- Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
- / ISBN・EAN: 9784817202161
感想・レビュー・書評
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ガルウエイのゴルフバージョン。
インナーゲームの基本原理と読者の実際のゴルフにそれを導入するテクニックを扱っている。しかしテクニックといっても、いわゆる技術ではなく、「(感覚を)知ること=知覚」「(意欲の方向を)選ぶこと=選択」「(セルフ2を)信じること=信頼」の3つである。『インナーゲーム』を読み、かつある程度技術的なことが身に付いてきた今では、ガルウエイの言うことがよくわかる。せんじつめると何かに集中するだけで十分。セルフ1は人間の肉体のどこにも存在しないのだから。結果として、P=pーi : Performance 、potential 、 interference であって、ポテンシャルを引き出すことを阻害しているセルフ1的要因をいかに除去するかがポイント。
以下、インナーゲームとはやや異なりゴルフという観点で、気づきになった点。
バック・ヒット・ストップという練習方法。ダァ、ダァ、ダァ、ダァ、でも良い
「力み」の科学
本来のパワーは、筋肉の収縮と弛緩を巧みに協調させること。意図にできることは、「目標を設定すること」。その後は「邪魔しないように控えること」。現実の力みは、慣れないからではなく、動作を頭でコントロールしようとするところから起きる
自己不信
セルフ1は、「自信がないならもっと頑張れ」、となる。阻害要因は頑張ること
1 ボールを打とうと頑張る
2 ボールを上げようと頑張る
3 飛距離を上げようと頑張る
4 真っ直ぐ打とうと頑張る
5 正しく打とうと頑張る
パッティング:パットを入れるゲームではなく、ボールがどこに転がるかを感じるゲーム
スイング:全体からはじめて感じる焦点を絞り込む
・バランス=重心。オフバランスの起点を感じる
・リズム=基本的には2拍。ダァ、ダァ、ダァ、ダァ、でもよい
・テンポ=バックスイングとダウンスイングの相対的速度を見つける
・アドレス=体で目標を感じる
・パワー=筋肉の緊張ではなく、弛緩のタイミング詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スポーツで素晴らしいプレーをしている時は、目の前のプレーに集中していて、技術面については忘れているという状態。その集中力をどうやったら本番で発揮できるか。そのために障害となる要因をどう認識して取り除くか?
「インナーゲーム」(自分の内部の感覚のゲーム)という考え方をテニスのコーチが提唱、40年前に『インナーテニス』("The Inner Game of Tennis")という本を書き、今でも有効とされているようである。彼は、ゴルフについては 95-105 というありふれたプレーヤーだったのだが、「インナーゲーム」の考えをゴルフに応用、週1回のラウンドと練習で、約1年で 70台に到達したということで、『インナーゴルフ』("The Inner Game of Golf")という本を著している。内側の技能、インナースキルだけでゴルフが上達できるのか?その基軸は「リラックスした集中」。ボールと肉体の動きを仔細に感じ取る、そこに注意力を絞り込み、ショットの結果を客観的に分析し、自分自身の習得能力や実践能力を信じる。
ゴルファーにとって真の理想は、理屈や理論が生み出した「完璧な型」(アウター、理論)に押し込めて作るスイングではなく、内側から自然にあふれ出てくる「感覚」(インナー、自分)を生かした本能のスイング。眠っている「自分自身を感じ取る」能力を再開発することで、ゴルフは自由に、もっと愉しく上達し熟練することが出来る。
昔から脈々と流れてきた「型」と「感覚」というこの二つの必要な大河、伝統的な「型」の指導法と比較的新しい「感覚」の指導法に、この本は初めて橋を架ける試みで、アウターとインナーの良好な関係をもたらす。「型」か「感覚」かという二者択一ではない議論が展開されている。
『禅ゴルフ』でも『インナーゴルフ』でも、結局は言っていることは同じかもしれない。「考える心」「批評する心」(セルフ1)を封じ込めて「直感の心」(セルフ2)のままにスイングしろ、というのが、共通の教えである。そのセルフ1をどう封じ込めるか、という方法に、いくつかの異なる考え方・アプローチがあるという印象である。(セルフ1=自我、セルフ2=自己と解釈するとよいかもしれない。自我を忘れ、無我の境地になったときに、自己の持つ本来の力が発揮されると考える。)
『インナーゴルフ』の場合、まずは発声を紹介している。テイクバックの開始、トップ、インパクト、フィニッシュの4つの「ヘッドの位置」で発声することに集中することで、セルフ1を封じ込め、セルフ2を活動させる。
