の秘密――巨魚伝説の東西伝播……………杉田英明
      1 中東世界
      2 西方伝承
      3 東方伝承
      4 日本への伝来

    第4章 想像の地理と周縁の民族――女人族伝承の東西伝播………………山中由里子
      1 驚異の民族
      2 アマゾン伝承の起源
      3 中世イスラーム世界に伝わったアマゾン伝承
      4 女人族とアレクサンドロスの出会い
      5 船乗り譚や旅行記における女人族伝承

    第5章 驚異としての北方――イブン・ファドラーンの記録を中心に………………家島彦一
      はじめに
      1 イブン・ファドラーンの旅
      2 驚異の源泉としての北方ユーラシア世界
      むすびにかえて――驚異譚の定型化と知識の伝承

    第6章 驚異としてのアフリカ大陸――中世アラビア語地理文献に見えるザンジュ地方………………鈴木英明
      はじめに
      1 行政官たちの地理書・バルヒー学派
      2 渡航者たちによる著作
      3 島嶼部の登場と混同
      4 陸と海との傾向の分化、驚異の行方
      おわりに

    第7章 ピラミッドという驚異………………亀谷 学
      はじめに
      1 ピラミッドの驚異性
      2 ピラミッドへのアプローチ
      3 中世イスラーム世界のピラミッド学の集大成
      むすびにかえて

    第8章 ペルセポリスとイスラーム世界の「七不思議」………………守川知子
      はじめに
      1 イスラーム世界の「七不思議」にみる「驚異の建造物」
      2 「スライマーンのモスク」としてのペルセポリス
      3 「ジャムシードの玉座」
      おわりに

    第9章 ストーン・ヘンジと驚異の国土……………………見市雅俊
      1 中世編――先住権のあかし
      2 近世編――ローマ化のあかし
      おわりに

    第10章 月から見える万里の長城……………………武田雅哉
      1 長城という驚異
      2 「月から見える長城」 の誕生
      3 だれかが見た長城
      4 火星人も長城を見ている?
      5 「月の男」 の変貌

      第Ⅳ部 驚異の転生
    第1章 ヨーロッパ近世の驚異――怪物と魔女…………黒川正剛
      はじめに
      1 ヨーロッパ近世における驚異・怪物の増殖
      2 驚異と自然
      3 魔女言説における驚異・奇跡・魔術と自然
      おわりに

    第2章 驚異の部屋「ヴンダーカンマー」の時代………小宮正安
      はじめに
      1 ストゥディオーロからヴンダーカンマーへ
      2 「術」 の満てる空間
      3 「驚異」 のディスプレイ方法
      4 「異形」 をめぐるコレクション
      5 30年戦争前後のヴンダーカンマー
      6 ヴンダーカンマーの変容と終焉
      おわりに

    第3章 自然誌と博物館――近世イギリスの驚異の行方…………見市雅俊
      はじめに――驚異の時代
      1 「驚異」と「好奇心」
      2 トラデスカント・コレクションとアシュモリアン博物館
      3 プロット自然誌
      4 化石――自然の造形力
      5 驚異の文化の終焉

    第4章 「驚異の地インド」の内在化……………………小倉智史
      はじめに
      1 ムスリム宮廷におけるサンスクリット文献の翻訳活動
      2 『アクバル会典』におけるインドの思想と習俗
      3 地続きになる遠い過去――『カシミール史』のイスラーム前史
      おわりに

    第5章 イスタンブルの民衆と奇物――驚異から日常の中の異常へ………………宮下 遼
      1 オスマン朝における驚異の記録
      2 帝都イスタンブルの奇物
      3 「異教の気配」としての帝都の歴史的重層性
      4 驚異の日常化

    第6章 歴史的パレスチナにおける奇跡譚の今――聖者ハディル崇敬の事例……………菅瀬晶子
      はじめに
      1 聖者ハディルとは
      2 現代の歴史的パレスチナにおけるハディル像
      3 ハディル崇敬の特徴と奇跡譚
      4 ハディル崇敬の場所とその霊験
      5 ハディルの奇跡譚
      6 奇跡と霊験のあいだ

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