以下、『インナーゴルフ』のいくつかのポイントをメモしておくが、この本は折にふれて読み直す方がよいかもしれない。
・力み
- 力みの原因は筋肉ではなく心の内部に存在する。
- まず力みを感じ取る。スイングするだけ。その時、体の感覚に意識を集中させる。
- 力みを意識するだけで力みは取れていく(自浄作用)。
・自己不信 self-doubt
- 頑張り過ぎない。セルフ1にリードさせず、セルフ2の自由にさせる。自分自身にスイングさせる。
- その時注意力は細部に行きわたる。「リラックスした集中状態」である。
- セルフ1に「ゴルフは易しい」と思わせる。
・知覚力 awareness
- 自分自身やボールの動きを「感じ取る」ことで、持って生まれた自然な「習得能力」がスムーズに発揮される。知覚力こそが、自己不信を根本的に解決し、体験からの自然な上達を促す「インナーゲーム」の鍵である。
- インナーゲームの習得方法は、経験そのものが教師であり、個人がそれぞれの経験から直接的に学ぶことを基礎とする。
- 学ぶことは変化、内側の変化である。
- 知覚を一つのことに絞り込むのが注意力。何に注意するかが何を習得するかを決める。
- 「こうしろ」の命令型レッスンから、「感じ取る」知覚型の自然習得法へ翻訳する。
(例)頭を動かすな。→ 頭の動きを感じ取ることができるだろうか。
左腕はまっすぐ伸ばせ。→ スイング中、左腕が伸びているか、多少曲げられているかを感じてみよう。
- 知覚型レッスンの難しさは、実際に効果を発揮することを信じることにある。自己不信や欲求不満を排除する効果は誰もが認めるが、現実の成果が伴うかについては懐疑的になりやすい。
- ゴルファーは自分の体は自分自身で問題箇所を修正する能力を持っている。技術レッスンに依存し過ぎずに、自分の内部にある優れた自動修正能力に自信を持つべし。
・習得の技術
- アウターとインナー、技術知識と体験からの習得。この二つをベストの形で融合させる。
- 技術レッスンに頼り過ぎると、自分の動作を感じ取る感覚を鈍化させ、自然な習得能力を発揮させられなくなり、結果的に自己の持つ能力を発揮できなくなる。
- 他人の体験から生まれた技術レッスンを、「ヒント」に使う。ヒントは言葉だけではなく、インストラクターが見本を示したり、ビデオや写真で伝達したりすることでも可能。それは「こんな風なことをやりたいんだろう?」という実例を示すもの。ヒントはゴルファーが自分自身の体の体験に意識を集中することによって、発見する目標の近似値を例示するもの。
- プロの技術を真似する時も、細部にはこだわらない。スイングから一瞬を切り取って分析する技術的な知識とは対照的に、スイング全体を一つの事象として、「流れ」の中でセルフ2に感覚を掴ませる。 -
ブルース・リーの名言
「Don't think,feel」(考えるな、感じるんだ)
有名な言葉だが、どのように実行すれば良いのか、わからない人も多いだろう(私もその一人だった)
そこで、「インナーゴルフ」という本は、「考えるな、感じるんだ」という言葉を実行するのに、役に立つだろう。
「インナーゴルフ」の著者、ティモシー・ガルウェイは、長年テニスのコーチをしていた。
テニスのレッスンに、東洋思想を取り入れることで、インナーゲームという理論を確立した。
インナーゲーム理論では、自分の内面を「セルフ1」と「セルフ2」の二つに分けている。
「セルフ1」は、自分のフォームをあれこれ考え、体に「ああしろ、こうしろ」など、現場を知らない上司や鬼軍曹のように、命令する心の働きだ。そして「セルフ2」は、その「セルフ1」に命令され、実際に行動する部分だ。
よいプレイができないのは、本来すぐれた能力を持つ「セルフ2」が、「セルフ1」の命令によって抑圧されているせいである。そこで、プレイの邪魔をする「セルフ1」という障害を取り除き、「セルフ2」を自由にして、良いプレイが出来るようにするのが、インナーゲーム理論だ。
ブルース・リー風に言い換えると、「考える」というのが「セルフ1」で、「感じる」というのが「セルフ2」といったところだろう。
その方法は、「ハミングをしながら練習する」「スイングするとき、『バック』『ヒット』と声をだす」と言うシンプルなものだ。(しかし、実行するには、大きな勇気がいる。実際に「ヒット」という声を出すのに、恥ずかしさがある)
このインナーゲーム理論は、最初は、テニスの分野から始まり、スキーに応用された。
そして、ゴルフに応用されることで、より進化したのである。
「インナーゴルフ」では、パットの時、「針の穴に糸を通すシーン」を思い浮かべるイメージ方法が紹介されているが、これは、ほかの球技にも応用が利くものだ。
さらに、インナーゲーム理論は、スポーツだけではなく、ビジネスなどにも応用が利くようになったのである。
「インナーゴルフ」は、インナーゲーム理論の集大成と言っていいだろう。